【特集】植木靖男氏【トランプ上昇相場はどこまで続く】(1) <相場観特集>
植木靖男氏(株式評論家)
―途切れない株高、“超強気トレンド”の行方を探る―
途切れそうで途切れない――。好調な米国経済と株式市場、米長期金利上昇を背景としたドル高・円安の流れも継続するなか、東京株式市場では日経平均株価が躊躇なく1万9000円の道標も通過した。トランプ相場の上昇気流や恐るべしだが、果たしてこの超強気トレンドの切れ目はどこなのか。それとも、「押し目待ちに押し目なし」の相場格言を地で行く展開は当面続くのか。相場の機微を知り尽くした市場関係者の声をまとめた。
●「上値指向強いものの目先の天井も接近」
植木靖男氏(株式評論家)
東京株式市場はトランプ相場に乗るかたちで極めて強い上昇波を形成しているが、結論から先に言えば、今週中に日経平均は円安に乗って1万9000円台半ばまで上昇、しかし、そこで年内の高値をつけてしまう可能性がある。したがって目先的には警戒ゾーンにあるとみている。
その理由としてまず挙げられるのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> を筆頭とする銀行株が調整の兆しをみせていること。メガバンクは典型的な大勢二段上げで株価水準を短時日で切り上げたが、足もとは利益確定を急ぐ動きが出ている。銀行セクターの値動きは全体相場の縮図でもあるため、注意を要する。
2つ目には足もとの上昇が制御不能な舞い上がり方を示している点に着目している。12月7日以降の日経平均の足に注目してほしい。マドを開けながら糸の切れた凧のような上値追いをみせており、こういうパターンは強気に傾いた相場の終盤にみられる現象だ。経験則では、下がるときも理由なく売りが売りを呼ぶ展開となりやすく、初押しは買いなどと安易に拾うと意外に底値が深い可能性がある。
そして3つ目に挙げられるのは米国株と日本株の上昇期間に差があることだ。NYダウは7月下旬以降、ボックス圏を弱含みで推移し徐々に水準を切り下げる展開にあった。トランプ相場が始まる11月初旬までその流れは続いていたため、今の上昇相場はまだ若い。それに対し日経平均は6月24日の暴落で1万5000円台を割り込んだが、その後は立ち直り、以降は一貫した上値追い態勢を続けてきた。したがって、11月以降の相場はトランプ効果で再生したのではなく、上げ相場の終盤で加速したというニュアンスが強い。米国よりも買い疲れ感が強いため、このまま一直線に2万円大台をうかがうような展開にはならないとみている。
時間軸的には来年の1~2月は調整期間とみており、2月以降に再上昇波を形成するパターンを想定している。2月までに日経平均はいったん1万8000円台割れを意識する場面に遭遇する可能性もあるとみているが、トランプ相場第2幕に乗るのであれば、そこでの押し目を買い下がる方針で対処するのがベターであると思う。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(うえき・やすお)
慶応義塾大学経済学部卒。日興証券(現SMBC日興証券)入社。情報部を経て株式本部スポークスマン。独立後、株式評論家としてテレビ、ラジオ、週刊誌さらに講演会などで活躍。的確な相場見通しと独自の銘柄観に定評がある。
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