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【特集】“超強力”バイオ新テーマが生み出す「上昇気流」 <うわさの株チャンネル>

日新薬 <日足> 「株探」多機能チャートより

―頭角現す「核酸医薬」と広がる物色―

 10日の株式市場は日経平均株価が後場に上げ足を強め続急伸となり、1万6500円台を回復してきた。大型連休明けを待っていたかのように、東京市場上空を覆っていた暗雲がにわかに去り、陽光が射してきた印象を受ける。

 もっとも前週末までの6日続落で、この間に日経平均は1500円程度の急落をみせており、「ここでのリバウンドは自律反発の領域」と斬り捨てる市場関係者も少なくない。企業の決算発表が一巡すると、スケジュール的には伊勢志摩サミットを意識して、株式市場は“政策期待モード”となりやすいが、アベノミクスに対する相場のモチベーションはひところと比べ大幅に低下しており、「市場エネルギー不足のなか、ドル円相場の上下動に固唾を飲むような主体性の伴わない相場が続く」(中堅証券営業体)という冷めた見方も根強い。

 ただ、猫の目のようにかわる地合いでも資金の寝かし場所はある程度定まっている。今の株式市場では有力テーマを波状的に循環物色する流れが定着しており、そのなかバイオ関連株は株価調整局面を織り交ぜながらも物色人気に陰りは見られず、ロングランの大相場を展開している。

バイオ関連株の新たな主軸

 バイオ関連株といえば、これまではiPS細胞をキーワードとする再生医療が不動の主軸テーマであったが、ここ新たなテーマ買いの動きが芽生えている。タンパク質の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する4種の塩基を組み合わせた核酸分子を用いる薬剤、「核酸医薬」がそれである。遺伝子に直接作用して働きを抑制し、疾患の要因となるタンパク質の部位を切り取ったり、合成を阻害したりするもので、抗体医薬に次ぐ医薬品として急速に頭角を現しつつある。ターゲットとなるタンパク質が見つからない難治性の高い病気でも原因となるDNAやRNAに直接働きかけることで、活路が開けるケースが増えることが予想されている。

 バイオベンチャーで核酸医薬関連銘柄として株価を先駆させたのが東大発の創薬ベンチャーであるリボミック <4591> [東証M]だ。今年2月12日の安値508円を底値に4月5日には高値1250円と、わずか2カ月足らずで株価を2.5倍化させた実績がある。同社は社名にも示唆されているようにリボ核酸(RNA)を活用した分子標的薬(アプタマー医薬)開発で強みを持つことが特長で、その開発力に対する評価は高い。筆頭株主は大塚製薬だが、自社開発品の契約締結も目指しており、世界的な創薬ニーズの高まりが、メガファーマ(大手製薬企業)と創薬ベンチャー企業との業務提携や資本提携の動きを促すなかで、同社の存在感が高まっている。

 10日は、薬物デリバリーシステムに強みを持つ創薬ベンチャーでミセル化ナノ粒子製剤による副作用の少ない抗がん剤開発を進めているナノキャリア <4571> [東証M]が、同テーマを背景に人気化の兆候をみせた。核酸医薬のデリバリーに関する物質特許出願が、欧州特許庁から特許査定を受領したと発表、これを材料視する買いが一時株価を230円高まで押し上げる場面があった。

●協和発酵キリンや日新薬にも物色の矛先

 これに触発されたわけでもないだろうが、核酸治療薬の薬物デリバリーシステム技術開発に経営資源を振り向ける協和発酵キリン <4151> も買いを集め2000円大台を回復したほか、アンチセンス核酸医薬品であるDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)治療剤の開発に傾注する日本新薬 <4516> なども物色資金を引き寄せていた。

 バイオ関連株は先行投資による赤字が肯定化され、物色人気に際し足もとの収益動向は不問とする動きが強い。「夢を買う典型。人間の生命にかかわる分野で政策支援も十分見込まれるだけに話題性も枯れることがない」(株式評論家の雨宮京子氏)と前向きな見方を市場関係者も示す。ただ、一方で「投資家の目も肥えてきており、十把ひとからげにバイオなら何でも買いというほど甘くはない。やはり、バイオ分野でも何に対して市場のニーズがあるのかをしっかり見定めていく必要がある」(国内準大手証券マーケット支援部)という声も強い。

 そうしたなか、核酸医薬は次世代創薬技術の切り札のひとつとして今後マーケットの認知が進みそうだ。

 上記以外の銘柄では、肝硬変の治療薬に使う核酸医薬品の開発が期待されている日東電工 <6988> も注目。スリー・ディー・マトリックス <7777> [JQG]やアンジェス MG <4563> [東証M]なども有力関連株としてマークしておきたい。

(中村潤一)


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