【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 「期待材料>不安材料」どこまで続く
株式評論家 植木靖男
「『期待材料>不安材料』どこまで続く」
●ここからは“勝負の1~2週間”か
日経平均株価は期待材料と不安材料が交錯する中、しっかりとした足取りをみせ、じりじりと水準を高めてきている。2万7000円大台乗せも近い。一方、米国でもNYダウ平均は待望の3万ドル大台に到達した。
「期待材料>不安材料」という方程式は、このまま持続するのであろうか。
話はそれるが、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。政府はGo Toキャンペーンを巡って手綱を引き締めたり緩めたりしながら、対コロナと対景気との両建てを図ろうとしている。理屈では正しいが、現実は厳しい。前にも触れたが、“あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たず、両方立てようとすれば身がもたぬ”という格言がある。なぜ、感染者数がこの水準になったら一時停止をするといった基準を定めなかったのか。政府の怠慢が、いまのごたごたを招いている。情けないとしか言い様がない。
政府は“ここからの3週間が勝負”と気負っているが、仮に一段と感染が拡大するようであれば景気の二番底、なかには恐慌の恐れも、といった極端な話も耳にする。
さて、期待材料が勝る現状はしばらく続くとみてよさそうだ。期待材料の最たるものは需給の好転だ。海外筋の買いが戻ってきたようだ。年前半に大幅売り越しとなったが、買い戻しが進んでいるようだ。過日、バフェット氏の商社株買いが話題になったが、あれはここへきての日本株買いの号砲だったのかもしれない。
加えて、配当金の支払いも数兆円あり、再投資に向かうと予想される。M&Aによる投資増も魅力だ。個人の預貯金は給付金などもあり1000兆円に達している。カネ余りに変化はなさそうだ。なによりの期待材料といえよう。
一方、気になることといえば、次の点だ。
1点目は、コロナ拡大による実体経済への悪影響。2点目は、11月末から12月にかけて米国ではワクチンの使用がいよいよ始まる、との見方がある。そうなった時、株式市場への影響はどうなるのか。これまではグロース株がコロナ感染拡大懸念で買われてきたが、歯車が逆回転しないだろうか。
3点目は、市場内部要因である。11月18~20日、株価は一服したが、その後わずか1日で戻り高値を更新している。通常こうした際、安値圏ではこの一服は一通過点で済むが、高値圏では往々にして1~2週間で上げ止まることが多い。まさに“勝負の1~2週間”である。
以上の3点に気を使いつつの投資が肝要である。
●高値圏で配慮すべきは流動性の確保
ところで、当面の物色対象はどうか。米国では一段とハイテク株に偏った物色となっているが、日本株ではハイテク、景気敏感株の混在物色が際立っている。たとえば、電子部品株が買われる中で非鉄株が同時に物色されるという状況にある。
ただ、ここに至って注意すべきは、いつものことながら流動性に配慮すべきということであろう。少なくとも1日の出来高が50~100万株ある銘柄である。もちろん、業績好転が第一義的であるが、高値圏では日替わりメニューの性格が強まる。流動性があれば、そうしたリスクを回避することが可能だ。指数連動型ETFに人気が集まる所以でもある。
今回は参考銘柄として、SBIホールディングス <8473> が出資したメディカル・データ・ビジョン <3902> に注目したい。病院関連のデータ保有は強みだ。また、セラク <6199> も妙味がありそうだ。システムインテグレーション事業やデジタルトランスフォーメーション(DX)事業、IT人材派遣などが伸び業績好調だ。中期的に東京精密 <7729> もおもしろい。半導体装置関連の出遅れだ。
2020年11月27日 記
株探ニュース