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【特集】マイナス金利で加速「自社株買い」が日本株を復活させる <株探トップ特集>

ソフトバンクの日足チャート 「株探」多機能チャートより

―ソフトバンク、日産自など巨額自社株買いの理由―

 東京株式市場で「自社株買い」への関心が高まっている。今年度の自社株買いは過去最高に達するともみられているが、日銀のマイナス金利政策も追い風となり今後の一段の盛り上がりが確実視されている。自社株買いには、株価の“割安さ”を意思表示するアナウンスメント効果もあり、自社株買いの増加は日本株見直しの大きな要因となりそうだ。

●“割安さ”のアナウンスメント効果も

「自社株買い」は増配などの配当政策と並ぶ、株主還元策の「2本柱」のひとつ。企業のROE向上やコーポレートガバナンス強化で、株主還元強化が叫ばれるなか、自社株買いでの株主還元が大きな潮流となっている。

 とりわけ、大きな注目を集めたのが先月15日に発表されたソフトバンク <9984> の自社株買いだ。株価が低迷するなか上限5000億円、発行済み株式数の約14.2%にあたる同社として過去最大の自社株買いを発表し、翌日の株価はストップ高に買われた。また、同様に日産自 <7201> も上限4000億円、発行済み株式数の6.7%にあたる自社株買いを公表し人気を集めた。

 15年度の自社株買いの金額は8年ぶりに過去最高に達するとみられており、16年度も一段の盛り上がりを予想する声は多い。その要因の第一には、日本企業が抱える潤沢なキャッシュフローがある。特に、ソフトバンクの例が示すように、相場の下落局面での自社株買いは、株価の割安さをアピールする「アナウンスメント効果」が最大限に発揮されることになる。

●米国に比べなお低水準、一段のスケールアップも

 さらに、日銀による「マイナス金利」政策も後押し要因になるとみられている。マイナス金利の環境下では、「銀行が企業の大口預金にマイナス金利分の手数料を課す恐れもあることから、今後企業は現金を保有するより株主還元に回すことを優先する可能性がある」(ネット証券ストラテジスト)という。足もとで、自社株買いは増加傾向を続けているが、時価総額対比の自社株取得金額の比率を見た場合、米国などに比べまだまだ低水準にある、ともみられている。

 昨年年間の大型自社株買いは、政府保有株売却に対応した日本郵政 <6178> の約7300億円が最大で、トヨタ <7203> やスズキ <7269> 、三菱UFJ <8306> などが累計で1000億円を超える規模の自社株買いを実施。年初以降もNTTドコモ <9437> や新日鉄住金 <5401> などが大型の自社株買いを発表している。今後の自社株買いは、ソフトバンクや日産自に続くことになり、規模の一段のスケールアップも予想される。

●事業法人が最大買いセクターに浮上

 さらに、日本郵政と同様に大株主の政策保有株売却の受け皿として自社株買いが実施されることも多い。この観点からはメガバンクの保有株売却に対して、地銀が自社株買いで対応するとの観測も強く流れている。

 一部外国証券などは株主還元余地が大きい銘柄をリストアップしている。具体的には、パナソニック <6752> 、村田製 <6981> 、セブン&アイ <3382> 、マツダ <7261> 、ブリヂストン <5108> 、楽天 <4755> 、ニトリHD <9843> 、信越化 <4063> 、アルプス <6770> などが候補銘柄に挙げられている。地銀では静岡銀 <8355> 、千葉銀 <8331> なども候補とされている。

 自社株買いを通じて事業法人の15年年間の買い越し金額は約2兆9770億円となり、最大の買いセクターとなったが、この買い越し傾向は今後も続く可能性が高い。


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