市場ニュース

戻る
 

【特集】乗り遅れた投資家へ、トランプ「奔流相場」ここからの戦略 <うわさの株チャンネル>(特別編)

三菱UFJ <日足> 「株探」多機能チャートより

―連続する“まさか”、4賢人に聞く「勝利の方程式」―

 東京株式市場では問答無用のリスクオン相場が続いている。24日の日経平均株価は6連騰で1万8400円台をうかがう勢いをみせているが、この株価水準は市場参加者にとって特別な意味がある。振り返れば2016年相場は前途多難な船出を暗示する急落でスタートしたが、終値ベースでは1月4日の大発会につけた1万8450円98銭が今年の高値となっていた。下値模索の局面に遭遇することも多かった16年相場だったが、師走を目前にして年初の因縁場を払拭するチャンスが巡ってきた。

 日経平均は11月10日に1000円を超える急反発をみせ、以降はほとんど押し目を入れることなく旋風(つむじかぜ)のごとく舞い上がり、わずか2週間で2000円を超える上げ幅を刻んでいる。もっとも、この急騰パフォーマンスの原動力はアベノミクスではなく、「トランプノミクス」だ。トランプ次期米大統領が打ち出す政策に対する期待感、これが日米同時株高という形で反映されている。

 人生には上り坂と下り坂、そしてもう一つ「まさか」があるとよくいわれるが、その伝でいけば、株式市場は意外性に満ち溢れたまさかの連続で彩られた世界といってよいかもしれない。「客観的にこう動く」と思えることが実際は真逆の動きをみせたりすることがままある。11月8日の米大統領選の結果とその後の東京市場の値動きは、くしくもそれを地で行く展開となった。トランプ氏の勝利はともかく、その後の株価急上昇には驚きの声を隠さなかった市場関係者も少なくなかった。それだけに個人投資家も11月中下旬の奔流相場に買い参戦できなかった向きが大半を占めていたことは想像に難くない。

●まず乗ることが肝要、3市場逆回転でドテン売り(植木氏)

 著名株式評論家の植木靖男氏はこう指摘する。「トランプ氏の言っている政策は額面通りに実現されるかどうかは置くとしても、アメリカ・ファーストの路線を貫くもので、少なくとも米国株市場にとっては福音だったはず。しかし、メディアを通じてトランプ氏=異端児のイメージが浸透していたから、相場も拒絶反応を示すと誰もが思い込んでいた。その反動が堰(せき)を切ったような買いに反映された。セミプロ領域の個人投資家は最初に大量のカラ売りから入った人も多かったからクロスカウンターを喫する格好となってしまった」。その逆目を引いた流れが今も尾を引いており、植木氏いわく、「潜在的な待機資金はあったが、押し目買いを待っているうちにますます手が届かなくなってしまった状態」という。

 トランプ氏の米大統領選勝利を目の当たりにした東京市場は11月9日にいったん急落で反応したが、米国株の上昇を横目に翌日以降は踵(きびす)を返すように上値追い態勢に移行、個人投資家にすれば、ここで頭を切り替えて買い乗せていくということは、相場に相当熟練していてもなかなか出来る芸当ではない。

 植木氏は、「今の相場で取りに行きたいなら時間軸に関係なく、まず乗るよりない。ただし、ここまで一方通行の相場であったから、反動安もそれなりに深いだろう。米国株と為替の両方をにらみ、日本株と合わせてこの3つが逆回転し始めたら、ドテン売り(持ち株売却に加えて空売りを乗せる)で対応できる投資家であることが望ましい」としている。参考銘柄として金融株の要である三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> と野村ホールディングス <8604> を挙げている。両銘柄とも信用取組は売り買いがっぷり四つで、ここが明確に崩れない間は全体も強気が続くとの見方を示している。

●初押しは買い、売り方の立場で相場の本質を知る(北浜氏)

