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【特集】ソフトバンク ― アローラ氏退任の「衝撃」とマーケットの“本音” ―

クレージーな投資や事業を興す――漏れ伝わる孫氏発言の真相は?
 22日の東京株式市場では、ソフトバンクグループ <9984> の値動きに市場関係者の視線が集中した。この日、同社は株主総会を開催予定にあったが、その前日にニケシュ・アローラ副社長の退任という衝撃的な発表があったためだ。市場関係者の間でも「一瞬耳を疑った。三顧の礼をもって米グーグルから破格の報酬でヘッドハンティングし、孫正義社長が惚れ込んだ人材が2年にも満たずに辞めるというのはちょっと想定しにくい」(国内準大手証券ストラテジスト)と驚きの声が上がった。事前にその伏線が張られていたともいえず、多くの市場関係者にとって相当なサプライズであったことは確かだ。

 アローラ氏は2014年に米グーグルからソフトバンクに鳴り物入りで入社した。孫正義社長が自らの後継者に指名し、その報酬は14年度に契約金を合わせ165億円、さらに15年度も約80億円と、2年間で250億円近い金額にも及ぶ。もちろん、アローラ氏は短期間にその対価を十分に支払うかたちで、インドやインドネシアをはじめとしたアジアの有望ベンチャーなど海外の投資案件を牽引し、ソフトバンクの業容拡大に貢献してきた。

 一方で、孫氏とアローラ氏は経営戦略の路線の違いもあった。ソフトバンクはここにきて相次ぐ資産売却により2兆円近い資金を調達しており、「これは有利子負債の対応など財務体質の改善を視野に置くアローラ氏の意向が反映されたもの」(国内ネット証券マーケットアナリスト)と指摘される。これまで60歳前後の社長退任を公言していた孫氏が禅譲を撤回し、“あと5~10年”は経営トップで指揮を執ることを望んだ理由として、「この資金を返済だけでなく、新たな事業展開に向けた投資に注ぎ込みたいという思いが急速に高まったのではないか」(同)という見解を示す。投資事業に冷静な立場をとるアローラ氏の目には、少なくとも資産売却によって得た巨額の資金は“軍資金”とは映っていなかったはずだ。

 22日のソフトバンクの株価は意外にも全般軟調相場に抗して上値を追った。結局、3日続伸で売買代金も最後までトヨタ自動車 <7203> と首位を争った。しかし、終始買い優勢だった同社株の動きに違和感を覚える市場関係者だけではなかったようだ。

 「今回の人事面のゴタゴタが今後尾を引く可能性がないとはいえない。ただ、孫氏は調達した2兆円の使い道について『クレージーな投資や事業を興すこともある』と言ったと伝わっているが、マーケットのソフトバンクに求める本音はここだったのではないか」(前出のマーケットアナリスト)との指摘が、強調展開をみせた株価の背景を如実に語っていた。

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