【特集】決算シーズン接近で要注目、「上方修正シグナル点灯」好業績6銘柄リスト <株探トップ特集>
25年3月期第1四半期は好決算が相次いだが、先行き懸念が強く慎重な通期予想を据え置く企業が目立った。今回は上期決算発表シーズンを前に、上方修正が期待される有力候補を6社エントリーした。
―1Qロケットスタートで通期計画に対する進捗が高水準な上方修正“有力候補”に照準―
25年3月期の上期決算発表が今月下旬から本格化する。決算発表シーズン本番を前に、業績予想を修正する企業が増え始めており、決算や業績修正に対するマーケットの関心が高まりつつある。折り返し地点にあたる上期決算では、期初に立てた業績予想をより実態を反映した数値に見直す企業が多く、毎年10月下旬から11月中旬は1年間で最も頻繁に業績修正が発表される時期になる。そこで今回は3月期決算企業の中から、第1四半期(4-6月)の実績値が通期計画の何%まで進んだかを示す対通期進捗率が高水準で、業績上方修正が期待できそうな銘柄を探った。
●先行き不透明感が強く業績見通しは保守的
上場企業の業績は増益トレンドが続いている。25年3月期第1四半期(4-6月)業績を振り返ると、前年同期と比較可能な2248社の経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期比で13%増加した。増益は6四半期連続だ。業種別にみると、非製造業では訪日外国人客の増加や経済活動の正常化に伴う人の移動の活発化を背景に利用客が増えた鉄道・バスや小売業、中東情勢の緊迫化でコンテナ船の運賃が上昇した海運などに加え、銀行、保険、証券といった金融業にも利益を大きく伸ばした企業が目立つ。
製造業に目を向けると、石油化学製品の市況改善や需要回復によって化学セクターが復調傾向となったほか、生成AI(人工知能)関連の市場拡大が追い風となった半導体製造装置メーカーの業績回復が顕著だった。一方、資源安によるプラス影響が剥落した電力・ガスが前年同期比で4割を超える減益となったほか、中国の需要低迷による鋼材市況の悪化が響いた鉄鋼メーカーも前年割れを強いられた。
●上期決算で上方修正が相次ぐか
全体としては市場予想を上回る好決算をマークした企業も多く、社数ベースで6割以上が増益を達成した。見通しについては、世界景気の減速懸念や円高リスクの高まりなど、先行きへの警戒感から足もとの業績が好調でも慎重な姿勢を崩さない企業が多くを占めたものの、上期決算発表シーズンで保守的な業績予想を修正する動きが相次ぐとの見方も出ており、ここは業績上振れ余地が大きいとみられる企業を改めて見直しておきたいところだ。
以下では、3月期決算の中小型株を対象に(1)4-6月期経常利益の通期計画に対する進捗率が30%以上、(2)4-6月期に売上高が前年同期比10%以上増収、かつ経常利益が同50%以上増益、といった条件を満たした6社を業績が絶好調な上方修正候補として紹介していく。
【綜研化学 <4972> [東証S]】
綜研化学は粘着剤大手で、スマートフォンなどの液晶パネルのフィルム貼り付け用途で高い商品シェアを有する。足もとでは液晶ディスプレイの生産集約化が進む中国で粘着剤の生産増強を進めている。4-6月期は中国を中心に粘着剤の販売が大幅に伸びたことに加え、円安に伴う収益押し上げ効果なども寄与し、経常利益は18億1500万円(前年同期比2.6倍)と四半期ベースの過去最高を更新した。好調な業績を踏まえ、期初段階で減益予想だった上期の同利益を一転して17期ぶり最高益見通しに大幅上方修正している。通期予想は据え置いたものの、第1四半期実績の通期計画に対する進捗率は45%近くに達しており、業績上振れ期待が膨らむ。
【日本化学工業 <4092> [東証P]】
