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2025年の波乱要因は? IMF・欧米中銀報告から投資戦略を探れ! <株探トップ特集>


―8月5日の大暴落から4ヵ月超、AIによる「群衆行動的な売買」にはなお警戒感―

 日経平均株価が4万円の大台を手前に一進一退の展開となっている。2024年は残すところ9営業日と年末相場に差し掛かり、「掉尾の一振」が期待される局面にある。しかし、国際機関や欧米の中央銀行は25年について、マーケットのさまざまな分野で波乱要因が潜んでいる、とみている。彼らが何にリスクを感じているのか知っておくことは決して無意味なことではない。

●緩和環境で短期リスクは抑制も

 国際通貨基金(IMF)は半年ごとに国際金融安定性報告書(Global Financial Stability Report、GFSR)を公表している。10月22日に公表したGFSRのタイトルは「針路の安定化:不確実性と人工知能、金融の安定性」だった。

 報告書では「緩和的な金融環境は短期的なリスクを抑え込む」とする一方、「資産評価の高騰や、民間債務・政府債務の世界的な増加、ノンバンク金融機関によるレバレッジの使用の増加などの脆弱性が蓄積する要因となる」などと指摘。「脆弱性によって負のショックが増幅し、将来の下振れリスクが高まる可能性がある」との見解を示している。商業用不動産(Commercial Real Estate、CRE)部門は「依然として深刻な圧力にさらされており、一部の中堅企業の借り入れはますます逼迫している」とした。

 パンデミックを受けたインフレや地政学リスクの高まりを背景に、世界経済の不確実性は一段と高まった。何かしらのショックの発生により、低位で推移する市場のボラティリティが急激に高まった場合、実体経済に対して余計に大きな悪影響が及ぶ可能性もある。報告書では緩和的な金融環境の中で適切な政策の実施や、公的債務の抑制を通じ、マクロ金融の脆弱性に対する「頑健性」を構築すべきだと主張する。

 加えて、報告書が注目したのが、生成AIが資本市場に及ぼす影響である。アルゴリズム取引に関連した特許出願に占めるAIコンテンツの割合は17年の19%から20年以降は50%以上に拡大したという。イノベーションの波はマーケットのあり方を揺るがしつつあり、群衆行動的な売買が増えれば、ボラティリティをより増幅させることとなる。

●欧州ではインフレから成長に懸念がシフト

 欧州中央銀行(ECB)も11月20日に半期に一度の金融安定報告(Financial Stability Review、FSR)を公表した。前号のFSRが発表されて以来、ユーロ圏のマクロリスクは高止まりするインフレ懸念から、成長に対する懸念へとシフトしていると言及。政策の不確実性と地政学リスクがユーロ圏の経済の重荷となるなかで、金融緩和はCRE市場にとってはポジティブであるものの、下振れリスクは残っていると分析した。

 また、株式市場におけるバリュエーションの高さを懸念事項に挙げつつ、ボラティリティの急上昇に対する金融市場の脆弱性と、ユーロ圏の金融市場が世界経済に悪影響を及ぼすリスクの存在について指摘。なかでもNBFI(非銀行金融仲介者)部門では一部のファンドにおいて、特定企業へのエクスポージャーが高まっているとし、規制や監督を通じて金融システムの安定化を図る「マクロ・プルーデンス」の視点から、流動性ショックに対するファンドの「レジリエンス」を強めるなどの政策対応が求められているとの認識を示している。エヌビディア<NVDA>など米国の巨大テック企業の株式に世界の投資マネーが集中している状況を念頭に置いているようだ。

●ヘッジファンドのレバレッジ水準にリスクの芽

 米連邦準備制度理事会(FRB)も11月22日に金融安定報告(FSR)を公表した。株式のバリュエーションの評価に関しては依然として高い水準にあるとしたほか、社債についても米国債とのスプレッド(利回り差)が過去と比較して低水準にあり、割高な状態にあると指摘。株式と一部の債券市場で流動性が低いままとなっており、ショック発生時の悪影響を増幅させる可能性があるとの見解を示した。

 銀行システムに関しては全体として健全だと評価した半面、ヘッジファンドのレバレッジについては、利用可能な過去のデータと比較して過去最高レベルにあると分析している。更に金融システムに対する短期的なリスクについて、ニューヨーク連銀による専門家への調査結果を提示。米国政府の債務持続性を巡る懸念や、中東情勢、政策の不確実性、米国の景気後退を挙げる回答が上位を占めた。

 IMFのGFSR、ECBやFRBのFRSが懸念している点には共通点がある。ボラティリティへの脆弱性、ヘッジファンドなどNBFI部門へのリスクの蓄積、株式に対する過大評価、 AI関連株を巡るバブルの可能性である。CRE市場動向も引き続きリスク要因としてみなされている。

●マーケット調整時に物色候補となる好業績銘柄

 これらのリスクが顕在化した際には、マーケット全体が調整圧力を受けることとなるだろう。しかしながら、日経平均が過去最大の下げ幅(4451円安)となった8月5日のような暴落に株式市場が再び見舞われたとしても、緩和的環境が継続し、金融当局による監督が適切になされているのであれば、マーケットの回復力は相応に備わった状況にあると判断することは十分に可能である。金融セクターや、投資マネーが集中するAI関連株において、一時的な調整が一服した後には好業績銘柄を中心に物色されることとなりそうだ。

 金融セクターでは、ふくおかフィナンシャルグループ <8354> [東証P]や八十二銀行 <8359> [東証P]、楽天銀行 <5838> [東証P]などが25年3月期の経常利益について過去最高益となる見通しを示している。地銀株は全般に国内金利の上昇による利ザヤ拡大や政策保有株の縮減の加速による業績押し上げ効果への期待が強く、来期の業績に明るい展望を描ける銘柄については、幅広い投資家から選好対象とされることとなるだろう。16年ぶりの自社株買いに踏み切ったみずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]に象徴されるように、株主還元策についても引き続き大きなテーマとなるはずだ。ノンバンクなど「その他金融」セクターでは、売掛債権保証などを展開するイー・ギャランティ <8771> [東証P]が連続最高益更新銘柄となっている。

 AI関連でのソリューションを手掛けるpluszero <5132> [東証G]やヘッドウォータース <4011> [東証G]、Appier Group <4180> [東証P]は今期最高益を計画。 生成AI向けGPU(画像処理半導体)クラウドサービスを提供するさくらインターネット <3778> [東証P]には、ガバメントクラウドという国策の追い風が吹きつけている。生成AIライブコマースプラットフォームを手掛けるAnyMind Group <5027> [東証G]や、企業向け自律型AIエージェントを通じたビジネス支援を展開するジーニー <6562> [東証G]、AIによるFAQボットを手掛けるL is B <145A> [東証G]なども成長期待が高く投資家からマークされそうだ。

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