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8137 サンワテクノス

東証P
2,241円
前日比
-8
-0.36%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
7.1 0.72 4.24 56.57
時価総額 360億円
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決算発表予定日

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サンワテクノス Research Memo(6):エンジニアリング、グローバルSCMソリューションの事業成長に注力


■中期経営計画の進捗状況

2. 『コアビジネスの強化でお客様のものづくりに貢献する』の進捗状況
中期経営計画で掲げられた4つの基本方針のうち、「コアビジネスの強化でお客様のものづくりに貢献する」というテーマは、サンワテクノス<8137>の成長戦略の中でも最も重要な施策と位置付けられる。なかでも、注力しているのがエンジニアリング事業とグローバルSCMソリューション事業の2つの事業で、いずれも売上規模としてはまだ100億円前後だが、今後の売上規模の拡大と収益性向上を実現していくうえで重要な事業と考えられる。それぞれの事業の進捗については以下のとおりとなる。

(1) エンジニアリング事業
エンジニアリング事業とは、従来、電機部門・電子部門・機械部門の3つの領域それぞれが取扱商材を単品販売してきたものを、同社が各商材を組み合わせてシステム化し、顧客最適を行った上で販売する事業となる。すなわち、エンジニアリング事業とは、何か別の新しい事業ではなく、商社機能における販売手法の1つと言える。同社が同事業に注力する背景には、産業用ロボット等のFA機器の高機能化が進展し、また、需要先のニーズもそれに応じて多様化するなかで、個々の商材を単品販売するだけではこうしたニーズに対応できないこと、また、エンジニアリングという付加価値を付けることで収益性を高めることが可能で、1件当たりの受注規模も大型化していくことが可能であり、収益性の向上と同時に事業規模を拡大していくことが可能と見ているためだ。

エンジニアリング事業の2021年3月期第2四半期累計の売上高は約45億円と前年同期比では若干減少したものの、売上総利益率は前期実績の13.1%から14.3%に上昇した。受注実績として、FPD関連業界向けの搬送設備や、産業機械業界向け組立ロボット装置などがあるが、今後は産業用ロボットの導入やIoTを活用した省人化ラインの構築案件が増えてくる見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、当初は3年先の導入計画だったものを前倒ししたいという声が出てきていると言う。外部環境が不透明なことから、投資実行の最終決断までには至っていないが、先行きがクリアになってくれば、同様の設備投資案件が増えてくるものと思われ、エンジニアリング事業拡大の好機になると弊社では見ている。

同社の売上総利益率は全社で10%台だが、自動車(車載)業界向け電子部品を除けば、11%以上あると見られる。このため、エンジニアリング事業の付加価値分はまだ3%程度にしか過ぎない。同社が目標とする売上総利益率は25~30%であり、同水準を下回っているのは、同社が過去の知識・経験を生かして顧客提案する案件が少なく、顧客からの注文を受ける形での案件が大半を占めるため、1案件に対するエンジニアの人件費等のコストが高くなり、本来の付加価値部分の対価が十分得られていないことが要因と考えられる。

同社のエンジニアリング事業についてはこれまで、カレーになぞらえて説明してきた。すなわち、従来は肉と野菜と米を素材のまま個々に販売していた(代理店事業)のに対し、それぞれの食材を用いてカレーライスとして販売しようというのがエンジニアリング事業であり、カレールーの製作作業と味付けが同社のノウハウであり付加価値部分となる。しかし、現状は同社のレシピでカレーを作って顧客に提供するのではなく、毎回、顧客の好みに合わせてカレーライスを作っている状況に近く、それがゆえにコスト部分にかかる対価を得にくく、利益率が十分に取れない要因となっている。

こうした状況を受けて同社は、2020年3月期よりエンジニアリング事業のビジネスモデルの練り直しに着手し、過去の知見を生かせないような案件の受注は見送るという、採算性重視の営業方針に切り替えた。こうした取り組みが売上総利益率の向上につながっていると見ることができる。ただ、もう一段の利益率向上に向けては、同社が蓄積したノウハウをいかに標準化したサービスとして顧客に提供していく体制を構築できるかがカギを握る。既述のように今後は電子部品組み立てや食品業界など様々な業界で省人化投資が進み、顧客獲得の機会も広がることが予想される。顧客ニーズを満たし、かつコストメリットを感じられるサービスを提供できるようになれば、エンジニアリング事業の売上拡大と同時に収益性を向上していくことも可能となる。特に、高い収益性が見込まれる大型案件の受注が増えてくれば売上総利益率で25~30%の達成も視野に入ってくるものと思われる。なお、同事業におけるエンジニアの人員は50名程度となっており、当面はこの人員体制で事業を拡大していく方針だ。

(2) グローバルSCMソリューション事業
グローバルSCMソリューション事業は、同社が古くから行ってきた調達代行や物流代行、納期管理といったサービスがルーツとなっている。同社の主要取引先のメーカー各社は、大手企業ほど効率化を追求し、事業構造改革やリストラを推進してきた。その過程でグローバル物流や在庫管理、資材調達等の分野も人員・拠点の削減対象となり、人材が不足している状況となっているのが現実だ。同社のグローバルSCMソリューション事業はそこで生じるアウトソーシングニーズを取り込むサービスとなる。顧客メーカーが今まで独自で各サプライヤーから調達していた電子部品や設備等を、同社に集約することで、顧客は調達コストの低減やリードタイムの短縮といったメリットを享受することができる。

個人の引っ越しを例に取ると、従来の調達代行や物流代行の時代は荷物を旧宅から新居に移動して終了だ。一方、グローバルSCMソリューション事業においては、引っ越してすぐにテレビやパソコンが使えるよう、アンテナやWi-Fi機器を調達し設置するところまでカバーする。新居の地域に応じたアンテナやWi-Fi機器の選定・調達と配線の構築がエンジニアリング事業に当たり、この引っ越しを契機に外構・植栽の整備なども併せて受注できればビジネスの拡大になる。同社は技術商社としての長い歴史で蓄積したノウハウと、海外の幅広いネットワーク(世界26拠点)を強みとして活用し、グローバルSCMソリューション事業の拡大を目指している。

2021年3月期の売上高は前期比28%増の約110億円に拡大する見通しだ。新規顧客の獲得が進んでおり、その中で大型案件を受注したことが増収要因となっている。新規案件として、ハーネス加工メーカーの海外輸出代行業務を受注している。なお、営業戦略としては顧客からの依頼を待つ受け身型の営業スタイルとなっている。2019年4月にグローバルSCMソリューション事業部を発足以降、売上拡大を優先し積極的に受注を取りに行った結果、収益性が低下したため、採算を重視した営業戦略に戻している。

それでも、グローバルSCMのアウトソーシングニーズは今後も拡大すると弊社では見ている。米中貿易摩擦の激化もあって中国から東南アジアや中南米あるいは日本に工場を移転する動きが一部で出始めているが、工場移転の際に現地部品調達等のシステムを一から自社で構築するのは非効率なためで、実際に同社への引き合いも増えている。同事業では、既存顧客との取引規模拡大につながるだけでなく、新規顧客獲得の機会ともなる。なお、SCMサービスにおける競争力を強化するため、事業部の発足と同時にグローバル物流インフラの見直しと改善活動を開始している。その一環として倉庫管理システム(WMS)の本格運用を開始し、案件ごとの物流コスト可視化を実現することで、収益性の改善を図っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《EY》

 提供:フィスコ

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