貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
株価20分ディレイ → リアルタイムに変更

9651 日本プロセス

東証S
1,089円
前日比
+9
+0.83%
PTS
1,088円
09:21 04/26
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
14.6 1.02 3.49 432
時価総額 116億円
比較される銘柄
PCIHD, 
エクスM, 
富士ソフト

銘柄ニュース

戻る
 

日本プロセス Research Memo(4):2018年5月期を最終年度とする第4次中期経営計画が進行中


■今後の展望

1. 第4次中期経営計画
日本プロセス<9651>は、2018年5月期を最終年度とする第4次中期経営計画を進めている。第4次中期経営計画では、経営ビジョンとして「社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を掲げ、同時に基本方針として1)次の中核ビジネスへの注力、2)人材への重点投資、3)T-SESへの取り組みの再構築、を挙げている。

基本方針の1点目に挙げた中核ビジネスとしては、IoT、自動車、環境・エネルギーへの投資を挙げている。既に、IoTでは、建設機械メーカーとの取り組みが着々と拡大するなど実績を上げており、医療メーカーではIoT案件の獲得に向けて営業活動を進めている状況にある。自動車については、先行きビジネスの広がりが期待できるADAS分野の拡大に向けて自動車システム事業部を新設し、同社の技術力を結集するなど飛躍する体制を整えた。さらに、環境・エネルギーでは、3.11以降の省エネ、再生可能エネルギーへの取り組みや電力自由化などの状況を踏まえ、中長期的な視点で取り組んでいる。

2点目の人材への重点投資が、同社にとって当面の大きな課題になりそうだ。産業界全体、なかでもIT業界において、人手不足が恒常化しており、優秀な人材を採用することが難しくなっている。同社は新卒採用を中心に、新卒採用と中途採用で合わせて全社員の1割の採用を目指しているが、売り手市場に加えて、大企業の大量採用も重なり大苦戦を強いられている。そこで、リクルートの方法を見直したところ、応募者が約2倍に増加したと言う。また、教育にも力を入れており、教育関連費用を従来の2倍にすることを目指し、進めている。

また、人材については、中国人技術者の活用が注目される。同社は2008年に中国・大連に現地法人を設立。現地で採用した人材をブリッジSEとして日本で日本語及び技術教育を実施し、オフショア開発を行う体制を構築した。標準化やパッケージ化などの提案を積極的に行うとともにオフショア開発を推進することなどで、顧客の海外での競争力を支えているが、それと同時に中国人技術者を日本に呼び寄せることで、人手不足の解消にもつなげていく。現時点での大連の現地法人の社員数は60名で100名規模を視野に入れており、次の中期経営計画期間中の連結化を見込んでいる。

最後のT-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)への取り組みの再構築では、交通分野において各地の在来線の運行管理システムで複数機能を一括受注できる準備が整っており、今期より取り組む予定とのこと。顧客の負担が軽減されるとともに、同社としては効率的なソフトウェア開発が可能となることで利益面での貢献が見込める。

第4次中期経営計画に続く、2019年5月期からの第5次中期経営計画について、現時点では青写真を描いている段階だが、基本的には主力事業を育てる方向には変わりはない。過去はリピート受注が中心だったものの、今後は次に成長する分野は何かを見極めるといった戦略経営を進め、新規顧客の獲得を目指す。会社側によると、第4次において“種まき”は完了しており、第5次は“収穫”の時期になるという。

2. 事業領域ごとの現状・課題・今後の展開
6つの事業領域ごとの現状、課題、今後の展開などの詳細については以下に示していく。

(1) 制御システム事業
制御システム事業のうち、エネルギー関連については、2011年3月の東日本大震災で原発が稼動停止になってから、主力事業としている高効率の火力発電所の監視制御システムの重要性は増している。これに加え、例えば、石炭の品質に応じてより効率の良い燃焼条件にコントロールするなど、さらなる効率向上に向けたエネルギーマネジメントで付加価値向上を図っていく。

