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【特集】株高エンジン再始動! 自動運転車関連 <うわさの株チャンネル>

アイサンテク <日足> 「株探」多機能チャートより

 15日の東京株式市場は前日までの急騰の反動で利益確定売りを浴びたが、腰の強さをみせて底堅さを発揮した。日経平均1万7000円ラインは今の株式市場にとって相変わらず鬼門ではあるが、ひと頃の悲観ムードに支配された地合いとは明らかに動きが違う。テーマ物色の動きは健在であり、全体相場の踊り場で個人投資家マネーは貪欲に“次の行き場所”を探している。

 そのなか、再度物色人気が盛り上がる気配を漂わせているのが「自動運転車関連」だ。日産自動車 <7201> が高速道路上を自動走行する市販車を8月に発売する、と15日付の日本経済新聞が1面で報じたことで、同テーマに関連する銘柄群が動意づいた。自動運転車普及へのシナリオが現実味を帯びてきたことから、株式市場でも“現実買い”のプロセスが意識されている。

●常連のアイサンテクノを筆頭に軒並み高

 14日は主軸銘柄のアイサンテクノロジー <4667> [JQ]が先陣を切って買われ、ドーン <2303> [JQ]、アートスパークホールディングス <3663> [東証2]、パスコ <9232> 、コア <2359> 、ベリサーブ <3724> といった銘柄にも物色の矛先が向かった。その後は全体の地合いに歩調を合わせて買いの勢いは衰えたものの、総じて頑強な値動きに終始した。

 完全自動運転化への過程では高精度なデジタルマップが必要不可欠になることで、自動走行向けで高い実績を持つアイサンテクノは昨年の秋口から、シンボルストックとして株価の居どころを大きく変えている。今年の大発会には9490円の上場来高値をつけ、動意直前から約7倍化したが、今なお中核銘柄としての存在感は失われていない。

●20兆円巨大市場のインパクト

 自動運転のテーマについては、「今はまさに開発・普及に向け、業界の垣根を越えて各社しのぎを削る状況にあり、常にニュースの宝庫であることが、人気の拠りどころとなっている」(国内準大手証券)という。安倍政権は2020年の東京五輪開催年までに自動運転車の普及促進に積極姿勢を示しており、既に官民足並みを揃えた国を挙げてのビッグプロジェクトに掲げられているといっても過言ではない。現在、自動運転関連市場は5000億円規模にとどまっているが、オリンピック開催後10年を経た30年には20兆円規模の巨大市場が創出されるとの試算もある。

 完成車メーカーにとどまらず、自動車部品メーカーや電子デバイス・素材を手掛けるメガサプライヤーに大きなビジネスチャンスが訪れていることは疑いがない。また、今年の大型IPO候補に目されるロボットや自動運転技術開発のZMP <7316> と提携する銘柄も多く、これも足もとのテーマ物色人気を支えるひとつの柱となっている。

 自動運転車では、自動ブレーキなどの安全運転支援システムを起点の「レベル1」として、ドライバーの操作を全く必要としない完全自動化された段階の「レベル4」を最終的な目標に置く。いま大手各社の開発競争の主戦場となっているのは、この一歩手前の「レベル3」すなわち、高速道路で自動運転を行い、ケースに応じドライバーが対応するというもの。いうまでもなく、15日付で日本経済新聞が報じた日産自動車の動きはここでの相対的優位な立場を裏付ける。

●官民連携で技術立国の面目躍如へ

 松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「自動運転車の歴史はまだ初動段階であり、思惑先行で人気化している部分もある。ただ、世界的に競争は先鋭化しており、ベンチャー企業を含め技術を有する企業と、大手自動車メーカーとの資本提携やM&Aの動きが顕在化することも考えられ、投機資金の動きを後押ししそうだ」と指摘する。

 既に自動車大手6社は自動運転に必要な8分野で共同研究に乗り出しているほか、政府は自動車大手と連携して高精細3Dマップの作成に着手したことも伝わっている。産学官民連携という点で日本は欧米の後塵を拝しており、今後の技術立国日本の巻き返しに期待がかかる。

●自動車IT化で注目の銘柄群

 では、投資家がここから注目すべきポイントと銘柄は何か。

 株式ジャーナリストの雨宮京子氏は「自動運転車というのは車載カメラやレーダー、赤外線センサー、さらに人工知能(AI)などを積み、いわばITの塊のようなもの。自動車そのものが構造変化を遂げ、新たな成長企業を生む。アイサンテクノに限らず、これまで無縁の存在だったIT系企業が大きく絡んでくることが相場に面白味を与えている」と分析する。

 また、銘柄としては、「現時点ではやはりアイサンテクノの存在は大きく、押し目買いの対象として継続注目している。穴株的な要素を持つザインエレクトロニクス <6769> [JQ]もマークしてみたい。短期売買の対象ではなく中期的にじっくり保有するならパイオニア <6773> が有力ではないか」(雨宮氏)という見方を示している。

 このほか、市場関係者の間では位置情報・マップ関連としてクラリオン <6796> やゼンリン <9474> 、JVCケンウッド <6632> などが候補に挙がる。また、自動運転車に不可欠のAI関連として、テクノスジャパン <3666> 、ジグソー <3914> [東証M]などの活躍余地も大きそうだ。

(中村潤一)


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