いい生活 Research Memo(1):サブスクリプションモデルにより、不動産市場の需要は今後も拡大する見込み
■要約
いい生活<3796>は、不動産業界向けに賃貸管理、賃貸仲介及び売買仲介などの業務領域をカバーするクラウドベースのソフトウェア(SaaS)を提供する不動産テック企業である。そのSaaSプラットフォームは、サブスクリプションモデルにより業務効率化を促進する多種多様なプロダクトや機能を備えている。同社のサービスは、法改正への迅速な対応や既存のオンプレミス型システムの限界を克服するための効果的な解決策となる。加えて、市町村の合併などによるマスター情報の変更にも自動で対応し、データ連携の効率化を図ることができるため、不動産市場におけるSaaSの需要は今後も拡大すると見込まれている。2025年3月期第2四半期において、管理戸数10万戸超の業界大手であるビレッジハウス・マネジメント(株)へのサービス導入は大きな実績となった。この事例は、大型案件においても同社のSaaSシステムが効果的に機能することを証明し、その能力を市場に示すものである。この成功は今後の大型案件の獲得に弾みを与え、同社のさらなる成長を促進する重要な要因となると見られる。
1. 2025年3月期第2四半期の業績概要
2025年3月期第2四半期の業績は、売上高が前年同期比で8.2%増の1,447百万円、EBITDAは同16.1%減の232百万円、営業損益は27百万円の損失(前年同期は41百万円の利益)、経常損益は30百万円の損失(前年同期は72百万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損益は25百万円の損失(前年同期は45百万円の利益)となった。売上面では、新規顧客獲得と既存顧客からのアップセル及びクロスセルによりサブスクリプション売上が前年同期比4.7%増の1,257百万円を記録、ソリューション売上も同38.5%増の190百万円と大幅に増加した。しかし、人件費の増加、円安の影響で売上原価と販売費及び一般管理費が増加し、為替差損も発生したため、経常利益は前年同期の72百万円から経常損失30百万円に減少した。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績見通しは、売上高で前期比11.1%増の3,119百万円、営業利益で同43.2%減の100百万円、経常利益は同52.4%減の99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同54.1%減の67百万円と期初予想を据え置いている。今期積極的な人的資本への投資を行った結果、第1四半期は営業利益面では損失が発生したものの、第2四半期には増益に転換し、第3四半期以降も業績の持ち直しが見込まれている。
3. 中長期の成長戦略の概要
同社は中期的な目標として、年間売上高約60億円を見込み、顧客法人数5,000社、平均顧客単価月額10万円を目指している。この目標達成に向けて、「顧客基盤の拡大」「収益力の強化」そして「将来への布石」としての3つの戦略を推進している。「顧客基盤の拡大」では、導入支援サービスの拡大と業者間流通サイト(「いい生活Square」)の拡大を通じて新規顧客獲得と既存顧客のリテンションを図る。「収益力の強化」では、マルチプロダクトのワンストップ提供とサービスレベルの向上で顧客生涯価値(LTV)の拡大を目指す。「将来への布石」としては、不動産プラットフォームの進化と高付加価値サービスの提供で競争力を確立していく。これらの戦略により、持続可能な成長と利益の最大化を目指している。
■Key Points
・2025年3月期第2四半期はビレッジハウス・マネジメントの導入実績により、大型案件獲得に弾み
・2025年3月期の売上面では、エンタープライズ市場のSaaSシフト加速、新規及び既存顧客へのアップセル・クロスセルなどにより増収見込み
・2025年3月期の営業利益面では、第2四半期に黒字転換、第3四半期以降は持ち直しの見込み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
《HN》
提供:フィスコ