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【特集】“究極の輝き”、「有機EL関連」超絶人気化へ <うわさの株チャンネル>

Vテク <日足> 「株探」多機能チャートより

●サムスンのアップル供給が物語る構造的需要

 週明け20日の東京株式市場は前週末の地合いを継いで大幅続伸の流れとなり、日経平均株価は一時1万6000円大台を回復する場面もあった。英国EU離脱の是非を問う国民投票を23日に控え、引き続き不透明感は強いものの、直近の世論調査で“残留支持派”が盛り返しているとの観測が強まったことが売り方の買い戻しを誘発した。

 そのなか、全体相場のリスク選好ムードに輪をかけて輝きを放ったのが、有機EL関連として関心を集めている銘柄群だ。「有機エレクトロルミネッセンス」いわゆる有機ELは、特定の有機物に電圧をかけると発光するもので、ポスト液晶を担う次世代のディスプレーとして注目されている。ここにきて大型テレビ向けで市場拡大が加速する兆しにあるほか、スマートフォン向けでも米アップルが来秋発売予定の「iPhone7s」で有機ELパネルを採用する方針が伝わっており、構造的な特需発生が必至の情勢だ。

 スマホ向け有機ELパネルは、液晶では必須だったバックライトが不要になり、スペースに余裕が生まれることで一段の薄型化も可能となる。低消費電力でなおかつ動画の応答速度も液晶と比べてケタ違いに速く、折り曲げることも可能。さらに黒の発色で優位性を持ち、画質がより鮮明という強みも持っている。

 関連株軒並み高の起爆剤となったのは、18日付けの日本経済新聞が「韓国サムスン電子は2016年に8兆ウォン(約7200億円)程度を投じて有機ELパネルの生産設備を拡充する」と報じたこと。これが投機資金を一気に呼び込む格好となった。

●VテクS高、平田機工、日新電など“常連銘柄”総蜂起

 ブイ・テクノロジー <7717> がストップ高で買い物を残したのを筆頭に、平田機工 <6258> [JQ]も一時ストップ高寸前の950円高まで買われ、日新電機 <6641> 、ワイエイシイ <6298> なども商いを伴い大幅高と製造装置関連が一気に上値追いを加速した。さらに、有機EL素材関連では、出光興産 <5019> 、住友化学 <4005> 、保土谷化学工業 <4112> 、ケミプロ化成 <4960> [東証2]、倉元製作所 <5216> [JQ]などが軒並み値を飛ばした。

 Vテクは有機EL部材から製造装置までラインアップを拡充している点で市場の評価が高く、有機ELの蒸着工程で需要が見込まれるファイン・ハイブリッド・マスクなどに期待が大きい。平田機工は特定有機ELディスプレー製造装置メーカー向け真空チャンバーの受託製造を行っており、上場来高値街道を走るがPERはまだ20倍台前半で株価が伸びきった印象はない。日新電機が手掛けるイオン注入装置は有機ELディスプレーの需要拡大で恩恵を受ける可能性が高いとみられている。

 また、有機EL素材では、正孔輸送材と発光材料を手掛ける保土谷化、ポリマー型有機ELを中核技術に高実績を有する住友化のほか、発光体、正孔輸送材、正孔注入材、電子輸送材など一括供給できる出光興産が脚光を浴びている。小型株ではケミプロ化成、倉元などがマークされている。ケミプロ化成は紫外線吸収剤をはじめとする電子材料を手掛け、有機EL関連でも特許を多数出願している点が注目。倉元は有機EL用ITO膜を手掛け、株価面で値動きが早く、個人投資家を中心に人気度の高い銘柄だ。

●“ガチ”の韓国LGもテーマ物色人気増幅

 今回、サムスンの巨額投資は米アップルや中国メーカーへの供給体制を主眼とした生産設備の強化で、スマホ用有機パネルに換算すると現状比1.5倍の2億数千万枚分に相当すると伝えられている。現在、サムスンとLGの韓国大手2社のみが有機ELパネルの量産技術を開発しているが、スマホ向けでは自社製品向けに独占的に供給するサムスンが、中小型液晶パネルの9割強のシェアを占めている状況だ。市場関係者は「スマホ用有機ELパネルは、アップルのiPhone採用効果もあり枚数ベースで2018年には15年比倍増の5億枚以上に急増するとも試算されているが、そのなかでサムスンは圧倒的なトップサプライヤーとしての地位を“現状維持”する不退転の意思が感じられる」(国内準大手証券)と指摘する。

 一方、韓国LGも負けてはいない。「iPhone7s」を視野に既に中小型有機ELパネルの新工場建設に動き、数年間で1兆円を超える投資規模となる見通しが伝わっている。また、LGが自社のテリトリーとする有機ELテレビについては、今年の販売台数を昨年比3倍の90万台強に大増産する計画にあるなど、大型有機ELディスプレーでも攻めの経営を貫く方針だ。

 国内に目を向けると対照的なのはパナソニック <6752> 。同社は既にテレビ用液晶パネルの生産を9月末で停止することを発表しており、その一方で有機ELを採用したテレビの世界展開を検討している。

●韓国2強にキャッチアップ図るシャープとJDI

 国内の大手ディスプレーメーカーも韓国2強の後塵を拝したままではいられない。世界の潮流を捉え有機EL分野に大きく舵を切っている。鴻海精密工業傘下で経営再建を図っているシャープ <6753> は、今後、有機EL事業に積極的に経営資源を注入する計画だ。同社はスマートフォンなどの画面向けに、折り曲げ可能な有機ELパネルを新たに開発するなど技術を順次開花させる方向で、今後の展開が期待される。

 また、ジャパンディスプレイ(JDI) <6740> は同社の筆頭株主である産業革新機構が主要出資会社として、ソニー <6758> 、パナソニックとの4社合弁で有機ELディスプレー専業のJOLED(ジェーオーレッド)を設立している。「JDIは売り上げの約90%をiPhone向けを中心とするモバイル端末で稼いでおり、今後の有機EL分野の戦略が経営の死活問題となっていくだけに、ここは踏ん張りどころ」(国内準大手証券)という。

(中村潤一)


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