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【市況】武者陵司 「相場転換、バスに乗り遅れるな (前編)」

武者陵司(株式会社武者リサーチ 代表)

―日本株安と円高をもたらした日本人の悲観は大修正される場面に―

武者陵司(株式会社武者リサーチ 代表)

【1】相場転換点が到来

●急展開した世界金融市場、リスクオン気運一段と

 9月15日(金曜日)早朝、北朝鮮ミサイル発射直後に日経平均先物が急落したが、それを踏み台に、株価は急反発、日経平均株価は15日の終値でほぼ1ヵ月ぶりに1万9,900円台を回復、配当権利落ちを戻した日経平均先物相場は2万円を回復した。

 同時にドル円相場にも大転換の兆しが表れた。8月29日:弾道ミサイル発射、9月3日:北核実験実施直後の9月8日に円は急騰し107円台をつけたが、それもダメ押しの高値であった可能性が濃厚である。米国株式は3指数そろって先週も史上最高値を更新した。米国長期金利も底入れからリバウンド、中国外貨投資規制緩和(9月9日:為替先物取引の保証金率を20%からゼロに撤廃)により対人民元のドル安底入れの機運がある。世界的リスクオンムード、ドル高転換の条件が強まっている。さらに日本株式を見るうえで重要な空売り比率に大きな転換シグナルが表れている。

●空売り比率ピークアウト、明白な転換点に

 先週初め(9月7日)、東証空売り比率は43.0%の高水準を付けた後に急低下、ピークアウトを記録した。空売りピークとTOPIXが底値をつけた日付をみると、過去の空売り比率ピークアウトは、株式相場転換点と同期している(同日長くても一週間以内)。また、空売り比率のピークアウトは円高のピークアウトとほぼ時期が一致している。最近の空売り比率ピーク時(2014年10月15日、2015年9月29日、2016年6月16日、2017年4月10日)を見るとその相関が明瞭である。

●株価ボトム後33日で15%値上がりが過去の平均値

 また、底値と直後高値(長期上昇ではなく短期反発のピーク)との関係を見ると、平均33営業日後に、平均15%の値上がりとなっている。それを今回に当てはめれば10月27日にTOPIX1838、日経平均では2万2,165円まで、ほぼ一直線の上昇が期待できるということになる。最も小幅な上昇であった今年4月のケースを当てはめても、16日後の10月3日にTOPIXで1,742、日経平均2万1,009円が期待できる、ということになる。

【2】不思議なこれまでの円高・日本株安、元凶は日本人の過度の悲観では

●円ショート積み上がる、新興国投資の調達通貨として

 2017年6~8月の国際資本移動のポイントは、トランプポジションの巻き戻しと新興国投資及びユーロ高であった。トランプ財政政策への失望→米金利低下・ドル安→ユーロ及び高イールド新興国投資活発と中国・インド・オーストラリア・ブラジル通貨大幅高(軒並み5%値上がり)という連鎖が起こった。同時に新興国の株価も上昇した。

 しかし他方、円は新興国投資の調達通貨として大幅に売られた(キャリートレードに基づく円ショートボジションが積み上がった)。9月14日のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)は円ショートポジションの大幅積み上がりと好対照に外国人による中国短期債券投資の急増を伝えている。

●円ショートの積み上がりにもかかわらず、円高になった秘密

 ミステリーは相当の円ショートポジションが続いていたにもかかわらず(8月以降、若干水準は低下しているが)、円高が進行したことである。

 それではグローバル投資家の円ショートポジションに向かって誰がドルを売ったのかといえば、それは日本の国内投資家、個人、機関投資家であろう。日本ではメディアのやや一面的な報道もあり、トランプ大統領がリードする米国に対する警戒心は強い。また、北朝鮮の軍事挑発が続き、世界的リスクオフ環境が強まるとの観測で、日本人投資家は対外投資を圧縮してきたと推測される。

 9月14日の日本経済新聞は日本投資家の対外警戒を報じている。本来逆張りの日本のFX投資家(通称ミセスワタナベ)が、9月8日の円急騰前後にむしろドル投資ポジションを減らしていることを報じている。通常と異なり日本の為替投資家がドル高の持続性に疑問を持っている表れと日経新聞は解釈している。

 この不思議な円高の下で、日本株不振が進行した。過去、日本株安は円高ドル安と連動するという相関がある。過去1年の株価上昇場面は2016年11~12月、2017年4~5月であったが、ともに円の下落、外人買い増加局面であった。したがって、円高場面で外国人投資家が過去の相関に従って日本株を売ったのである。

●根拠の乏しい安倍政権批判が外人売り誘う

 日経ビジネス9月18号では外国人投資家が安倍政権の安定性など日本経済に悲観して日本株を売り、日本株比率引き下げをし、それが日本株安をもたらしている、と報じている(「日本株リスク、北朝鮮だけじゃない」日経ビジネス9月18号)。

 しかし、日本株低迷の火種は日本人なのではないか。メディアが中心になり森友、加計学園問題で安倍政権批判が強まった。また、2%のインフレターゲットが困難ということをことさら強調して、アベノミクス失敗という論評が、キャンペーン的に展開された。さらに東京都議選で自民党が大敗し、政権レームダック化との見方が喧伝された。外国人はこの日本人発の政局不安に影響された可能性が大きいのではないか。

 日本人の内外投資環境に対する過度の悲観が円高と外国人投資家の日本株売りを誘発し、日本株式の劣悪なパフォーマンスをもたらした、と推測される。日本株売りの火種が日本人の不適切な悲観にあったとすると、それは急速に是正されるべき局面が到来している。

 (a)北朝鮮軍事挑発の日常化、市場の鈍感化、(b)トランプ政権の進化、米国政策の進展が市場のポジティブサプライズに、(c)疑問の余地なき世界同時好況、(d)日本企業業績上方修正、安倍政権支持率上昇、解散総選挙による政権求心力の高まり、(e) FRB、ECBの金融政策転換はネガティブ要因ではない、等が織り込まれ、世界的リスクテイクを推進するものとなろう。ドル高、日本株高がその中心になりそうである。

※「相場転換、バスに乗り遅れるな (後編)」に続く。

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