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【特集】人工知能が人間を超える! 「AI バブル相場」始動へ <うわさの株チャンネル>

サイオステクノロジーの日足チャート 「株探」多機能チャートより

●全面蜂起前夜の気配も

 人工知能関連株が改めて脚光を浴びている。同関連に位置付けられる銘柄群の2月下旬以降の値動きを見れば、まさに全面蜂起前夜を印象づける。

 11日の株式市場ではデータセク <3905> [東証M]、テクノスJ <3666> 、モルフォ <3653> [東証M]、サイオス <3744> [東証2]、エヌアイデイ <2349> [JQ]、ロゼッタ <6182> [東証M]、ジシステム <9758> [JQ]、サイバダイン <7779> [東証M]、ロックオン <3690> [東証M]、ALBERT <3906> [東証M]、フォーカス <4662> 、カドカワ <9468> など人工知能分野に経営資源を投入する銘柄群の株価が軒並み動意する格好となった。個別に固有の材料を内包している銘柄も含まれているが、十把一絡げにして物色資金が群がる現在の値動きは、方向感を失った株式市場で異彩を放っている。

●ついに囲碁世界トップ棋士を凌駕

 その起爆剤となったのが米グーグルの存在だ。冬の余韻が残る3月初旬、囲碁界を走り抜けた衝撃は、人類の歴史的にも偉大なメルクマールとなったといってよい。グーグルが開発した人工知能「アルファ碁」が囲碁の世界トップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏との対戦で勝利。しかも10日現在で、5番勝負の第2局まで文句のつけようのない内容で連勝を果たしたことで、巷間(こうかん)話題を集めた。

 囲碁、将棋、チェス、オセロなど戦いにおける全情報がプレーヤーに公開された「完全情報ゲーム」は、麻雀やバックギャモンなどとは一線を画し、いわゆる偶然性に委ねられた部分が排除されている。その領域において人工知能の進歩は既に頂点に立つ人間のレベルを完全に超越した。

 チェスは終盤にかけて盤上の駒数が減少するため、必然的にその変化余地は縮小するが将棋は取った駒を再使用する持ち駒というルールが定められている関係で、終盤拡散型の特長がある。また、囲碁も石を打つ交点が19×19=361と広く、序・中盤の段階で終盤の構図まで読み込むことは、いかに1秒間に数千万手読むといわれるAIソフトであっても困難を要する。したがって、囲碁と将棋については直感の一撃によって進むべき道が“見える”人間の感性に追いつくのはまだ先である、と考えられていた。

 しかし、それは驚異的なスピードで進化する人工知能によってあっさりと覆される格好となる。

●革命起こしたディープラーニング

 ここにきて革命的な変化を遂げたのは、人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使するディープラーニング(深層学習)だ。情報の「入力層」と「出力層」の間に隠れた「中間層」を厚くして多層構造とすることで識別能力を高めることを可能とした。人間の脳内での情報処理プロセスを模倣し、人間(プログラマー)によるインプットなしにAIソフト自らが学習し成長を遂げていく。ケタ違いの演算能力に加え、膨大なデータを特徴的にとらえ、自ら学習する能力をも携えた人工知能に対し、世の中に存在する「完全情報ゲーム」において人類は既に太刀打ちできない段階に入った。

 これは“偶然性に委ねられた部分が残されている”相場においても対岸の火事とはいえない。トレーディングにおける勝者と敗者をこれまでとは違った次元で峻別(しゅんべつ)する時代の予兆といってよいかもしれない。

●バリュエーションでは語れない“夢買い”相場

 本人も囲碁をたしなむという準大手証券のストラテジストは、今回の人工知能の勝利について、「かなりの衝撃を受けた。人間(棋士)が技をみせてお金を取るというプロの世界の存続すらも揺るがすような話。自動運転車やロボット分野などで人工知能の存在は普及のカギを握っているが、囲碁、将棋の世界だけでなく、人間の仕事全般が失われることへの恐怖も禁じ得ない」という。

 同時に株式市場での関連銘柄の人気については「現段階はバリュエーションを俎上に載せて株価の妥当性を語る局面にはない。結果的に近い将来、AIバブル相場を形成する可能性がある。ただ、今はまだその入り口であり、機関投資家でも足の長い資金を除けば、早い段階で参戦せざるを得なくなるのではないか」との見解を示す。

 日本国内では4月9日からカドカワ傘下のドワンゴ主催で、日本のプロトーナメントを勝ち抜いた山崎隆之叡王と将棋ソフト「PONANZA」の2番勝負が企画されている。この結果にも必然的にマーケットの視線が集まりそうだ。

(中村潤一)


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