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【市況】武者陵司「2021年コロナ制圧、世界同時好況が視野に、怒濤の日本株高も」<前編>

武者陵司(株式会社武者リサーチ 代表)

●2020年末世界株高ブーム

 サンクスギビングからクリスマスへと続くホリデーシーズンに入り、米国株価3指数揃っての史上最高値更新という最大級のプレゼントがもたらされた。コロナパンデミックによる6週間で4割前後の株価急落からの鋭角的回復は、最も楽観的であった 武者リサーチの想定をも遥かに上回る展開である。しかし、より大きなサプライズが日本株式の顕著な台頭である。日本株式は史上最高値とはなっていないが、ここ数カ月の世界株式市場では突出した好パフォーマンスとなっている。

 コロナパンデミックが起きる直前までは世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、米国株価はリーマン・ショック後10年間で4倍になっていた。武者リサーチは、この長期経済ブームの波は終わってはいない、コロナの後は再度上昇の波に戻ると主張してきた。理由はコロナが歴史の流れを押し進めると考えられるからである。この主張の正しさは、株価上昇によって証明されつつあると考える。

(1)日本株の時代が始まったか

◆突出する日本株の勢い、日本金融の安定性

 日本株式の突出した好成績が注目される。8~11月の株価上昇率を比較すると、日経平均株価 +19.1%、NYダウ +11.2%、S&P500 +9.9%、韓国KOSPI +15.1%、台湾加権 +9.7%。ドイツDAX +5.1%と日本株の強さが際立つ。特に米国大統領選挙を前後して米国株式が大きく乱高下した中で、日本株式には押し目らしい押し目がなく、突出した安定性が続いている。

 金利の世界でも日本は世界の落第生の地位を返上した。デフレとゼロ金利は長らく日本の専売特許であったが、今や日本の長期金利は+0.02%と欧州諸国のマイナスを大きく引き離している。長短金利差(イールドカーブ)は不十分ながらスティープ化(短期金利と長期金利の差が大きくなること)し、ドイツやフランスなどの欧州諸国よりも金融機関の収益基盤が強められている。日銀の革新的イールドカーブコントロール政策が効いている。また、後述するが、財政出動が日銀の荷重を和らげている。世界最先端(?) の財政金融政策連携が機能し始めている表れと評価できる。

 この安定性は為替市場にも表れている。米国の超金融緩和策の結果、ドル安が進行しているが、対日本円ではドルの下落はごく限定的である。韓国、台湾と比し円高はマイルドであり、日本株式を鉄火場にしていたボラティリティも相対的に大きく低下している。そもそも日本株は割安、かつ企業の財務安定性が強固で、いつ見直し買いが入ってもおかしくない状況にあった。その超割安是正の株式バリュエーション革命が、コロナ後に展望される世界同時好況をきっかけとして、起き始めているのかもしれない。

◆歴史的大相場の可能性

 日本株式の11月以降の度肝を抜く強さと安定性は、日本株式が新たな上昇加速ステージに入っていることを示唆する。その場合、2000年代以降の3回目の上昇相場である可能性が出てくる。先行する2回はどちらも息の長い上昇相場であったが、当初の急騰場面の短期上昇が強烈であった。2005年8月から始まった小泉郵政解散相場は、最初の5カ月(2006年1月まで)で42%の上昇となった。2012年11月から始まったアベノミクス相場は、最初の6カ月(2013年5月まで)で66%の上昇であった。今回が2000年以降3回目の大相場とすれば、菅政権成立時、2020年9月2万3000円を起点として、30%上昇なら3万円、40%上昇なら3万2200円、50%上昇なら3万4500円が視野に入ってくる。

(2)2000年以降の3大相場の5条件

 先行する2大相場、小泉郵政解散相場、アベノミクス相場を分析すると、5つの共通要因があることが分かる。そして現在、この5条件が満たされつつある。第1の条件は、それに先立つ数年間、株価は低迷状態にあった、つまり上昇のバネが蓄えられていたということである。今回も2018年以降、日経平均は2万4000円を頭に、数度の急落が繰り返される停滞、波乱相場が続いた。11月の2万4000円台突破でようやくこのレンジを突き破ったのである。11月1カ月間の3350円という急騰は過熱感をうかがわせるが、率でみると14.5%であり、先行する2大相場と比較すると、入り口としては過大なものではない。押し目がない、買いたい弱気筋に買い場が来ない可能性を示唆する。

◆外国人の日本株買いの条件整う

 第2の条件は、外国人買いの急増である。2000年以降の株価急騰はいずれも外国人が主導した。外国人持ち株比率は小泉郵政解散時には2004年末23.3%から06年末27.8%へ、アベノミクス時は12年末28.0%から14年末31.7%へと急伸した。今回は、外国人はアベノミクス時に取得した累計23兆円をすべて売却し、2019年末の外国人持ち株比率は29.6%まで低下している。日本株式をアンダーウェイトにし切った状態であり、11月は慌てて買い増し始めた状況である。

◆コロナ沈静後、世界的経済ブームの可能性

 大相場の第3の最も重要な条件は世界同時好況である。新型コロナワクチンが実用化されれば、後述の(A)イノベーションの加速、(B)空前の財政金融支援、(C)ペントアップデマンド(繰越需要)と潤沢な貯蓄が相乗的に作用し、大経済ブームが到来するだろう。銅、鉄鉱石海運などの市況が数年ぶりの高値にあること、米国株式では景気敏感なバリュー株がアウトパフォームを始めたこと、景気感応度の高い新興国市場投資が急増していること、バイデン新大統領の下で米中対決がルールベースになり、不透明感が消えていくと予想されること、日本の対米・対中輸出が大きく増加に転じていることなど、景気回復が早まっていく兆しが表れている。武者リサーチは、コロナパンデミックが障害物を押し流し歴史の歯車を加速する、コロナ後の世界経済の成長率は高まると主張してきたが、その可能性が表れつつあると言えよう。

 国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しを2020年-4.4%、2021年+5.2%と2021年になってもコロナ前に戻らないとしているが、ワクチン急普及・コロナ鎮圧に成功すれば、むしろ2021年後半、遅くても2022年までにはかつてない速いペースの世界景気回復が見られるかもしれない。

 第4の条件は人気要素、特に外国人が好む改革アジェンダの推進である。菅首相が歴代首相の中で最も改革に熱心であることは広く知られており、結果を出せば外国人は素直に評価するだろう。W. バフェット氏の日本5大商社への株式投資は、日本ブームの着火剤になるかもしれない。

◆コロナ後は米金融引き締め、ドル高へ

 第5の条件は、円安進行である。これが最も困難で重要かもしれないが、その可能性も十分考えられよう。コロナ鎮圧、バイデン財政出動となれば、米国FRB(米連邦準備制度理事会)の超金融緩和政策の転換が見えてくる。

※<後編>へ続く

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