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【特集】桂畑誠治氏【検証・年末年始「日米同時株高」シナリオ】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―進む日経平均1万8000円台固め、上げ潮ムードは継続するか―

 東京株式市場は押し目を形成しても下値を拾う資金が健在であり、日経平均株価は1万8000円台固めを着々と進めている印象を受ける。目先は円が買い戻されているとはいえ、トランプ氏が米大統領選で勝利した後は急速な円安進行が株高を後押しする構図で、買い主体である外国人がマーケットの上げ潮ムードを支えている。年末年始に向け日米同時株高シナリオに変化はないのか、第一線で活躍する市場関係者に現在の強調相場の行方について聞いた。

●「日経平均は年内2万円視野も年明けは要警戒」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米国株市場では、トランプ氏の掲げる大規模減税に対する期待と好調な企業収益が引き続き株高の原動力となっている。一方、東京株式市場では円安進行により日本企業の業績回復期待が現実味を帯びており、全体指数の上昇に反映されている。買い主体はいうまでもなく外国人投資家であり、11月第2週以降は現先いずれも大幅買い越しに転じるなど日米株式市場の先高期待はなお強いものがある。

 外国人投資家にすれば、(ここまでのトランプ相場の過程で)日本株はアセットアロケーションの観点から保有割合を高めざるを得なかったが、円安による企業業績の改善が根拠となる一方、ここから仮に円高方向に押し戻されても保有株はドル建てによるメリットで損失を被りにくいという打算も働く。米国市場との二人三脚の上昇トレンドは師走相場でも続く公算が大きい。

 今後は為替の動向にもよるが、仮に1ドル=116~117円程度まで円安が進行するとすれば、日経平均は1万9000円を通過点に年内2万円大台をうかがう展開も十分視野に入ってくるだろう。また、米国株についても当面は好調な企業業績と大型減税への期待感が剥落することは考えづらく、NYダウは2万ドル突破のシナリオに向けて走りそうだ。

 ただし、年明け以降は要注意とみている。トランプ新大統領の就任予定は来年1月20日だが、そこまで順調な上昇相場がキープされるとは限らない。

 年明け早々に新しい議会が発足し、政策交渉が開始されることで株式市場も現実モードに引き戻される可能性があるからだ。大統領と議会とのねじれが解消されたとはいえ、上院で安定多数に達しているわけではない。10年間で4.4兆ドルに及ぶ大型減税や1兆ドル規模のインフラ投資が額面通りに実現することは困難と思われ、トランプ氏の米大統領就任前にメディアを通じて議会との不協和音が聞こえてくれば、株式市場も無視はできない。これが利益確定の動きを急がせ、最高値圏にある米国株は前倒しで下値模索の展開に陥ることも考えられる。その場合、日本株も影響を受けることは免れない。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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