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【市況】S&P500 月例レポート ― 米国株、3月微調整も息の長い強気相場が続く(1) ―

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより
 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●トランプ政策の実現性への懸念が重石に

 3月相場の幕開けは素晴らしいものとなりました。今年に入って初めて、1日の上昇率が1%を上回ったのです。S&P500指数(1日で1.37%上昇)は取引時間中に2,400を突破し(終値では大台を維持できず)、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は史上初めて21,000ドルを突破する(1日で1.46%上昇)など、両指数がそろって過去最高値を更新しました。残念ながら、3月の月間パフォーマンスは初日のようには行きませんでした。高値を更新してきた市場で政策(所得税・法人税の減税)が予想していたほど早い時期に、またすんなりとは実現しない可能性があることが認識されたからです。

 とはいえ、現時点の相場の下げは調整(10%)というほど大きなものではありませんでした。というのも、その後相場は値を戻し、月間騰落率は0.04%という僅かな下落にとどまったからです。大統領選挙後の上昇率は依然として10.43%(配当込みのトータルリターンは11.35%)、また2017年第1四半期の上昇率は5.53%(同6.07%)と好調です。

 調整局面入りはしませんでしたが、月中にそれに近い値動きを見せたのが金融セクターでした。しかし、同セクターも月末近くには回復し、月間騰落率は2.91%のマイナスとなりましたが、第1四半期は2.08%の上昇となっています。落胆したり、あるいは金融株の投げ売りの機会を模索するのは時期尚早です。金融セクターは大統領選挙後に18.94%も値上がりしましたし、4月13日からは大手金融機関(Citigroup [C]、JPMorgan [JPM]、Wells Fargo [WFC])による第1四半期の決算発表が始まり、すぐにも金融株の商いが活発化することが見込まれるからです。

短期的とはいえ、押さえておくべき3月相場の2つの重要ポイント:

(1)第1四半期の好業績を一部先取りした可能性。2017年第1四半期のS&P500指数は5.53%上昇。2016年の同期は0.77%上昇であった。とはいえ、同年2月11日までに相場が年初来10.51%と大きく下落していたため、当時はこの結果に安堵したものだった(1928年以降、第1四半期の平均騰落率はプラス1.61%で、全四半期の騰落率はプラス1.91%)。過去1年間の騰落率はプラス14.71%(配当込みトータルリターンはプラス17.17%)。

(2)息の長い強気相場が続いている(人間の年齢に換算すると128歳)が、いまだ上昇基調にある。2009年3月9日の大底を起点とした場合、株式の年率換算リターンは16.78%、配当込みのトータルリターンは19.29%となっている。

 トランプ政権にとっては忙しい月となりました。トランプ氏はオバマ前大統領が昨年の大統領選挙前にトランプタワー(トランプ氏のNYの拠点)での電話を盗聴していたとツイートに投稿しました。議会と連邦捜査局(FBI)が調査を行いましたが、そうした証拠はないとの結論に至りました。また、トランプ大統領は新たな大統領令に署名しました。これは連邦高裁により現在差し止めが命じられている2017年1月27日に署名した入国禁止措置の大統領令に修正を加えたものです。前回同様、裁判所は差し止めを命じましたが、トランプ氏はこれを不服として上訴しました。

 ワシントンで政治的駆け引きと政策法案が紆余曲折し、3月中に予定されていたオバマケアの代替法案の採決が見送られる結果となりました。アメリカン・ヘルスケア・アクト(AHCA)と呼ばれ、「医療保険制度改革法を廃止し、新たなヘルスケアプランに置き換える」とされた法案の議会下院での採決が予定されていましたが、十分な支持が得られないとして直前に撤回されたのです。この結果、事実上、オバマケアが存続することになります。

 トランプ大統領は2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の予算教書を議会に提出しました。その内容は国防費を増額し、代わりに文化・芸術、環境、海外援助、そして国務省予算を削減するものでした。厳密にいえば無関係ですが、政治的には関係ある問題として、2013年に成立した債務上限引き上げ法案―当時は米国の政府機関が16日間閉鎖される事態に陥りました―が期限切れを迎えました。政府は復活した債務上限に到達するまで、残された予算で政策運営に取り組むことになります(この点は重大問題に発展する可能性があります)。

※「米国株、3月微調整も息の長い強気相場が続く(2)」に続く

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