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【特集】消費増税なんかいらない!! 検証「先送りされし後」<株探トップ特集>

高まる消費増税先送りの声、政府の決断は?

―見送り期待の一方、リスクシナリオへの懸念も―

 東京株式市場が「政策相場」を迎えつつある。今月下旬の伊勢志摩サミット、7月の参院選を視野に「1億総活躍社会」を含めた成長戦略の中身が再度、脚光を集めそうだ。なかでも、高い関心を集めているのが来年4月に予定されている消費増税の延期観測だ。市場には、増税見送りは既定路線との見方がある一方、金融市場への中長期的な影響を懸念する声も出ている。予想される消費増税先送り後のシナリオを探った。

●消費増税見送りなら?

  【強気シナリオ】既定路線で反応限定的、大型補正実施を好感

  【弱気シナリオ】日本国債格下げを懸念、「BBB」格接近で波乱も

 今月26~27日に「伊勢志摩サミット」が予定されているほか、7月には「参院選」が実施され、東京市場はこれから「政策相場」に本格突入する。その先陣を切るのが、あす発表の1-3月期国内総生産(GDP)の速報値だ。来年4月に予定されている消費増税の実施の有無を判断するうえで、重要な経済指標であり、前期比年率0.3%増が見込まれているが、「うるう年」の影響を除けば、実質2四半期連続のマイナス成長との予想もある。

 1-3月期GDPは伸び悩むという見方は多く、この発表を受け市場には「来年4月の消費増税は見送られる」との見方が強まっている。14日付の日本経済新聞は「増税先送り」を報道した。この消費増税見送り観測に関して「ほぼ既定路線。たとえ、実際の発表があっても市場の反応も限定的ではないか」との見方も出ている。

●積極財政で景気回復期待を評価も

 今後の株式市場のメーンシナリオは、「消費増税先送り」と「大型補正予算策定」をテコに株高・円安を演出し、7月の参院選に臨み自民党が勝利するというものだ。具体的には1-3月期GDP発表に続き、伊勢志摩サミットでは「積極財政姿勢」による景気回復路線が打ち出され、「第二次補正予算案」が策定される。その規模は「5兆円~10兆円」ともみられているが、中堅証券のストラテジストは「大型補正を市場は好感するだろう。1億総活躍政策にも絡み保育園の充実や子育て関連が脚光を浴びる」と予想する。市場では、公共投資の拡大に絡み大成建設 <1801> など建設株やJPホールディングス <2749> など子育て関連株が買われるとの見方が出ている。

 実際、14年11月の消費増税先送りは、15年の日経平均2万円乗せにつながった。生保系経済研究所のエコノミストは「国内消費の落ち込みは激しく、消費増税先送りは仕方ないところ。増税を強行し、景気の冷え込みにより税収が減っては元も子もない。市場の反応は消費増税先送りを前向きに評価するだろう」と指摘する。

●ジャパン・プレミアム復活の恐れ

 一方で、市場には慎重シナリオを予想する見方も少なくない。あるエコノミストは「国債の格下げが懸念される」とし、「2ノッチ(段階)の国債の格下げもあるかも」という。たとえば、米S&Pは日本国債の格付けを「A+」としているが、これが2ノッチ引き下げとなれば「A-」となり、「BBB」転落は目前となる。

 大手証券のアナリストも「国債の格下げとともに、メガバンクの格付けも引き下げられる。A格の維持が微妙となった邦銀に対しては、外銀から取引の際にプレミアムをつけられる可能性がある」とも指摘する。不良債権問題に苦しんだ1990年代に発生した「ジャパン・プレミアム」が、国債格下げを機に復活することが懸念される。

 また、日銀の大量の国債買いで市場機能のマヒも指摘される債券市場に対しても「徐々に金利上昇となって反映する可能性はある」との指摘も出ている。これは日米金利差縮小となり「日本国債売り・円売り」もあり得る状況だが、この時も「株式市場は円安の良いところ取りで、株高で反応するかもしれない」(アナリスト)との見方もある。

消費関連株にはプラス、銀行株には警戒感も

 消費増税先送りは「市場の信頼感をつなぎとめることができるかどうかが焦点」とみられるが、いずれにせよ、消費増税先送りは小売り株など消費関連株にはプラスの一方、銀行株には逆風となる懸念も予想されている。

 もっとも、国債格下げの議論も「消費増税は12年頃のギリシャ危機などの状況が背景にあるが、当時に比べ増税による財政立て直しを求める海外からの声は強くない」(生保系エコノミスト)との見方もあり、大幅な格下げまでには至らないとの声も出ている。財政刺激による景気回復が世界的にも注目されるなか、市場の見方は、強気シナリオが優勢となっており、ここからの政策相場の行方が期待を集めている。


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