【特集】「大ヒット商品『裏地あったかパンツ』、その誕生の秘密」しまむら広告宣伝部・石橋部長に聞く!<直撃Q&A>
しまむら「裏地あったかパンツ」
Q1 「裏地あったかパンツ」は、冬場のおしゃれに悩んでいた女性にとって画期的な商品となったと思います。そもそも、なぜ開発を思いついたのでしょうか?
石橋 ベーシック商品については、こだわって作った商品を大量に販売することが会社の戦略に加えられました。それと同時に、プライベートブランド(PB)を刷新、高品質の新PB「CLOSSHI(クロッシー)」を立ち上げ、看板商品を作ろうという動きになりました。
アパレル業界の常識では、11月に入るとボトムスの売り上げが急に下がってしまいます。これは消費者にとって、冬場はボトムスの下にタイツやストッキングを重ね履きしないと寒さに耐えられないというイメージがあるためです。そこで、「寒い時でもあったかいパンツがはけたらいいな」と思ったのが商品開発のきっかけになりました。
もともと子ども服の方で、裏起毛のボトムスは展開していました。当時、紳士服のバイヤーだった私は、紳士用に開発したものを販売したところ、売れ行きは好調で手ごたえを感じていました。その後、婦人服に異動となりましたが、「婦人ものでも売れる」という確信がありました。
そこで、2014年に「クロッシー」ブランドで「裏地あったかパンツ」として発売したところ瞬く間にヒットし、店舗に在庫がなくなるほどの売れ行きとなりました。その後も、肌ざわりの良さと伸縮性にこだわり、毎年改良を加えて販売しています。そういった工夫が消費者に認められ、3年目にあたる2016年度は前期比約30%増の約130万本を売り上げる予定となっており、販売は好調です。
Q2 子供向けや紳士服での実績が「裏地あったかパンツ」を生み出したわけですね。広告を含め、実際のマーケティングでは、どんなところに気を使いましたか。売り方での工夫は?
石橋 商品のこだわりに共感してくれた消費者が多かったこともありますが、宣伝方法や商品の陳列方法などを大きく変更したことにも効果があったと思っています。従来のテレビCMは、トレンドのアイテムのコーディネートを紹介するという内容で、放映も1週間と短期間でした。それに対して「裏地あったかパンツ」では、具体的な覚えやすい商品名をつけ、また放映期間も、従来に比べ長期間としました。これは、「商品が今でも売っている」ということを伝えるために行ったものです。
また、こだわって作った商品をショルダー陳列にとどめておくのはもったいないと感じていました。そういった商品を消費者にどうアピールできるか、売り場にどのようにアピールするべきか。そもそも店舗に在庫量が多く、「裏地あったかパンツ」のようなベーシック商品の在庫量が増やせず、消費者が買い物しづらい状況になっていました。これらの課題を念頭に置いて、当社では今年度から「2016年型レイアウト」への変更を実施しています。17年度中に全店でレイアウトの変更を終了する予定です。
Q3 「裏地あったかパンツ」を生み出した「クロッシー」の今後の展開はどう計画していますか?
石橋 今年の春夏は「素肌涼やかデニム&パンツ」シリーズを販売します。この商品の販売は2年目となりますが、昨年よりも涼しく履けるように改良しています。婦人服に限らず、肌着や寝具などでもPB商品の拡充を行っていく予定です。
ベーシック商品の在庫の持ち方は他社と比べたら、当社はまだまだです。売れた後の入荷のペースをどのように短くするかといったことなどが課題となっています。「しまむらといえば、品ぞろえが豊富。しまむらならある」という安心感が持てる品ぞろえと在庫の持ち方について試行錯誤しています。
今までの商品は戦略的に仕掛けていくことは少なかったのですが、ホームページやチラシ、SNSなどを利用して発信していくことにも注力していきたいと思います。
(聞き手・吉野さくら)
<プロフィール>(いしばし・じゅんじ)
1997年3月入社。店長・コントローラー・バイヤーを経て、2014年2月に商品部長に。2017年2月から広告宣伝部長となる。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)