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【特集】「大盛況!子ども向けプログラミング教室」CA Tech Kidsに聞きました! <直撃Q&A>

上野朝大氏(CA Tech Kids代表取締役社長)

 子どもの習い事で「プログラミング教室」が新たな定番となりつつある。この分野にいち早く取り組んだのがサイバーエージェント <4751> で、どのコースも募集をするとすぐに満員になるほど盛況だという。文部科学省が4月の産業競争力会議でプログラミング教育の小学校での必修化を打ち出したことで注目度はさらに増している。同社子会社で小学生向けプログラミングスクールを展開するCA Tech Kids(シーエーテックキッズ)社長の上野朝大氏に現在の状況などを聞いた。

●上野朝大氏(CA Tech Kids代表取締役社長)

Q1 なぜプログラミング教育事業を始めたのでしょうか

 グループのCSR(企業の社会的責任)的な位置付けとして、「CA Tech Kids」が2013年5月に設立されました。IT業界全般の課題として人材不足の問題が長期化しているなか、経営陣の発案でスタートした経緯があります。小学生を対象としたのは、目先の需要に対応するのではなく、本質的な解決策として「子どもたちにIT技術のすごさ」などを伝えていくべきだとの考えからです。息の長い取り組みにはなると思いますが、若いうちからプログラミング人材を育てることはIT業界のみならず日本全体の国際競争力の観点から必要なことだと感じています。

Q2 どのような取り組みをされているのでしょうか

 首都圏や京阪神、福岡、沖縄を中心に、プログラミングスクール「Tech Kids School(テックキッズスクール)」を展開しています。教えているのは米国マサチューセッツ工科大学で開発された子ども用プログラミング学習ソフト「Scratch(スクラッチ)」を使ったものから、iPhoneアプリを開発するコースやJavaScript(ジャバスクリプト)などのプログラミング言語を用いたWebアプリ開発コースなど多岐にわたります。IT企業の特性を生かして、小さな子ども向けから本格的なものまで豊富なラインアップを取り揃えていることが大きな強みで、例えば月謝はベーシックなものだと1万9000円(120分×4回)となっています。また、夏休み期間などにはプログラミング入門ワークショップ「Tech Kids CAMP(テックキッズキャンプ)」を開催しており、いずれも大変好評をいただいています。

 今年4月から新たに、プログラミング教育の担い手を地域に増やしていくことを目的に「Tech Kids Home Teacher(テックキッズホームティーチャー)」事業をスタートしました。これはTech Kids Schoolの教材やカリキュラムを使用したフランチャイズ形式のスクールで、主に主婦など女性講師の自宅で開講しています。小規模だからこそ、きめ細やかな教育ができるといったメリットがあり、今後も広げていきたいと思っています。

Q3 プログラミング教室の人気が高まっている背景は

 「Tech Kids School」の設立当初は60人程度だった生徒数が現在では1000人超にまで増えており、プログラミング教室が習い事のひとつとして浸透してきたと肌で感じています。また、今年開催している「Tech Kids CAMP Summer 2016」の参加者は昨年比で1.5~2倍に伸びています。こうした背景として、親御さんのなかでITに対する認識が変わってきているということが挙げられます。IT関連技術が日々進歩するなか、政府がプログラミング教育の必修化を発表したことも相まって、将来を見据えて身に着けておくべき能力のひとつと捉えられているようです。また、将来はゲームクリエーターになりたいという子どもも多く、子どもの将来の夢を応援したいとの想いからプログラミング教室に通わせるというケースもあるようです。

Q4 文科省のプログラミング教育有識者会議の委員を務められていますが、現在どういった議論が行われているのでしょうか

 既に中学校の技術家庭科でプログラミング教育が必修化されていますが、2020年には小学校でも必修化することが決まっています。学校で何かを教えるには必ず学習指導要領に則らなければならないのですが、約10年に1度実施される学習指導要領の改訂が間近に迫っており、これにプログラミング教育をどのように盛り込むのかということが議論されており、今年度中に結論が出される予定です。具体的には、何年生から始めるのか、どの教科で何を教えるのか、目標設定はどうするのか、教材はどうするのかといったことが課題になってくると思います。

 プログラミングを教えることができる教師の絶対数が足りていないという問題もあります。学校でのプログラミング教育は、企業やNPOの支援を前提としていますが、その企業やNPOも首都圏に集中しており、地方との教育機会の格差などが懸念されています。その問題解決に向けたひとつの方策として、「Tech Kids Home Teacher」事業の地域に密着しながらフットワーク軽く展開できるという特徴が生かせると考えています。

Q5 プログラミング教育事業における今後の展望を教えて下さい

 あらゆる産業においてITの活用が進み、その知識の習得が必要不可欠となるなかで、今後さらに重要になるIT教育の一翼を担えればと思っています。これまでの事業で培ってきた教育メソッドが全国津々浦々で取り組んでもらえるようになることを目指し、直営教室やフランチャイズ形式の教室をさらに増やしていきたいと考えています。また、学校教育の仕組み作りに貢献するというかたちで、各地の小学校を通じてプログラミング教育のやり方を全国に広げていくというビジョンも持っています。こうした取り組みを進めていくことが、ひいてはサイバーエージェントグループの企業価値向上にもつながるのではないかと考えています。

(聞き手・三宅和仁)

●CA tech Kids
小学生向けプログラミング教育事業を手掛ける。「日本と世界の未来を担う子どもたちに、最新の技術と触れ合うことで、プログラミングに興味を持つキッカケを提供したい」という思いのもと、東京・神奈川・名古屋・大阪・神戸・福岡・沖縄でプログラミングスクール「Tech Kids School」を展開しているほか、オリジナルアプリやゲームの開発を短期間で学ぶワークショップ「Tech Kids CAMP」を運営している。

●上野朝大(うえの・ともひろ)
 CA Tech Kids代表取締役社長。立命館大学国際関係学部を卒業し、2010年にサイバーエージェント入社。アカウントプランナー、新規事業担当プロデューサーなどを務めたのち、13年5月にサイバーエージェントグループの子会社としてCA Tech Kidsを設立し、代表取締役に就任。文部科学省のプログラミング教育有識者会議の委員も務める。

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