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【特集】“英EU離脱”ショック直撃、東京市場の明日を読む <株探トップ特集>

激震・東京株式市場は年初来安値に沈む、待たれる対策、安倍首相は動くか

―分かれる先行きの見方、下値予想では1万3500円―

 東京市場を英国ショックが直撃――。日本時間の24日に開票が行われた英国国民投票は、欧州連合(EU)離脱派の勝利で終わった。「衝撃的」「予想外」といった声が飛び交うなか、この結果を受け、東京市場は大波乱の展開。日経平均株価は前日比1200円超の大幅安で1万4000円台に下落し年初来安値を更新した。今後、EUの枠組みの見直しが迫られるほか、日米欧は金融危機の防止に向けた対策が求められる。そんななか、市場には日本政府の大胆な対策を期待する声も沸き起こっている。

●東京市場は一時1300円超安、4カ月半ぶり新安値

 全世界の関心を一身に集めた英国の国民投票は、EU離脱の結果となった。直前まで、残留派優勢との世論調査が伝えられていただけに、市場は離脱派優勢との報道が伝わると売り一色の展開となった。

 日経平均は、朝方は1万6000円を超えて推移していたが、その後、上値を押さえられる展開となり、午前11時以降は急落。午前11時30分過ぎに離脱派が優勢と伝わると為替は1ドル=99円前後まで売られ、日経平均先物は1000円超の下落となった。

 BBCなど英メディアが離脱派の勝利が確実と報じると、後場の株式市場は売り一色。日経平均は一時、4カ月半ぶりの年初来安値となる1万4864円と前日比1300円超の下落に売り込まれた。結局、日経平均は同1286円安の1万4952円02銭で引けた。東証1部の上昇銘柄はわずか6銘柄にとどまった。

●東京市場で海外ファンド跳躍、反EU政党の躍進懸念

 英国民投票では残留派優位との見方が多かっただけに、市場関係者のショックは隠せない。英国の開票は、海外市場が閉じている時間に実施されたこともあり「投機性の強い資金も含め東京市場に売買が集中した」(日本アジア証券の清水三津雄ストラテジスト)との見方が出ている。特に、イベントドリブン型のヘッジファンドなどが「日本株売り・円買い」を仕掛けたとの見方もある。

 懸念された英国のEU離脱が現実のものとなり、市場では「26日に予定されているスペインの選挙の結果が気になる」(上田ハーロー・山内俊哉外貨保証金事業部長)と欧州諸国の反EU政党の躍進を気にする声が出ている。また、対英向け貿易量が大きいドイツ経済などへの影響を懸念する声もある。

 これらの懸念を反映する格好で株式市場ではトヨタ自動車 <7203> が一時前日比約11%安に急落したほか、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> など銀行株が売られ、日立製作所 <6501> など英国に重要な生産拠点を持つ企業の株価も急落した。

 英国のEU離脱決定を受け週末にはEU首脳の臨時会合やG7(主要7カ国)による協調介入の実施などに期待する声が挙がっている。

●先行きに強弱感、混乱は徐々に沈静化の声も

 市場の関心はマーケットの今後の展開に集中しているが、見方には強弱感が対立している。慎重派からは、「海外の年金ファンドなどが日本株での利益確定を図る動きがあり、日経平均は1万3500円前後まで落ち込む可能性がある」(外資系投信)との見方がある。また、英国のEU離脱が欧州経済に与える影響も懸念され、為替市場では「今後、1ドル=95円前後まで円高が進む事態も」(山内氏)と警戒する声も出ている。

 一方、先行きの悲観論を否定する声も少なくない。「リーマン・ショックのような金融危機が再燃することはない。今後はビッグイベントの一巡で、市場は徐々に落ち着くだろう」といちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は予想する。「EU残留期待が高まっていたため、この日の下げ幅は大きくなったが、離脱の際の下値1万4000円台はほぼ市場の予想通り。今後しばらくは1万5000~1万6000円のレンジ相場で推移するだろう」と同氏はみる。また、日本アジア証券の清水氏も「これまで実施しづらかった為替介入や大型の補正予算も、今回の英国EU離脱でむしろやりやすくなった。その意味で安倍首相にはツキがある。日経平均はほぼ底値圏に近く、今後はリターン・リバーサルを狙い大手自動車株や電機株を拾う局面だ」と指摘する。

 果たして、市場は英国のEU離脱ショックをどう受け止めていくのか。金融市場の嵐の真っ只中に突入した日本市場の行方に関心が集まっている。


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