【通貨】為替週間見通し:ドルはもみあいか、米長期金利動向を注視する展開
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■米利上げ継続予想もドルは上げ渋る
先週のドル・円は上げ渋り。14日発表された5月消費者物価指数と5月小売売上高はいずれも市場予想を下回り、ドルは一時108円83銭まで反落した。しかしながら、14日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利見通しで2017年末の予測中央値は1.40%で前回3月時点と同じだったことから、年3回の利上げ観測が再浮上し、ドルは111円近辺まで戻した。
日本銀行は15-16日に開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を賛成多数で決定した。市場が注目していた金融緩和からの出口政策について、日銀黒田総裁は具体的に言及しなかったことから、リスク選好的な円売りがやや強まり、ドルは111円42銭まで買われた。
ただ、16日発表された米国の5月住宅着工件数は市場予想を大幅に下回ったことや、その後発表された6月の米ミシガン大学消費者信頼感指数も市場予想を下回っており、年内の追加利上げ観測は後退し、リスク選好的なドル買いは一段落。ドル・円は16日のニューヨーク市場で111円39銭から110円65銭まで反落し、110円87銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円83銭-111円42銭。
■ドルはもみあいか、米長期金利動向を注視する展開
今週のドル・円はもみあいか。米連邦準備理事会(FRB)は13-14日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、予想通り政策金利の引き上げを決定した。ただ、金融当局の景気、インフレなどの認識はやや楽観的であり、市場コンセンサスと異なっていると指摘されている。目先発表される主要経済指標を点検しつつ、慎重な取引が続くことになりそうだ。
FRBは、会合後の声明で、米国経済の情勢判断を上方修正した。そのうえで、利上げペースは2017年が3回(あと1回)、18年も3回を堅持している。また、年内にバランスシートの縮小にも着手する方針を示した。これについて、市場関係者の間では5月雇用統計や5月消費者物価指数など重要指標は予想を下回っていることから、FRBの強気な利上げ方針の影響を危ぶむ声もある。
16日発表された5月の住宅着工件数は市場予想を大幅に下回った。今後発表される主要経済指標が当局の見通しを裏付ける内容になるか注目されるだろう。また、ドルは米長期金利との相関性を強めているとの見方が増えており、米10年債利回りの動向がドル・円相場に影響を与える状態がしばらく続く可能性がある。
【黒田日銀総裁あいさつ】(21日予定)
日本銀行の黒田総裁は21日に全国信用金庫大会であいさつを予定している。日銀は現行の異次元緩和を当面維持する公算。「出口」をめぐる議論に関し「時期尚早」としていた姿勢を改めるとの思惑が広がれば、緩和策の早期解除への思惑が再浮上し、円買い材料になるとみられる。
【米5月新築住宅販売件数】(23日発表予定)
23日発表の米5月新築住宅販売戸数は60万戸と、4月実績の56.9万戸を上回る見通し。緩やかな上昇トレンドが続いており、住宅に対する消費の強さが示されれば国内総生産(GDP)などへの上振れが期待され、ドル買い要因になりそうだ。
予想レンジ:109円50銭-112円50銭
《FA》
提供:フィスコ