【特集】「人工知能、マーケットを席巻」 <うわさの株チャンネル>
ジグソーの日足チャート 「株探」多機能チャートより
週明け22日の東京株式市場は、日経平均が朝安後に切り返す動きをみせたが、海外株安や為替の円高進行の影響を受けて、売買代金上位の東証1部主力株には株価が冴えないものも少なくなかった。低調な売買代金が今の相場の“気迷い”を映し出している。しかし、その一方で際立ったのが、新興市場を含めた中小型株のテーマ物色の動きである。
とりわけ輝きを放ったのが人工知能(AI)関連に位置付けられる銘柄群だ。
●ジグソー6連騰、ブレインパッドも動意
AI関連では象徴株の一角を占めるジグソー <3914> [東証M]が、業績の高変化を足掛かりに前週から急速に上値追い態勢を強め市場の耳目を集めていたが、きょうも目先の利益確定売りを吸収し6連騰、一時7000円大台に乗せ今年の高値を更新するなど気を吐いた。
加えて、ディープラーニング(深層学習)技術などの研究開発を進捗させ、同テーマの常連銘柄でもあるブレインP <3655> が大幅高、AI活用の次世代型翻訳で活躍が期待されるロゼッタ <6182> [東証M]や、人の未来の行動を予測する独自AI開発で脚光を浴びるUBIC <2158> [東証M]も物色人気となった。さらに、ロックオン <3690> [東証M]、メタップス <6172> [東証M]、データセク <3905> [東証M]、サイオス <3744> [東証2]なども軒並み上値を指向している。
●業態を問わずAI活用が加速へ
日本IBMとソフトバンク <9984> は、人工知能「Watson」を活用した新しいアプリケーション開発に利用可能なコグニティブ・サービスの日本語版の提供を開始している。コグニティブとは人間の脳のように考え、経験を通じて学習することを意味するが、AIはそのずば抜けた計算能力に加え、思考パターンやプロセスも日増しに人間の領域に近づいている。両社は戦略的提携関係のもとで、Watsonを搭載したヒト型ロボット「Pepper」の開発を進捗させる段階にあり、底流ではこうしたIT大手の本腰を入れた協業体制がAI関連全般の株価を刺激している。
加えてここ最近は業態を問わずAIを取り込む動きが加速している。
「直近ではKDDI研究所が、ウインドリバー、日本ヒューレット・パッカード、ブロケード・コミュニケーションズ・システムズと協力して、ネットワーク仮想化時代に向けて、AIを活用した自動運用システムを開発し、実証に成功したことを発表。また、野村総研 <4307> と組んで、インシュアテックの研究を進めている日本生命が、今後ビッグデータやAIなどを駆使して、コールセンター業務や保険引受時の査定を効率化する方法を検討する、と伝わっていることも、人気の引き金となったようだ」(国内準大手証券情報部)と指摘している。
●有望テーマに横串を通すAI
AI関連技術は、フィンテックや自動運転車、ドローンなどの有力テーマとも密接に関わり、いわば横串を通す役割を担っている。関連銘柄の中には各テーマに相互乗り入れ状態で人気を博しているものも多い。
きょうはフィンテック関連のツートップ銘柄ともいえるインフォテリ <3853> [東証M]、さくらネット <3778> がいずれも上昇、ビットコインサービス提供のビットバンクと提携するセレス <3696> [東証M]がストップ高に買われたほか、「マルチペイメントサービス」を展開するウェルネット <2428> も値を飛ばした。
自動運転車のシンボルストックであるアイサンテク <4667> [JQ]も買いが優勢となった。アイサンテクと取引関係を持つコア <2359> も急伸。さらに、GISテクノロジー分野でクラウドとの融合により高度なソリューション技術を展開するドーン <2303> [JQ]は、自動運転車、ドローンの両分野で存在感を示し、短期資金の注目度がひと際高い。きょうは値幅制限いっぱいの400円高に買われ異彩を放った。このほかにも関連銘柄は百花繚乱の様相を強め、今後の値運びに期待を持たせる状況となっている。
●決して色褪せないテーマ
「買い主体は個人投資家。225採用の主力株は先物主導のハイボラ相場で手掛けにくく、その点、新興市場を中心とした中小型株はその範疇(はんちゅう)から外れる。昨年来AI、フィンテック、自動運転車、ドローンなどで買われた銘柄もここ大きく株価を調整したものが多かった。しかし、足もとは全体相場の落ち着きで追い証による投げ売りも止まり、見直し買いが入りやすい状況だった」(国内ネット証券)という。
企業の16年3月期第3四半期決算通過でマーケット全般は足もと手掛かり材料に乏しくなっているが、それは“決算絡み”の銘柄物色から目先が変わるということでもある。そのなかAI関連は今後も決して色褪せることのないテーマ性を内包していることが強みだ。満を持して、株価のボラティリティの高さに着目した仕切り直し相場が、再び展開される可能性が高まってきた。
(中村潤一)
株探ニュース