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【特集】あす「英国民投票」、EU離脱なら日本株は“嵐の中”へ <株探トップ特集>

残留か離脱か――固唾を呑むマーケット、大勢は日本時間24日午後0時頃判明

―事前予想は残留派優位も予断は許さず―

 23日に予定される英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が目前に迫った。一時、離脱派が優勢となった世論調査では、再度、残留派が勢いを取り戻している。ただ、両派の勢力は拮抗しており結果がどちらに転ぶかは依然、予断を許さない情勢だ。「Brexit(英国のEU離脱)」の有無を巡り緊迫感が高まるなか、グローバルマネーはどこへ向かおうとしているのか。

●最初の発表は朝8時半頃、大勢は正午頃に判明か

 英国民投票は23日の午前7時から午後10時(日本時間23日午後3時~24日午前6時)に行われる。開票は投票の締め切り直後から始まり、最初の結果発表が行われるのは24日の午前0時半(同午前8時半)頃で、大勢は午前4時~5時(同午後0時~午後1時)頃に明らかとなる見通しだ。最終結果は、英国の「朝食時間帯(日本時間の午後)」には判明する。

 英国民投票の開票は、ちょうど東京市場での売買の真っ最中の時間帯にあたり、市場関係者の視線は、その結果にクギづけとなりそうだ。

●残留派に勢いも拮抗状態、予断は許さず

 英国民投票の世論調査では、今月に入りEU離脱派がリードした。これに伴い、金融市場は一気に混乱状態となり、リスクオフから株が売られ、円高が進んだ。ただ、16日に残留派の女性議員が殺害されると、同情票を集めるとの見方から、EU残留派が勢いを取り戻し情勢は逆転したともみられている。もっとも残留派、離脱派の勢いは拮抗しており、「結果はふたを開けてみないとわからない」(市場関係者)状況だ。

 ここまで英国の国民投票の行方が不透明となった要因には「移民問題の影響が無視できない」(アナリスト)との見方も多い。英国の経済規模などからみて、「Brexit」が起こった場合、ギリシャのEU離脱問題に比べても、はるかに影響は大きいともみられている。

●勝敗が僅差なら火種残す可能性

 とは言え、投資のプロが重視するブックメーカー(賭け業者)では70%前後が残留派の勝利に賭けており、市場では「結局、残留派が勝利する」との見方が優勢だ。「金融市場は6割程度の確率で英国のEU残留を織り込んでいる」(生保系エコノミスト)ともいう。

 では、英国残留となった場合、金融市場はどう動くのか。「6月からの下げ分を取り戻し、日経平均株価は1万7000円台まで、為替は107~108円前後まで円安が進む可能性がある」(準大手証券ストラテジスト)との見方がある。ただ、「日経平均は上昇しても1万6000円台後半、為替は106円前後への円安にとどまる」(生保系エコノミスト)と慎重な声も出ている。

 残留派勝利の場合、英国への投資の大きい日立製作所 <6501> や日産自動車 <7201> 、欧州関連のマツダ <7261> などを中心に買い戻しが入りそうだ。

 見逃せないのは、どの程度の得票差でどちらの陣営が勝つかだ。「わずかの差で残留派が勝ったのなら、離脱派は善戦したと受け止め、今後、再度EU離脱の機会をうかがうことになり、火種を残す格好となる。欧州各国の反EU政党に希望を持たせることにもつながる」(外資系投信)といい、本格的なリスクオン相場には一定数以上の票差で残留派が勝利する必要があるともみられている。

●「Brexit」なら1万4000円台へ下落も

 一方、問題は離脱派が勝利した場合だ。市場には「レバレッジを大きく膨らませた投資は行われておらず、大きな金融不安が起きる可能性は低い」(米系証券)との見方がある一方、ジョージ・ソロス氏のように「英ポンド急落によるブラック・フライデーも」と予想する声も出ている。市場関係者は「英国のEU離脱を市場は織り込んでいない」(生保系エコノミスト)といい「為替は1ドル=100円割れの円高も」(FX業者)との見方が多い。現在の1ドル=104円台の水準からは4円前後の円高だが、「100円近辺では為替介入があり得る」(同)とみられている。

 日本株に関しては「1万4000円台への下落も」(外資系投信)と大幅な下げを見込む声がある。世界的な質への逃避(Flight to Quality)に向けた流れが、一層強まることになり、「海外ヘッジファンドに加え海外年金なども、リスク資産外しで、日本株に一段の売りを出す可能性がある」(同)という。日欧のマイナス金利政策などでの金利低下で債券による利益獲得が難しくなった年金を含む海外マネーは、日本株売りで利益確保を図ることも予想されている。

●反EU勢力が活気づけばリスクオフ姿勢は長期化

 さらに、欧州の反EU勢力が一気に勢いづくこともリスクオフ要因だ。今月末にはスペイン総選挙が実施されるほか、新興政治団体「五つ星運動」が躍進するイタリアでは10月には国民投票があり、来年にはフランス、ドイツで総選挙が予定されている。もちろん英スコットランド、北アイルランドといった英連邦の分裂懸念もくすぶることになり、「Brexit」を機に欧州の政治は混迷の度合いを深めかねない。

 果たして「Brexit」懸念は杞憂に終わるのか。市場は、英国民の決断を固唾を飲んで見守っている。


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