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【市況】S&P500 月例レポート ― 不思議の国のハーフタイム、ファンダメンタルズへの注視続く (5) ―


●個別銘柄

 百貨店大手のMacy's(M)が、小売業界全般が引き続き価格圧力にさらされる中、利益率が悪化するとの見通しを示しました。General Electric(GE)は、16年にわたり最高経営責任者(CEO)を勤めたジェフ・イメルト氏の2017年8月付での退任を発表しました。現在のヘルスケア事業のトップが同氏の後任に就任します。配車大手Uberのトラビス・カラニックCEOは、同社の職場環境のあり方に対する批判的報道への対応として、無期限の休職を発表した後、6月下旬にCEO職を辞任しました。ただし、取締役にはとどまっています。

 航空機リース会社のChina Aircraft Leasing Groupは、Boeing(BA)から737 MAXジェット旅客機を50機、総額58億ドルで購入すると発表しました。これとは別に、カタールもBoeingからF15戦闘機を36機購入することを発表しています。スポーツシューズ・アパレルメーカーのNIKE(NKE)は、世界全体の従業員数7万人のうち、約1,000人の人員削減を発表しました。

 欧州連合(EU)は、インターネット検索・広告大手Alphabet(GOOG/GOOGL)に対し、検索結果で自社の商品比較サイトを優遇しているとして、反競争的慣行を理由に27億ドルの制裁金を科しました。

 貨物輸送大手のUPS(UPS)は、労働組合に加入していない従業員(全従業員43万4,000人のうち約78,000人)の年金プランを凍結すると報じられています(現時点での年金債務は推定100億ドル)。

 ケーブルテレビ会社のAltice USA(ATUS)が公開価格30ドルで新規株式公開(IPO)を行い、19億ドルを調達しました。同社株は公開価格から7.9%上昇し、32.36ドルで6月を終えています。今年市場が一貫してプラスのリターン(上昇)を上げていることを背景に、IPOが再び活発化しており、6月26-30日の週には週間ベースで過去2年間の最多となる10件のIPOが行われました(ただし、最近のSnapによるIPOのように〔同社株は公開価格から概ね横ばいで推移〕、ヘッドラインを飾るような10億ドル規模の大型案件はありませんでした)。

 ウォーレン・バフェット氏が率いるBerkshire Hathaway(BRK.B)は、保有するBank of America(BAC)の優先株をワラントを行使して普通株7億株に転換すると発表しました。これにより同社はBank of Americaの筆頭株主となります。

 S&Pインデックス(現在のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス)は1999年11月30日(火)の取引終了後に、Yahoo!(YHOO)をLaidlaw(当時のティッカーはLDW)に代えてS&P500指数に組み入れることを発表し、同年12月7日の取引終了後に組み入れを実施しました。そのYahoo!は6月にVerizon(VZ)による買収が完了し、同社傘下のインターネットサービス会社AOLとの統合が進められています。インターネット検索エンジンを最初に手掛けた企業の1社であるYahoo!がIPOを行ったのは1996年4月で、公開価格は13ドルでした(株式分割により当時の1株は現在の24株に相当し、公開価格は株式分割調整後では0.54ドル、対して同社株の取引最終日の終値は54ドル)。

●6月のS&P500指数の動き

 絶好調だった上半期の締めくくりとして緩やかな上昇が続き、過去最高値を更新しました。ほとんどの銘柄が幅広く上昇し、住宅、雇用、賃金といった経済指標も好調な結果となりました。トランプ政権をはじめとする世界各国の政治、経済、テロ事件といったニュースがメディアを賑わしていましたが、市場ではファンダメンタルズに基づいた取引が続けられ、世界のニュースによる影響は軽微にとどまりました。現時点において医療保険制度改革の行方は不透明ですが、市場では資産配分の若干の変更が見られ、イベントに対する備えができているようです。

 次の注目は所得税と海外からの利益還流ですが、市場は少なくとも何らかの改革(減税)が行われるとみています。

 しかし、足元で最も重要なのは企業利益であり、営業利益が予想通りに過去最高を更新すれば、市場の下支えとなるでしょう。いずれにしても、S&P500指数は6月も上昇し、終値での過去最高値を4回更新して0.48%の上昇(配当込みのトータルリターンは0.63%)で月の取引を終えました。2017年第2四半期の上昇率は2.57%(同3.09%)となり、四半期ベースでは7四半期連続の上昇となりました。年初来では8.24%上昇(同9.24%)、過去1年間では15.46%上昇(同17.90%)となっています。

