【市況】【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─ トランプストーム回避の大本命株で勝負!
株式アドバイザー 北浜流一郎
「トランプストーム回避の大本命株で勝負!」
●「トランプ怖い」の東京市場
いよいよ2024年の最終月が始まる。日経平均株価の本年大発会の始値は3万3193円。11月は3万8208円で引けたので、年初に比べて5015円(15.1%)上昇していることになる。まずまずのパフォーマンスと言えるのではないか。ただ、一時は4万2426円の史上最高値を付け、年初からの上げ幅が9233円(上昇率27.8%)にも及んだことを考えると、少々残念ではある。トランプ氏の米大統領選勝利により「トランプ・ラリー」が見込め、11月から株式市場は急激に反発する――こんな期待は裏切られたようだ。
ご承知のように、米国ではトランプ・ラリーに押し上げられてNYダウ、S&P500は史上最高値を更新し、ナスダックもそれに近い水準であるのに、東京市場では不発のままだ。その原因ははっきりしている。「トランプが怖い」――これになる。
トランプ氏の大統領就任は来年1月20日だ。しかし、すでに彼の仕事は始まっているに等しい。11月25日にはトランプ氏は、中国からのほぼすべての輸入品に10%、カナダやメキシコについては25%の追加関税を課す考えを明らかにした。関税引き上げの理由として、中国からメキシコなどを経由し、合成麻薬「フェンタニル」が米国に流入しているのを阻止するためとした。
なかなかの策ではないか。こんな課税のやり方をされては、他国もどんな手で来られるのか読めず、戦々恐々としているのが実際のところだろう。日本政府はもちろん、企業もトランプストーム(嵐)にどう備えればよいのか分からず、動きがとれないと見てよい。
ただ、楽観材料もなくはない。トランプ政権一期目では当初、日本の自動車に対して高率の関税を課す方針だった。しかし、安倍首相が米国産農産物の輸入拡大を約束したことで、関税引き上げを免れた。今回も日本は交渉次第で中国やメキシコ並みの課税は回避できる可能性がある。
しかし、現在の東京市場は、そんな過去の経緯などは完全に目に入らない。ただただ「トランプ怖い」となってしまっており、12月もこのムードを完全に払拭するのは難しいだろう。では、どうする? トランプ次期大統領がターゲットにしづらい企業へ投資しておけばよい。もちろん、無名企業は除いてだ。
●米国で最も事業を行いやすい日本企業=ソニー
そんな企業があるのか。ありますとも。私の考えではソニーグループ <6758> [東証P]となる。なので、今回取り上げる銘柄はソニー一択だ。
なぜ、ソニーか。米国でソニーは長年にわたり事業を展開しており、現地に根づいている日本企業の一つだ。過去のイメージ戦略もあって、同社のことを自国の企業と信じている米国人も結構いるほどだ。もちろん、トランプ次期大統領もソニーのことはよく知っていると見てよい。安倍元首相がトランプ氏と会談した時、防衛問題で議論となり、トランプ氏は日米の安全保障条約には偏りがあると不満をもらした。「日本が攻撃されたら米国が駆けつけるが、米国が攻撃されたら日本はソニーのテレビでそれを見ているだけだろう」と。
トランプ氏は外交の交渉の場で「ソニー」という社名を口にしたのだ。トヨタ自動車 <7203> [東証P]という社名を知っているのとさほど変わりはないようだが、トランプ氏の頭の中に「ソニー」という社名がはっきりと刻み込まれていることは大きい。
そして、もう一つ。ソニーが イメージセンサーで世界首位のメーカーであり、世界市場の50%以上を握っていることだ。同社のイメージセンサーはスマートフォンやデジタルカメラなどに使われるが、主要得意先は米アップル<AAPL>だ。このことが持つ意味は大きい。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)がイメージセンサーを生産する熊本のソニー子会社を訪問するなど、両者は親密な間柄なのだ。アップルにとってソニーのイメージセンサーが不可欠であることと考え合わせると、ソニーは日本企業の中では米国で最も事業を展開しやすい企業という位置づけになる。
さらに付け加えるなら、ソニーは中国での事業展開に積極的とはいえず、生産拠点をタイなどへ移しつつある。これもトランプ氏は気に入るだろう。
以上のような材料を背景としたソニー株の値動き。ハイテク関連株のほとんどが失速中の中で、異例の堅調さを保っているが、2025年もそれが続くのでは……というのが私の現在の見立てになる。なお、私の使っているスマホはソニーのエクスペリアだ。近頃、電車の中で同製品を使っている人を見かけたことがないのが寂しい。
2024年11月29日 記
株探ニュース