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【特集】桂畑誠治氏【日本株に「神風」か、米9月利上げも!?】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 週明け29日の東京株式市場は、外国為替市場で1ドル=102円台まで円安が進行したことを受けて、大きく買いが優勢の展開となった。ジャクソンホール経済シンポジウムでのイエレンFRB議長の発言に注目が集まっていたが、「雇用改善で利上げの条件は整ってきた」と述べたことが、9月利上げ実施の可能性も示唆するものとしてドル買いの動きを誘発。これが東京市場にとっては追い風材料となり、日経平均株価は一時400円を超える上昇をみせたが、果たしてこれが9月相場での“もみ合い上放れ”につながっていくのかどうか。為替の見通しと株式市場の今後についてマーケット関係者の意見をまとめた。

●「米利上げ・国内緩和で上昇相場形成へ」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 ジャクソンホールでのイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長やフィッシャー副議長の発言を受け、外国為替市場で1ドル=102円台前半まで円安方向に押し戻される展開となったことは主力株中心に追い風材料となった。円安はリスクオンの流れを反映する。ひところ100円を割り込むなど急激な円高が企業業績に重荷となっていたが、足もとは歯止めがかかったことで収益デメリット懸念が緩和されたことに加え、中期的にも一段の円安傾向を見込んだ買いが、29日の東京株式市場の動きに投影されたとものとみられる。

 フェデラルファンド(FF)金利先物の動きで判断すると、FRBによる9月利上げのケースを4割程度、12月利上げのケースを6割程度織り込んでいるのが現状だ。実際のところ9月20、21日に行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げに動く可能性が高いとみている。米8月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月差で約21.6万人増、失業率は4.8%への低下が予想されるほか、8月のコア小売売上高は前月比で拡大に転じるとみられることが背景だ。

 一方、日本では同じタイミングで日銀の金融政策決定会合が開かれるが、黒田日銀総裁はここで追加緩和のカードを切ると予想している。前回の決定会合でのETFの購入枠倍増に続き、9月会合ではジャクソンホールの討論会でも布石を打ったマイナス金利の深掘りなどが手段として考えられる。アベノミクスではこれまでのところ成長戦略が機能していない。少子高齢化と人口減少が進む日本において経済成長を維持するためには規制緩和などドラスチックな改革が必要だが、その実現までの時間をつなぐのが日銀のETF買いであり、マイナス金利政策である。デフレ脱却に向けた追加緩和の蓋然性は高まっている。

 9月下旬は大きなターニングポイントとなり得る。それまでに日経平均は1万7000円台定着の動きが有力視されるが、FOMCでの追加利上げと日銀決定会合での追加緩和、この2つのカードが揃った場合、日米金利差拡大から為替市場ではドル買い円売り圧力が強まり、1ドル=107円程度まで円安が進行する公算が大きい。連れて株式市場でも買い余力が高まり、9月中に日経平均株価が1万8000円台をうかがうような強調展開も十分視野に入るだろう。

 物色対象としては輸出関連株優位の流れが続きそうだ。特に米アップルが秋口に発売を予定する新型iPhoneを手掛かり材料に、アップルの有力サプライヤーである電子部品関連株の戻り足がさらに強まると予想している。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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