●セクター

 セクター別では、月間騰落率がプラスとなったのは11セクターのうち6セクターで、4月と5月の7セクターから減少しました。最も好調だったのは金融セクターで、6月は6.31%上昇し、年初来の騰落率も5.97%のプラスに転じました。5カ月にわたってほぼ横ばいで推移していた同セクターが6月に入って上昇した背景には、世界的な景気刺激のための金融政策が「間もなく」縮小されるとの見方が強まったことに加え、FRBによるストレステストが終了し、自社株買いと配当が承認されたことがあります(主要34行が全て合格)。既に良いニュースが聞かれ始めており、この流れは7月も続くと予想されます。

 ヘルスケアセクターは6月に4.49%上昇し、年初来の上昇率は15.06%となっています。医療保険制度改革法案は議会で審議されることになりましたが、結果は不透明です。情報技術セクターは利益確定の動きと決算対策の売りから6月は2.75%下落しましたが、年初来の上昇率は16.38%と、依然として最高のパフォーマンスを維持しています。

 一方で、最低のパフォーマンスとなったのは競争の激化が重石となっている電気通信サービスセクターで、6月は2.98%下落、年初来でも12.79%下落しています。エネルギーセクターは6月こそ0.27%の下落にとどまりましたが、年初来では13.81%の下落と、最低のパフォーマンスが続いています。原油価格は一時42ドルまで落ち込んだ後、月の後半にやや持ち直しましたが、原油は定義上の弱気相場入り(直近の高値から20%下落)が確定しました。

 消費関連セクターも乱高下の末に低水準のパフォーマンスとなりました。一般消費財セクターは6月に1.34%下落しましたが、年初来では10.22%上昇しています。生活必需品セクターは6月は2.53%下落し、年初来では6.59%の上昇となっています。

●銘柄変動

 銘柄の変動を見ると、引き続き値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回り、その差はわずかに拡大しました。6月の値上がり銘柄は294銘柄(平均上昇率4.86%)となり、5月の283銘柄(4月は280銘柄)から増加した一方、値下がりは211銘柄(平均下落率は4.07%)で、5月の221銘柄(4月の225銘柄)から減少しました。6月は5月の26銘柄を上回る29銘柄が10%以上上昇した一方(平均上昇率は13.96%)、10%以上下落した銘柄は15銘柄(平均下落率は13.59%)と、5月の32銘柄から減少しました。1銘柄(5月も1銘柄)が25%以上上昇し、25%以上下落した銘柄はありませんでした(5月は1銘柄)。

 年初来では引き続き、値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大幅に上回っており、その差も拡大しています。年初来での値上がりは349銘柄と5月の330銘柄(4月は345銘柄)から増加し、そのうち231銘柄(5月は211銘柄)が10%以上上昇、71銘柄(5月は64銘柄)が25%以上上昇しました。一方で、年初来での値下がりは155銘柄となって5月の173銘柄から減少し(4月は159銘柄)、そのうち70銘柄(5月は84銘柄)が10%以上の下落、24銘柄(5月は18銘柄)が25%以上下落しました。

 市場のボラティリティは上昇しましたが、依然として落ち着いた水準にとどまり、6月最終週は一進一退の展開となりました。出来高は前月比22%増となった5月(4月は20%減、3月は18%増)と比べて6月は横ばいとなり、過去1年間の平均を5%、過去5年間の平均を7%上回っています。月中の高値と安値の差で見た変動率は大幅に低下して2.00%となり(5月は2.80%、4月は2.97%)、過去1年平均の3.45%や過去5年平均の5.22%と比べると大幅に低い水準です。

 昨年11月8日の大統領選以降では、値上がり銘柄数は389銘柄(5月は390銘柄)、値下がり銘柄数は114銘柄(5月は115銘柄)で、11セクターのうち9セクターが上昇しています(金融セクターは23.46%上昇、エネルギーセクターは6.38%下落)。



[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト


※本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
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