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【特集】田部井美彦氏【ファンダ良好・国際情勢不安の行く末は?】(3) <相場観特集>

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

―企業業績好調も地政学リスクが上値にフタ、不安後退なら上昇相場復帰か―

 東京株式市場は4月新年度相場で心機一転といきたいところだったが、前週の日経平均は波乱含みで下値リスクを意識せざるを得ない展開だった。週明け10日の株式市場は前週の調整局面から立ち直り、足もとバランスを取り戻したかにもみえる。しかし、引き続き地政学的リスクがくすぶるなか、為替や原油動向も横にらみに不安定な相場は続きそうだ。情勢の変化を捉え相場の急所を見極めることで定評がある、マーケット関係者3人に今後の見通しと戦略について話を聞いた。

●「4月下旬からの決算発表本格化を評価しジリ高歩調に」

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

 米軍によるシリア空軍基地に対するミサイル攻撃や、核・弾道ミサイル開発を加速する北朝鮮を巡る地政学リスクは予断を許さない状態が続いており、こうした問題がある程度沈静化するまでは、波乱含みの相場を覚悟しなければならない。

 米中首脳会談は、通商や為替政策など両国間の懸案をめぐる対立を避け、経済面での協調を際立たせる内容となった。米中間の対立激化は世界経済の不安定化に直結するだけに、株式市場では、地政学リスクの問題を除いては“無事通過した”との受けとめが多いようだ。中国の習近平国家主席は、貿易・投資の推進やインフラ、エネルギー分野での協調など米中協力による「実利」を強調し。トランプ米大統領も米中関係の重要性を認め、米国の貿易赤字削減に向けた「100日計画」策定など懸案解決に向けた新たな枠組みの設置で合意したことを印象づけた。

 7日発表の米3月の雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比9万8000人増と市場予想の18万人を大幅に下回ったものの、3月の失業率が4.5%と2007年5月以来、約10年ぶりの水準に低下した。この内容から、雇用の改善は継続するとの受けとめが広がり、景気後退観測が遠のいたことで利上げ期待は継続し、極端な円高進行は回避されることになりそうだ。4月下旬から本格化する3月期決算企業の業績見通しの発表を評価して、日経平均株価はジリ高歩調となりそうだ。

 個別銘柄では、ハードディスクドライブ(HDD)用モーターで世界断然トップの日本電産<6594>に注目。HDDは大容量化の加速に伴い、自動運転、ロボット、IoT(モノのインターネット)向けの需要拡大が見込まれ、モーター自体も単価上昇で利益率が向上する。また、中小型株ながら高シェア商品で注目したいのがKHネオケム<4189>。エアコンなどで冷媒と共存する冷凍機油原料で世界的に高シェアを占めているほか、化粧品原料も手掛けている。さらに、世界的な設備投資拡大機運のなかで、追い風が予想される総合ポンプメーカーの荏原<6361>も見逃せない。


(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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