巴川紙 Research Memo(4):2024年3月期連結業績は1.4%減収、35.1%営業減益と低迷
■巴川コーポレーション<3878>の業績動向
1. 2024年3月期の連結業績概要
2024年3月期の連結業績は売上高33,692百万円(前期比1.4%減)、営業利益1,331百万円(同35.1%減)、経常利益1,643百万円(同23.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益594百万円(同59.1%減)となった。期初計画に対しては、売上高が2,307百万円、営業利益が168百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が5百万円それぞれ未達だった。経常利益は、持分法による投資利益の増加や円安の影響などで143百万円上振れて着地した。修正予想(2024年2月13日公表、減額修正)に対しては売上高、各段階利益とも超過した。
営業利益の増減要因分析では、価格転嫁効果で610百万円、為替影響ほかで430百万円、エネルギー価格低下で160百万円の増益となったが、減収影響570百万円、生産調整影響580百万円(減益)、修繕費増380百万円などがかさみ、大幅減益に。なお営業外で持分法による投資利益や為替差益の拡大により221百万円良化し、経常利益は508百万円の減益に止まった。
2. セグメント別業績
(1) トナー事業
トナー事業は、売上高11,719百万円(期初計画比2,381百万円未達、前期比13.4%減)、営業利益815百万円(同61.0%減)と厳しい結果となった。売上面では円安による海外関連売上高のかさ上げがあったものの、中国経済の不振で中国向けが3,746百万円(同15.0%減)と低迷、モノクロトナーの生産から撤退した北米も659百万円(同31.8%減)と大きく落ち込んだ。また色別売上ではモノクロトナーが4,970百万円(同21.5%減)、カラートナーが6,290百万円(同6.1%減)と、中国中心にモノクロトナーが大きく減少した。在庫調整のための生産量抑制により、生産数量・シェアともに減少を余儀なくされた。
利益面では減収影響に加え、海外競合メーカーとの価格競争の激化、原材料高、さらに在庫調整のための生産量抑制の影響も加わり、大幅減益に。
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、売上高6,518百万円(期初計画比518百万円超過、前期比15.7%増)、営業利益608百万円(前期比226.9%増)となった。事業別では光学フィルムが売上高2,110百万円(同50.2%増)と当初想定していなかったディスプレイ向けフィルム加工への注文が好調に推移し上振れた。半導体実装用テープも3,590百万円(同1.0%増)と車載向けなどが堅調に推移、半導体関連部品も810百万円(同21.3%増)と堅調な伸びに。利益面では光学フィルム向けの増収効果、生産面では塗工機の稼働率アップもあり増益となった。
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は、売上高10,770百万円(期初計画比930百万円未達、前期比0.0%増)、営業損失42百万円(前期は72百万円の損失)となった。売上面では機能性不織布が売上高1,840百万円(期初計画比960百万円未達、前期比6.7%減)と、成長事業として期待していた自動車関連向けが低調で、特に中国経済不振の影響を受けたのが売上未達成の主因に。その他のサブセグメントでは、計画対比で大きな変動とはなっていない。利益面では原材料コスト増があったものの、価格転嫁や抄紙機停機などの各種コストダウンにより、損失幅縮小となった。
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、売上高4,384百万円(期初計画比184百万円超過、前期比10.0%増)、営業利益439百万円(前期比95.6%増)となった。売上面では接触型と非接触型の両方の機能を兼ねたクレジットカードであるコンビカードへの切り替えでカード売上が1,390百万円(同7.7%増)になったほか、通帳類が同24.8%増、その他が宣伝印刷物の増加で同5.5%増に。利益面では増収効果、コンビカードなどMIX良化などに加え在庫処分損がなくなったことで大幅増益に。
(5) 新規開発事業
新規開発事業は、売上高67百万円(前期比25.2%増)、営業損失608百万円(前期は499百万円の損失)となった。主にiCas関連製品の開発と販売を進めている。同事業の売上は、試作、テスト需要に限定され、量産化の後は各事業の売上、利益に含まれるため、先行負担として損失が継続している。
財務状況は2024年3月期も改善、ただし引き続き体質強化が必要
3. 財務状況
同社は、事業転換を図るなかで事業の統廃合や構造改革の進展、子会社化による収益基盤強化などもあり、新製品関連の設備投資を進めつつも、フリーキャッシュ・フローのプラスを維持している。
2024年3月期末には自己資本比率が32.2%と、前期末比0.5ポイント低下した。2023年9月に実施したA種優先株の全部償還に伴い資本剰余金が1,135百万円減少した影響を利益剰余金388百万円増加などで補い、最低限の低下にとどまった。今後は優先配当などの支払い負担を軽減できることから、さらなる財務体質の健全化を図る。
投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産取得による支出が1,605百万円(前期比720百万円増)だった一方、前期比計上した米国トナー工場跡地売却収入580百万円がなくなったことで前期比1,686百万円減少した。フリーキャッシュ・フローはプラスを維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《HN》
提供:フィスコ