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【特集】田部井美彦氏【検証・年末年始「日米同時株高」シナリオ】(3) <相場観特集>

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

―進む日経平均1万8000円台固め、上げ潮ムードは継続するか―

 東京株式市場は押し目を形成しても下値を拾う資金が健在であり、日経平均株価は1万8000円台固めを着々と進めている印象を受ける。目先は円が買い戻されているとはいえ、トランプ氏が米大統領選で勝利した後は急速な円安進行が株高を後押しする構図で、買い主体である外国人がマーケットの上げ潮ムードを支えている。年末年始に向け日米同時株高シナリオに変化はないのか、第一線で活躍する市場関係者に現在の強調相場の行方について聞いた。

●「海外投資家は日本株比率高める姿勢を継続」

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

 今後もトランプ次期米大統領が掲げる積極的な減税や、巨額なインフラ投資などの経済政策を評価してのトランプラリーが継続しそうだ。少なくとも、トランプ氏が米大統領に就任する来年の1月20日までは、大きな調整場面はなさそうだ。

 12月13~14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは織り込み済みとされているものの、急ピッチな米長期金利上昇が続くなか、円安・ドル高の流れに変化はなさそうで、小幅な調整を挟みながらも日経平均株価はジリ高推移が予想される。12月上旬には1万8800円台に乗せ、年内には1万9000台での推移となる可能性も十分ある。

 リスク要因としては、イタリアで12月4日に実施される国民投票を注視したい。議会制度を事実上の一院制に変える憲法改正の是非を問うもので、頻繁に政権が交代する政治を改めるのが狙い。レンツィ首相は「否決されれば辞任する」と公言しており、現政権への事実上の信任投票の色彩が強い。もし、反対票が上回ればEU離脱機運が盛り上がる可能性もあり要注意だ。

 海外投資家は、東証の投資主体別売買動向で11月第3週(14~18日)に、4903億円と、4月第3週(5320億円)以来の大幅買い越しとなった。来年の株価指数のPER予想で、S&P500が18倍台なのに比べて日経平均株価は15倍台と割安であることや、欧州が政治的な不透明感を抱えていることを考慮すると、海外投資家は継続的にも日本株の比率を高めてくる可能性が高い。特に、大手銀行株に対する外国人投資家の積極買いは特筆すべきものがある。

 来年にかけて中期的に注目できる銘柄として、三菱電機 <6503> を挙げたい。同社は従来から自動車向けの電装品に高い技術力を持ち実績を上げているが、三菱グループの三菱自動車工業 <7211> が日産自動車 <7201> の傘下に入ったことで、自動運転をはじめとした自動車関連の電装技術で日産自との関係が深まることが予想される。また、省力化投資の機運が高まるなか、三菱電機のFA分野での技術力と実績は改めて評価されそうだ。また、日産自はカルソニックカンセイ <7248> の保有株すべて売却するなか、三菱電機との関係強化で相乗効果が期待できそうだ。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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