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【特集】馬渕治好氏【ファンダ良好・国際情勢不安の行く末は?】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―企業業績好調も地政学リスクが上値にフタ、不安後退なら上昇相場復帰か―

 東京株式市場は4月新年度相場で心機一転といきたいところだったが、前週の日経平均は波乱含みで下値リスクを意識せざるを得ない展開だった。週明け10日の株式市場は前週の調整局面から立ち直り、足もとバランスを取り戻したかにもみえる。しかし、引き続き地政学的リスクがくすぶるなか、為替や原油動向も横にらみに不安定な相場は続きそうだ。情勢の変化を捉え相場の急所を見極めることで定評がある、マーケット関係者3人に今後の見通しと戦略について話を聞いた。

●「日米ともにファンダメンタルズ良好で上値指向」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 足もと増幅される投資家の不安心理や、株価チャート面での味の悪さが全体相場の重荷となっているが、ファンダメンタルズから判断した場合、日米ともに実態は良好であり、早晩改めて上値余地が意識される展開になることを予想する。

 米3月の雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びは大きく鈍化したが、失業率の低下が顕著でいわば完全雇用状態に近い。米国株市場は少なくとも雇用統計の結果で揺さぶられるようなことはなかった。また、これから日本に先駆け米企業の17年度第1四半期(1~3月)決算が順次発表されるが、全体ベースでは2ケタ増益を確保する可能性が高い。年度を通じて好調な企業業績が米株市場を支えそうだ。

 一方、日本企業も負けず劣らず業績は好調で17年3月期の増益に続き、18年3月期も2ケタ前後の利益成長が有力視される。PERは東証1部ベースで13.5倍程度と試算され、日経平均株価は2万1000円を超える水準に浮上しても何ら不思議はない。夏場から秋口にかけて、同水準への戻りを達成する公算が大きいとみている。

 今、上値を重くする最大の要因は何かといえば、地政学的リスクと欧州政局などに対する不透明感だ。地政学的リスクについては、シリアなど中東はともかく、北朝鮮問題は地理的に日本への影響は大きい。ただし、米中首脳会談を終えた感じでは、米国が対北朝鮮に待ったなしで武力行使に出る可能性は乏しく、メーンシナリオにはなり得ない。過度に懸念するべきではないだろう。

 また、中国との貿易不均衡問題についての是正も「100日計画」の策定で合意したことは好材料。特にポジティブ評価できるのは、トランプ米大統領側から為替問題(人民元)についての具体的な言及がなかったことだ。これはドル円相場においても円高バイアスがかかりにくくなり、日本にとっても歓迎すべき状況といえる。

 欧州ではこれから5月7日の決選投票に向け仏大統領選の行方に注目が集まる。もっとも、オランダの選挙でもそうだったように、今は極右政党が強力に支持されている局面ではない。仏大統領選もルペン氏が勝利する可能性は低いとみており、反EUの動きには一定の歯止めがかかるだろう。

 総合的にみて、日経平均は当面1万8500円前後が下値メド。上値は4月中ということであれば1万9000円台前半。仏大統領選前のゴールデンウイーク前後にいったん下値を試すケースも考えられるが、7~9月は尻上がりに強い動きで2万1000円台を上回る水準で推移する場面がありそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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