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【市況】S&P500 月例レポート ― 不思議の国のハーフタイム、ファンダメンタルズへの注視続く (1) ―


 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●広がる楽観論、懸念は“ワシントン”のみ?

 ショート筋以外の全ての市場参加者に「とてつもなく素晴らしい明日」が待っています。少なくともそれが現在の予想です。

 7月4日の独立記念日を祝う花火を前に、2017年の6月、第2四半期、上半期が幕を閉じました。金融株は6月に大幅上昇し(6.31%高)、一方、エネルギー株は上半期に大幅下落(13.81%安)となりました。VIX恐怖指数と金利が「著しく」上昇する中、月末近くに打ち上がった花火が目を引きました。一部で警戒感が浮上する中、VIX恐怖指数と金利はともに月中に上昇した後、過去最低ではないものの、それに迫る水準で月を終えたからです。VIX恐怖指数は15.16という「天文学的」な高水準を付けた後、低下して11.18となり、5月の10.41から7.0%上昇して月を終えました(2016年末は14.04、大統領選直前は23超で推移)。金利は「急騰」し、10年米国債利回りは2.30%を付けました。とはいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)による2回の利上げにもかかわらず、依然として2016年末に付けた2.45%を下回っています。

 株価収益率(PER)は比較的高水準にとどまっていますが、増益基調は続いています。第2四半期決算が次の大きな試金石になり(そして営業利益は過去最高を更新しそうです)、一部にAppleを2001年に不正会計で破綻したEnronになぞらえる向きもあるようですが、木を見て森を見ない(あるいは自らの立場や利益から世界を見る)一部の解説者は一歩引いて物事を見るべきでしょう。

 全てがうまく行った訳ではないものの、これまでのところ今年の市場はほぼ順調ですが、根拠のある懸念要因も広がっています(原油を除き、ヘッジ取引には表れていないとしても)。カタール航空による10%の株式取得提案を受けたアメリカン航空のダグ・パーカー最高経営責任者(CEO)の「困惑かつ不可解」という言葉を借りるなら(カタールは同国との国交断絶を表明した隣国[バーレーン、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)]と交渉を継続中)、市場が弱材料を強材料にすり替えて(あるいは解釈し直して)まで上昇を続けることに困惑しています ―― しかし、決して不可解なことではありません(40年以上相場を見てきた筆者にはわかります)。

 本稿執筆時点で、先行きの楽観論の大半を占めるのは決算発表です。フランス革命記念日の7月14日に予定される銀行の決算発表で本格スタートとなり(おそらくケーキを食べてお祝いすることでしょう)、配当と自社株買いも発表されるでしょう。第2四半期決算は過去最高を記録すると予想され、ボトムアップ分析の数字を見ると(業績予測を示すことはできませんが)記録を更新すると予想され、貪欲な投資家でない限り、市場にとどまるよう説得するのに十分な材料と言えます。ファンド・マネージャーは、利益を積み上げていることを考えると、好決算の持続を喜ぶものの、年末に向けて早めの売却を検討する可能性があります ―― ただその前に7月を乗り切ることが大切です。

 そのため目先、市場の脱線を「手助け」すると思われるのはワシントンだけであり、その能力、意思、自己献身は決して過小評価できません。医療保険制度改革代替法案は良い方向にも悪い方向にも転ぶ可能性があるため(そして何が良くて何が悪いのか分らないことを少なくとも認めざるを得ません)、ヘルスケア株は今のところほとんど無傷ですが、予算の再配分はやや打撃をもたらす可能性があります(診療所に比べて病院で)。その後、メインイベントである税制改革がスタートし、リスク・リターン・テーブルの上昇とともに、プラス材料が見込まれます(多くは語りませんが、第1四半期のトップダウン分析の一部を見ると、賛成できない点も幾つかあります)。

 海外の動きに関しては、特に市場参加者の権利に悪影響が及ばない限り、市場は材料視していないようです。したがってリスクは直接かつ急速に悪影響を及ぼすこと(サイバー攻撃?)が起きた場合です。分析に基づく論理的な見解でなく、より個人的な印象としては、利益はかなり積み上がっており、強気局面は、まだ続いているようですが、開始からかなり年月を経ています。このため、年を重ねた私がドル平均法での再配分を推奨するのは本当に弱気コメントなのでしょうか?

※「不思議の国のハーフタイム、ファンダメンタルズへの注視続く (2) 」へ続く。

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