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【特集】全米騒然「トランプ政権」と「株価の行方」、最新情勢 <株探トップ特集>

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

―動揺広がるも投資家センチメントは変わらず、焦点は米景気拡大に―

 世界の金融市場が、新たに発足した米トランプ政権の政策に一喜一憂している。足もとでNYダウ平均は2万ドル乗せ後に反落し、 日経平均株価は2万円ラインを視野に入れながらの足踏み状態にある。大統領就任後、次々と打ち出す政策のなかには、インフラ投資など市場から好感されるものがある一方、入国制限令など懸念を生む政策もあり強弱感が対立している。市場はこれまでのトランプ大統領の政策をどう評価しているのか、また今後のチェックポイントとは何か。

●相次ぐ大統領令発動に飛び交う期待と不安

 世界の金融市場が、先月20日に正式就任したトランプ大統領の動向を固唾を飲んで見守っている。NYダウは大統領就任式を経て、25日には初の2万ドル台に到達。日本株でも26日には、ドルベースに換算した日経平均株価が「1700ドル」に到達したことが注目を集めた。

 ただし、直近ではトランプ大統領による相次ぐ大統領令の発動が、不安を呼び起こしている。石油パイプラインの建設促進といった規制緩和策は、インフラ投資への期待をもたらした一方、難民・移民の受け入れ制限を命じる大統領令には批判が殺到した。さらに31日には、「他国は通貨安誘導に依存している」と述べ日本や中国の為替政策をやり玉に挙げた。これを受け、ドルは1ドル=112円前半に下落した。ただし、この日の東京市場では113円台を回復。日経平均株価もプラス圏で取引を終えた。

 わずか大統領就任から10日強ながら、これまでのトランプ氏の政策に対する市場関係者の評価には強弱感が対立しているのが実状だ。

●1ドル=112円がチャート上の当面の防衛ライン

 「良くも悪くもトランプ氏は有言実行している」と外為オンラインの佐藤正和シニアアナリストは言う。米国への入国規制もこれまでの発言に沿ったものと受け止められる。それだけに「大型のインフラ投資や減税もやってくれるはずだ、という期待が市場にはある」と同氏はみる。

 ただ「1ドル=112円ラインは当面の防衛ラインになる」ともいう。大統領選の際の安値101円20銭から、昨年12月高値118円66銭までの上昇幅にフィボナッチ指数の0.382を掛けるとちょうど112円前後となる。「112円ラインを割ると次は110円を意識する可能性もある」と同氏は警告する。1ドル=110円前後まで円高が進めば、日経平均株価も一段の調整を余儀なくされる可能性もある。

 ただ、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「トランプ氏の発言で市場は上下に揺れているが、重要なポイントは米国景気が拡大基調にあること。この点に変化がなければ、少なくとも日本株が大きく崩れることはないのではないか」と指摘する。「トランプ大統領への評価を下すのは時期尚早」とも言う。

●「強気センチメント」は不変との見方も

 また、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「トランプ氏は米国を偉大な国にすると宣言している。それなら、本当に貿易を縮小させるような政策は取れないはずだ」という。特に、「トランプ氏が打ち出そうとしている政策は、総合的な方向感はドル高政策だ」と指摘する。

 注目すべきは「国境税」の見方であり、米国内に設備投資を呼び戻す政策は「結局、ドルも米国に呼び戻しドル高政策につながる」とみている。トヨタ自動車 <7203> などに通商政策の観点から、強気の要求を突き付けたとしても、米国のドル高と景気拡大という大きな基調は変わらない。「トランプ大統領の発言と政策によって、投資家のセンチメントが大きく変わったとは思えない」と秋野氏は言う。

 市場では10日に予定されている日米首脳会談や、その後の予算教書や一般教書、そして大型減税やインフラ投資に向けた議会との折衝など「トランプ氏を巡る注目点には事欠かない」(市場関係者)。ただ、同氏のある程度の不規則発言は予想されたことであり「より注視すべきは利上げに向けた米国経済の実態面の動向」(第一生命経研・藤代氏)ともみられている。世界の金融市場はトランプ大統領の登場によりボラティリティの大きな相場が余儀なくされているが、依然、相場は上値を模索する状況にある。

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