 一方、個人投資家からの人気が厚い株式アドバイザーの北浜流一郎氏は、「来年の1月20日の米大統領就任を前に強気相場が終了することは考えにくい。ただ、確信犯的にいいとこ取りの上昇を続けるトランプ相場にもネガティブな要素はある。したがって途中ひと休み的な反落場面はあるだろう。分散して買い下がる慎重さはもちろん必要だが、基本的に初押しは買いのスタンスで対処するところではないか。売り方が踏まされている今の相場の本質を見誤ってはいけない」と指摘する。

 物色対象としては「買い残を売り残が上回る“売り長”の銘柄がひとつの狙い目。コマツ <6301> や日立建機 <6305> などの建機株は信用倍率が0.1~0.3倍で大幅に売り長だ。住友ゴム工業 <5110> も売りを呼び込んでいることで強さを際立たせている。このほか日機装 <6376> なども株式需給関係の良さが光る」という。あえて売り方の側に立った視点で現在の相場の実態を見事に言い当てている。

●外国人マインドになれ、押し目待たずに良い銘柄を拾う(大塚氏)

 一方、現役の証券ストラテジストとして活躍する東洋証券の大塚竜太氏は、個人投資家へのアドバイスとして「外国人投資家のマインドになることが重要」という。今回の上昇の背景はトランプ次期米大統領が描く政策への期待と、現象面では米長期金利の上昇がもたらした円安進行だが、では誰が買い上がったのかといえば、それは海外機関投資家にほかならない。当初はショートポジションを積み上げていたヘッジファンドの買い戻しと冷めた見方を示す市場筋も多かったが、直近は足の長い運用を目指す資金の買いも観測されている。

 大塚氏いわく「騰落レシオとかサイコロジカルとか目先の指標で云々というのはあくまで小手先の話で、外国人投資家は重視していない。実際、大統領選以前から外国人は日本株に前向きな姿勢をみせていた。目先的に押し目があろうとなかろうと実は大きな問題ではない。少しでも安く買いたいと思うから手が出なくなるが、その考えは捨てるべき。日本株のトレンドは上向き、そしてバリュエーションも上昇する方向。その見極めに自信が持てるのであればタイミングに神経質にならず、上値があると思える銘柄を自然体で買えばよい」とする。言われてみれば、目から鱗が落ちる投資の基本に立ち返ったコンセプトであり、参考になるのではないか。

●中小型株と新興市場銘柄への流動性波及を待つ(雨宮氏)

 かつてカリスマ証券レディとして名を馳せた雨宮京子氏は具体的な投資手段や銘柄に言及している。「日経平均の上昇ばかりに目が行きがちだが、日経225だけが日本株ではない。流動性の高まりはマザーズやジャスダックなど新興市場を含めたマーケットに広く波及するのは過去の例でも明らかだ。主力株は早晩一服する可能性があるが、それと体を入れ替えて中小型株や新興市場の銘柄に物色資金が向かう。個人投資家はむしろそのチャンスに対応するのが得策だ」と雨宮氏はいう。

 その際、好業績であることを前提条件としており、東証1部の中小型株ではフィンテック関連でもあるGMOペイメントゲートウェイ <3769> やラクーン <3031> に注目。また、直近では地震や降雪に絡んで需要を捉える銘柄としてコメリ<8218.T>などホームセンター関連などをマークしているという。このほかテーマ株としては、「配偶者控除上限150万円」の政策方針を材料に女性の社会進出を助けるJPホールディングス <2749> も再浮上の時が近いとの見方を示す。また、マザーズ上場銘柄ではモバイルファクトリー <3912> [東証M]、FFRI <3692> [東証M]などに妙味ありとみているようだ。

 さらに、短期投資に特化するのであれば直近IPO銘柄に照準を合わせるのも有効としている。雨宮氏は「12月はIPOラッシュだ。そのなかZMP <7316> [東証M]は目玉だが、それ以外にも人気化する銘柄はいくつも出そうで、初値形勢後の値動きを見極めたうえで、セカンダリーで大きく値幅をとる好機に恵まれるだろう」と指摘している。

(中村潤一)

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均