【特集】窪田朋一郎氏【3万8000円近辺の攻防、年末相場の見通しは】(1) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
―トランプ次期政権の政策と為替市場の乱高下で思惑錯綜―
週明け2日の東京市場は日経平均株価が朝方は下値を探る展開で3万8000円台を割り込む場面もあったが、その後は切り返し反発して引けた。為替市場の変動が激しく、これも不透明感につながっているが、引き続き3万8000円台でのもみ合い推移であることに変わりはない。年末高に向けたシナリオが足もとやや後退しているようにもみえるが、果たしてここは強気対処か、それとも見送りか。師走相場の展望について松井証券の窪田氏とSBI証券の鈴木氏の2人にそれぞれ意見を聞いた。
●「基本ボックス圏で年内4万円台復帰は微妙」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
株式相場全般は上値の重い展開ながら、下値抵抗力を発揮している。日経平均は年末に向けて基本ボックス圏での推移が続きそうだが、想定される上値はひと頃より水準が切り下がり4万円大台復帰は微妙なところだ。一方、下値は浅く、きょうは一時3万7000円台に沈む場面もあったが、年内の下値は3万7500円どころとみている。
まず、12月17~18日の日程で行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利下げを決める公算が大きい。ただここで、米利下げにいったん打ち止め感が出た場合、FOMCに1日遅れで行われる日銀金融政策決定会合では0.25%の利上げが決定される可能性が高い。植田日銀総裁は利上げの時期についてデータ次第としているが、直近の都区部消費者物価指数(CPI)などをみても、物価は上昇基調にあることが確認され追加引き締めを促す方向にある。また、外国為替市場の影響も考慮されるが、1ドル=150円台を上回る水準での円安推移となれば、利上げを後押しすることになりそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)が12月のFOMCで利下げに動く可能性は高いものの、ここでいったん打ち止め感が出る可能性もある。これは、トランプ次期政権下での関税強化や来年に失効する“トランプ減税”の延長などが予想されるなか、インフレ圧力が再び高まることが予想されるためだ。もっとも、米国株市場ではNYダウをはじめ年内は主要株価指数が最高値圏で頑強な値動きを維持しそうで、東京市場も米株高に連動して下値では押し目買いが活発化することが想定される。
物色対象として半導体関連株が完全に復調するにはまだ時間がかかりそうで、内需株にシフトする動きが強まるのではないか。そのなか、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]のメガバンク3社のほか、第一生命ホールディングス <8750> [東証P]など大手生保株を継続注目。また、IP関連株として東宝 <9602> [東証P]、東映 <9605> [東証P]、東映アニメーション <4816> [東証S]のほか、任天堂 <7974> [東証P]などをマークしたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。
株探ニュース