また、海外競争力の強化に向け、標準パッケージの開発を主導している。全体として、電力自由化に向けてこれまでの発変電中心から、送配電やエネルギーマネジメントなどに軸足を移していく。中長期的に見てもスマートシティ化などの領域はビジネスチャンスが大きい。

交通関連では、在来線に関して2017年5月期に発生した特需のピークは過ぎたものの、開発量が多い状況は継続する。また、2018年5月期中に在来線の複数機能をまとめた一括受注(T-SES)に取り組み、生産性の向上を図ることで収益アップを目指す。一方、新幹線は作業量が少ない傾向が継続していたが、10年ごとの大型改修案件が迫っており、準備プロセスがスタートするなど順調に推移する見込み。

(2) 自動車システム事業
完全自動運転に向けて、今後、特に伸びが期待できる分野である。2016年6月に社内で自動車システム事業部を新設したことが象徴的な事例だが、前述したように、中期経営計画においても、中核事業に位置付けた。カーナビゲーションなどの車載情報に関しては現状維持、ないしは微増を見込んでおり、自動運転につながるADAS分野に関するビジネスが稼ぎ頭になっていくものとみられる。

ADAS分野は、車載カメラから車載ネットワーク制御まで範囲を拡大しているが、自動車の眼となる画像認識・識別の領域に関してはデファクトスタンダードが定まっておらず、その分、踏み込みやすいと言えそうである。ただし、恒常的に技術者が不足しており、技術者育成が課題になりそうだ。

(3) 特定情報システム事業
この分野は安全保障に関わる案件がメインであり、防衛予算に左右されやすい側面があるものの、危機管理に対する意識の高まりから、中長期的に伸びが期待できそうだ。手掛けている大型案件が10年に1度の更新需要があり、5年目の中間のリプレイスでビジネスが発生するなど、その意味で計算が立ちやすい分野でもある。

ADASの車載カメラ画像認識・識別に関するビジネスは、このセグメントで培った技術の展開であり、AIやディープラーニングなどの新たな技術も絡め、今後も自動車以外の分野でも拡大が見込めそうだ。

(4) 組込システム事業
以前は情報家電が主軸だったが、現在ではコンシューマー向けやデータセンター向けのSSDなどが中心となっており、新規分野の開拓に力を注いでいる。会社側ではSSD一極集中から、次の中核ビジネスとなる分野の開拓を加速させるという。

1つは医療分野で、2017年5月期には医療機器メーカー2社との取引を拡大させた。もう1つは、IoTに関連するビジネスで建設機械メーカーとの取引を開始したが、今後もIoTについてはビジネスの拡大が見込まれている。

(5) 産業・公共システム事業
鉄道関連システム、ICカードなどが安定して推移しているほか、準天頂衛星の精密な位置情報の利用分野など将来的に期待できるビジネスが少なくない。同社が得意とする制御、組込系システムで情報系分野の開拓を目指している。

そのためには、他セグメントとの連携が重要となる。例えば、現在、組込システムで取り組んでいる建設機械のIoT分野で、サーバー側のビジネスアプリケーションへの参入に向けて情報交換をするなど、着々と進めていく。また、請負開発が得意なことも強みとしている。中国大連のグループ会社でのオフショア開発も活用しながら、事業拡大を図る。

(6) ITサービス事業

IoT、クラウド、ビッグデーターなど、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しい中、各社とも迅速なITシステムの構築が求められている。システムを効率的に開発するための環境構築や、顧客のビジネスに最適なシステム運用をするための環境構築など、システム構築サービスの拡大を狙う。

前期において、戦略的に検証サービスからシステム構築サービスに軸足を移し、技術者の育成を進めてきた。更なる新規顧客の獲得と、既存顧客でのシェア拡大を図っていく。一方、システムの運用・保守サービスにおいては、サービス価値の向上で差別化を図るとともに、システムリプレース時でのシステム開発案件の獲得を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)

《HN》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均