市場ニュース

戻る
 

【特集】窪田朋一郎氏【企業業績から占う相場展開と注目株】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 大型連休明けの東京市場は、ようやく下値模索の呪縛から逃れ7日ぶり反発に転じた。しかし、市場エネルギー不足は否めず上値の重さも露呈している。企業の3月期決算発表たけなわとなるなか、マーケットの視線は当然ながら17年3月期の業績見通しに集中している。第一線で活躍する市場関係者に、これまでの企業の決算発表を踏まえ、収益動向を判断材料とした今後の相場および注目業種・銘柄などについて意見を聞いた。

●「1株利益減少傾向で上値余地も限定的」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 週明け9日の東京株式市場は、前週末までの日経平均6日続落を受けて目先下げ過ぎの反動に伴うリバウンドに転じた。しかし、現時点では自律反発の域を出ていない。低調な売買代金にもそれは映し出されている。

 これまでに明らかとなっている企業の決算発表から見た場合、相場の先行きについて楽観視はできない。前週末時点で全体ベースの17年3月期1株利益予想は1091円。昨年末時点では1222円であったから、そこから130円程度減少した勘定となる。その際の前提為替レートは1ドル=110円前後で、実勢のドル円相場から円高デメリットを考慮すれば、1株利益は1000~1050円レベルまでさらに低下する余地があると考えられる。

 仮に1株利益1000円をモノサシとして日経平均に当てたとすると、現状は16.2倍前後ということになり、海外機関投資家の目から見て少なくとも日本株の割安感は主張できない状況だ。ここにきて原油市況安を背景としたサウジアラビアのSWF(政府系ファンド)などの売り圧力は大きく減殺されているが、かといって日本企業のファンダメンタルズから判断して、実需の外国人買いを誘うような段階にはない。

 したがって、安倍政権や日銀に対する政策期待などは底流しているものの、参院選までの当面の日経平均推移は、1万5000~1万7000円ゾーンの往来相場にとどまるのではないかとみている。

 物色動向としては、まず、為替の円高警戒感が払拭されない状況下で自動車、精密、電機機器などの輸出主導型セクターは手掛けづらさがある。これらのセクターは、ここまでの株価推移で円高による収益圧迫懸念を相応に織り込んできてはいるが、買い戻しに伴うリバウンドはあっても、これに乗って実需の買いが追随することは考えにくい。

 一方、化粧品やトイレタリー、ヘルスケアといったディフェンシブセクターは相対的に優位性がある。花王 <4452> や小野薬品工業 <4528> などは引き続き上値余地がありそうだ。このほか、大成建設 <1801> 、大林組 <1802> 、鹿島 <1812> など大手ゼネコンをはじめ、これから決算発表を迎える建設セクターもマークしておきたい。首都圏の都市再開発や政府による景気対策、熊本地震を受けた復興の担い手としても注目されそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均