【特集】窪田朋一郎氏【2万円目前、年末「東京株式市場」の行方は】(1) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
―強調地合い変化なし、見えてきた2017年相場の形―
週明け19日の東京株式市場は利益確定売りに押されたものの、下げ幅はわずかにとどまった。前週末まで9日続伸し騰落レシオも160%近辺と記録的な過熱領域にあるが、強調地合いに大きな変化はみられない。押し目らしい押し目を形成することなく上げ続ける“売り方泣かせ”のトランプ相場は、2017年も継続するのだろうか。第一線で活躍する市場関係者に意見を聞いた。
●「年初以降に強調相場継続の可能性6割」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は、年内は商いが細るなかで売り圧力も限定的となり、高値圏でのもみ合いが続きそうだが、年初は海外機関投資家の復帰でボラティリティが高まる可能性がある。年明けからトランプ次期米大統領が就任する1月20日までの期間でみた場合、今のトランプ相場の流れが延々と続くのか、それとも変調をきたすのかは、トランプ氏が掲げる政策の優先順位が重要なファクターとなりそうだ。現時点で相場の行方は2つのシナリオに委ねられるとみている。
まず、トランプ政策の目玉ともいえる大規模な法人減税。これに最優先で取り組む姿勢をみせた場合、米企業へのEPS押し上げ効果を背景に、ファンダメンタルズ面から上値が意識されて一段の上昇局面に突入するだろう。その際にはNYダウで2万ドルの壁を突破してさらに上値を目指す展開が想定される。つれて東京市場も日経平均株価で2万円を通過点とする強調相場が見込まれることになるだろう。可能性としては60%というところだ。
一方、残りの40%はいったん下値を模索する展開を予想している。それはトランプ氏が、最高裁判事だった保守派アントニン・スカリア氏の後任指名を経済政策に優先させるケースだ。その場合は、経済政策発動への期待感で上昇していた相場は、それが後ずれすることを嫌気するかたちで売りがかさむ可能性があると考えている。こちらのシナリオでは日米ともに下値リスクにさらされるだろう。ただ、東京市場では旺盛な押し目買い意欲が潜在しており、下げても日経平均1万8600円近辺が下値メドとなるとみている。したがって、新年相場で1万9000円を割り込むような場面があったら、そこは買い下がる方針で報われる公算が大きい。
新年相場で注目しているセクターは原油関連だ。17年はサウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコの新規上場が世界的に大きな相場テーマとなる。これが、原油価格上昇転換の背景ともなっており、東京市場でもこの流れが銘柄の物色人気に反映されそうだ。国際石油開発帝石 <1605> などの資源関連や三菱商事 <8058> などの商社株、あるいはJXホールディングス <5020> などの石油元売り企業に資金が誘導される可能性が高い。また、このほかでは三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や野村ホールディングス <8604> などメガバンクや大手証券の株価は引き続き水準訂正余地が大きいとみている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース