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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「森は嵐でも木は生い茂る」

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

●“牙をむく”AI関連

 ビッグデータ時代の到来と時を同じくして、あらゆるものをインターネットとつなぐIoT(インターネット オブ シングス)の普及が加速局面に入りそうです。我々はいま新たなIT革命の入り口に立たされています。そしてその背景に厳然とした気配を漂わせているのが人工知能(AI)。こういう言い方は変かもしれませんが、株式市場でも次第にそのテーマ性が牙をむくことになりそうです。

 いかなる推論を積み重ねても辿り着けぬ領域に、直観の一撃をもって鮮やかに到達することができる。これがAIにはなく人間にはある特権、いわゆる感性と呼べる領域であると考えていました。しかし、ディープラーニング(深層学習)という技術革新がその人間の特権というべきエリアをも揺るがす段階に入っているようです。

 従来型のコンピューターは、演算能力がずば抜けていても、プログラミングされた範囲で一定の動作を繰り返す、いわゆる池の中のクジラであり、人間は三次元の世界から二次元を眺めるような余裕がありました。しかし、今は人間と同様に「背景知識を持たない状態から学習して進化する」ことができるステージへ飛躍的な前進を果たしている。さすがに「自我」を持つレベルへの発展は現段階で想定しにくいとはいえ、ある意味、恐怖に値する要素を内包していることは確かでしょう。

●フィンテック人気で底上げへ

 これは株式市場においても株価大変貌の種子を持つ企業が多く存在することを示唆しています。バイオベンチャー関連などと同様、すぐに収益を様変わりさせるような商業的な青写真は描けなくとも、いずれ大輪の花を咲かせる魅力があれば、株価の居どころを変える十分なエネルギーとなり得ます。

 今年は、自動運転車関連のZMP <7316> のIPO接近に対する思惑が底流しており、これもテーマ物色人気に輪をかけることになりそうです。ジグソー <3914> [東証M]やドーン <2303> [JQ]、アイサンテクノロジー <4667> [JQ]といった銘柄に続く新たな株高予備軍が今後出現してくる公算は大きいと思われ、1年を通じてAI関連を旗艦テーマに夢を買うという株の醍醐味を満喫できる可能性がありそうです。

 目先は金融庁の仮想通貨に対する「貨幣」認定の動きを映して、フィンテックのテーマ物色が再燃。さくらネット <3778> 、インフォテリ <3853> [東証M]以外ではアイリッジ <3917> [東証M]、セレス <3696> [東証M]といった銘柄にマーケットの視線が向いています。このほか、値動きに派手さはないものの、インテリW <4847> [JQ]などの出遅れ感にも着目したいところです。

●原油市況と外国人売り

 さて、夢を買う話の後に現実に引き戻すようで気が引けますが、木を見て森を見ずでは思わぬ迷い道に踏み込みかねません。全体相場に目を向けてみると決して楽観できない状況にあり、東京株式市場は相変わらず方向感が定まりにくい展開を強いられています。マーケットが26~27日のG20を強く意識していることは間違いありませんが、金融市場の安定化に向け各国の足並みが揃うかどうかが注目されます。今週はこのビッグイベントが車輪止めの役割を果たし、売り仕掛けが利きにくい地合いを演出しているようです。

 外国人投資家は年初から2月第2週までの6週間で日本株を2兆2400億円売り越しています(東証1・2部合算ベース)。昨年8、9月の2カ月間で記録した3兆7300億円を想起させるほどの売り攻勢です。これが産油国のSWF(政府系ファンド)の資金撤収を反映したものとすれば、原油市況下落の影響は否定しようがありません。しかし、原油先物価格は足もと不安定な動きながら、WTIもドバイもチャートの形状は底入れを示唆しており、ここからオイルマネーが損益の帳尻合わせで、一段と日本株の下値を売り込むという懸念はひと頃より後退しています。

●波乱の源流は為替相場

 ただ、前回申し上げたように東京市場にとってのポイントはあくまで為替動向であると考えています。過去10年を振り返っても日経平均と円・ドル相場は見事なまでの強い相関関係を持っており、これが日本株の帰趨を握っていることは論をまちません。

 G20を境に為替の円高基調にピリオドを打てるかどうか。希望的観測も含めて112~117円のもみ合いに移行するとすれば、日経平均も1万6000円台後半から1万7500円のボックス圏往来が想定されます。とはいえ、米国経済の勢いに陰りが出ていることは覆うべくもなく、ヒラリー・クリントン氏がドル安支持の姿勢をみせるなど、円買いの動きは思った以上に強い可能性があります。一度は110円を割り込む円高局面に遭遇することも覚悟しておく必要がありそうです。

 外部環境を考慮すると、当面は機関投資家の戻り待ちの売りが控える主力株は回避され、引き続き新興市場を含めた中小型株テーマ買いの流れが優勢とみています。

(2月24日記、隔週水曜日掲載)

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