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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「夢相場始まる、バイオ・AI・フィンテック」

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

●猫の目のように変わる地合い

 東京株式市場は前週(4月第2週)後半から上下にボラティリティの高い相場が繰り広げられています。4月第3週の日経平均株価は週明けの18日・月曜日に572円安、19日・火曜日に598円高と今来た道をそのまま引き返すような展開。銘柄物色の流れをみても、18日は主力株を中心に軒並み売り込まれるなか、熊本地震の復興を担うとの思惑から建設と建設資材関連に資金が集中、19日は前日売り込まれた主力株が一気に戻りに転じ、返す刀で建設関連がまとめて利食われるという、まさに月曜日と火曜日の間に鏡を立てたような“V字往来相場”となりました。ただし売買代金は2兆円をかろうじて上回る程度で、市場参加者が少ないなか、インデックス売買により急騰急落が演出された部分も少なからずあったと思われます。

 目先の東京市場のベクトルがどちらを向いているか確信を持って断じることはできません。ただ、猫の目のように地合いが変わる今の乱気流相場では、短期売買でもよほどうまく立ち回らないと利を収めることは難しい。テーマ買いであればどっしりと腰を落ち着けて目先の値動きに一喜一憂しない姿勢を貫くことが大切でしょう。もちろん、無理をせず休むも相場を決め込むという選択肢もありそうですが、個別に目を向ければチャンスは眼前に転がっています。

バイオ関連株が支配するマザーズ人気

 マザーズ市場人気に代弁される中小型株の強さは半端ではありません。「マザーズ指数が9年3カ月ぶり高値」というと、久々に訪れたダイナミズム漲る上昇ウエーブの再現というイメージを受けますが、実際は、9年前の2007年1月時点の東証マザーズ指数は谷底に向かって丸太を転がすような下げ一直線の過程にありました。したがって水準的には9年ぶりであっても、マーケットの高揚感という点では当時とは全く比較にならないのです。ちなみにその1年前の06年1月時点でマザーズ指数は2799ポイントの高値をつけており、いかに急勾配の坂を駆け下りる途上であったかが分かります。

 大天井を打った06年1月はあの有名な「ライブドア・ショック」が新興市場に激震を与えた月です。その後、マザーズ指数は09年以降、4年にわたる底練りを経て、アベノミクス相場が始動する13年初頭に息を吹き返しました。

 現在の東証マザーズ指数の1200近辺はまだその頂点からすれば半値以下にあり、今のマザーズ人気をバブル的と定義するには程遠い水準にあります。時価総額上位には4000億円前後のそーせいグループ <4565> [東証M]を筆頭に、アキュセラ <4589> [東証M]、サンバイオ <4592> [東証M]、ナノキャリア <4571> [東証M]、ヘリオス <4593> [東証M]、グリーンペプタイド <4594> [東証M]、アンジェス MG <4563> [東証M]と今をときめくバイオ関連株がずらり勢揃い。マザーズ人気はバイオ株人気の賜物といっても言い過ぎではないでしょう。おそらく、7月のマザーズ指数先物導入をにらんで、調整局面は織り交ぜながらもバイオ関連の波状的な人気は続く公算が大きいと思われます。

●「官民戦略プロジェクト」で再浮上

 奇麗ごとを言うようですが、株式投資の最も理想的な“形”とは利ザヤをとることではなく、夢を買うことです。現実性を伴う夢追い相場が株高に向けた最強の歯車となることは過去の歴史が証明してきたことでもあります。今の中小型株テーマ物色人気はその潮流が発生していることを如実に示唆しています。

 現在の東京市場の実態は日経平均だけでは語れません。バイオに限らず、人工知能(AI)自動運転車フィンテックドローンと複数の有力テーマとそれに関連する銘柄が、綺羅星のごとく一堂に会している状態。19日には政府の産業競争力会議が成長戦略の概要をまとめ、GDP600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト10」を策定しており、この中には“第4次産業革命”の担い手として2020年高速道路での自動運転、3年以内のドローン配送実現のほか、フィンテックやサイバーセキュリティー、ロボット分野の深耕、そしてそれらに横串を通すAIの強化で日本の技術力を官民挙げて前面に押し出していく構えにあります。

●政治スケジュールにらみ国策買い続く

 相場の全体論としては企業の決算発表本格化を前にガイダンスリスクに注意する必要があり、これが前述した「休むも相場」をひとつの選択肢に挙げる理由ですが、一方で5月下旬の伊勢志摩サミット、7月の参院選(場合によっては衆参同日選)という政治スケジュールを控え、テーマ物色の潮流が失われることもないと思います。

 値動きが激しいがゆえ、投資のタイミングについて留意する必要はありますが、AI関連ではこれまで通り、ジグソー <3914> [東証M]やテクノスジャパン <3666> 、ロゼッタ <6182> [東証M]などの動きをマークしておくところ。自動運転やドローン関連としてはアイサンテクノロジー <4667> [JQ]、ドーン <2303> [JQ]、モルフォ <3653> [東証M]の存在感が大きい。フィンテックでは、さくらインターネット <3778> 、インフォテリア <3853> [東証M]、アイリッジ <3917> [東証M]などが引き続きテーマ物色の中軸を担うことが予想されます。

(4月20日記、隔週水曜日掲載)


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