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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆北朝鮮ミサイル、日本上空通過◆

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇北朝鮮情勢、一気に緊迫化の恐れ〇

26日の短距離弾3発発射に続き、午前5時58分頃、北朝鮮がミサイル1発を発射、ミサイルは3つに分離し、6時12分頃、北海道襟裳岬東方1180kmの太平洋上に落下、と発表された。事前予告(今までは人工衛星打ち上げと称し、部品落下領域などを警告していた)なしは極めて異例で、意図的に3つに分かれて落としたのであれば、極めて迎撃し難いことを示していると思われる。1998年のテポドン以降、日本上空通過は5回目に当たる。

速報段階では、平壌近郊からの発射、8月9日に予告したグアム方向ではなく北海道方向、上空550km程度の低い通過など、異例づくめだ。北朝鮮の狙い、米国などの反応は伝えられていないが、市場は極めて品薄の時間帯で、ドル円は108.34円まで円が急騰、CME日経平均先物は19050円程度まで突っ込んだ。その後、急激に戻しているが、不安定な値動きが想定される。今までの戦争ゲーム的な様相から、不意打ちの軍事衝突リスクを一気に高めたことになる。

米国市場がテキサスを襲ったハリケーン「ハービー」の影響で混乱した地合いにある。先週末のジャクソンホール会合でイエレンFRB議長は金融政策に言及せず、年内の追加利上げ観測が後退、米金利が2ヵ月ぶりの低水準になるとともに、製油所閉鎖でガソリン価格急騰、原油価格急落などの展開。ドルは対ユーロで約2年半ぶりの安値、円ショートの巻き戻しの範囲内と思われるが、円高圧力が掛かり易い地合いにある。

なお、JPモルガンは「ハービーの下期米GDPへの影響軽微」との見通しを発表しているが、8月後半に世界の豪雨禍が拡大している。テキサスは「500年に一度」の洪水になお直面、南インドの季節性モンスーン被害で少なくとも950人死亡、シエラレオネ豪雨による土砂崩れで少なくとも1000人死亡、コンゴの豪雨地滑りで250人以上が死亡、他にウルグアイ、中国広州など、北アイルランド、トルコ、パナマなど各地で被害が発生している。ノルウェーでは夏72日間で70日雨の地域があり、ルーマニアでは「8月の雪」が観測されている。北半球では秋の収穫期に向かい、農業生産などへの影響が懸念視される。豪雨とは直接的でないが、欧州で乳製品価格などが上昇し始めているようだ。

また、北朝鮮の敵対的行動は、締め付けを強化する中国にも向けられているとの見方がある。中国の次期指導部を巡り、珍しく日本の新聞報道が先行している(24日に読売新聞が次期指導部7人の顔ぶれを報じ、王岐山氏が外れるとした。28日に毎日新聞が「ポスト習氏、飛び級で常務委入りの陳敏爾・重慶市トップに内定」と報じた)。中朝パイプ役の江沢民派幹部は一掃される公算があり、中朝関係の動向が注目される。

当面の日経平均は元々の安値想定の19200~19300円(ドル建て日経平均178ドル×108円=19224円)をメドに、反発力を試す展開が想定される。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/8/29号)

《CS》

 提供:フィスコ

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