日本化はクロム、シリカ、リンといった無機化学品に加え、電子材料、有機化学品、農薬など多彩な製品を取り扱う老舗の化学メーカー。4-6月期は売上高103億7900万円(前年同期比16.2%増)、経常利益17億4100万円(同3.9倍)と業績高変化を遂げた。前期に低調だった液晶・半導体、通信、一般工業向けの需要が回復に向かうなか、電子セラミック材料、ホスフィン誘導体、農薬原体、回路材料、高純度電子材料の販売が拡大したうえ、値上げを実施した電池材料の売上高も大きく伸びた。無機化学品ではメッキ向けクロム製品などが増勢だった。経常利益は第1四半期実績だけで、通期計画の29億円に対する進捗率が60%と高水準で上方修正期待は強い。
【新田ゼラチン <4977> [東証S]】
新田ゼラチンは国内シェア約6割を握るゼラチンのトップメーカー。グローバル展開にも積極的で売上高の半分は海外が占める。4-6月期業績は、国内でグミキャンディーやソフトカプセル用ゼラチンの引き合いが強かったほか、健康食品や美容用途のコラーゲンペプチドも大きく伸びた。また、苦戦が続く北米事業のスリム化に伴う米国工場の生産停止によって収益性も改善し、売上高、経常利益ともに四半期ベースの過去最高を記録した。経常利益は13億8000万円と第1四半期実績だけで通期計画(30億円)の半分近くを稼ぎ出しており、業績上振れの公算は大きい。予想PER10倍前後、PBR0.8倍台と割安感が強く、上値余地は十分にありそうだ。
【フォスター電機 <6794> [東証P]】
フォスターは音響機器の専業メーカー。スマートフォン市場の成長鈍化やコロナ禍の影響を受けて22年3月期に74億円超の経常赤字に陥ったが、その後は製品の価格転嫁やコスト削減などを通じて急回復に転じている。25年3月期の経常利益は50億円(前期比16.1%増)に伸びる見通しだ。4-6月期は車載用スピーカーで前期に発生した一部顧客の在庫調整が解消したほか、モバイルオーディオでは好採算品の販売が増加し、経常利益は17億5700万円(前年同期比3.5倍)と対通期計画進捗率が30%を超える好決算を示した。ここ2年連続で上期決算発表と同時に通期計画を大幅増額した経緯もあり、上方修正候補としてマークしたい。11月中旬の次期中期経営計画で示す予定のPBR改善策にも注目が集まる。
【フォーラムエンジニアリング <7088> [東証P]】
フォーラムEはAIを活用した製造業向けエンジニア人材のマッチングシステム「コグナビ」を運営している。4-6月期は主力の機械・電気系エンジニア派遣サービス「コグナビ派遣」への需要がコロナ禍以前の力強さを取り戻すなか、稼働者数、派遣単価がともに上昇したうえ、理工系学生に特化した就職支援サービス「コグナビ新卒」の成約数も増えた。また、人件費など経費の見直しを進めたことも奏功し、経常利益は11億6000万円(前年同期比75.9%増)に拡大して着地。通期計画に対する進捗率は33.6%に達する。株主還元に積極的で今期配当は42円50銭(前期比5円増)とし、年間利回りが4%を大きく超えているのも注目ポイントだ。
【松屋アールアンドディ <7317> [東証G]】
松屋R&Dは裁断から縫製までの全工程を自動化する縫製自動機メーカー。世界シェア5割の血圧計センサー用腕帯をはじめ、カーシートやエアバッグなどの受託生産も展開する。昨年9月にはベトナムの生産拠点を集約した新工場が完成し、生産能力の増強と工程内の自動化によるコスト削減につながっている。4-6月期はカーシートを中心に生産が好調だったほか、海外顧客からレーザー裁断機などの大口受注を獲得し、経常利益は4億8000万円(前年同期比2.3倍)と四半期ベースの最高益更新を果たした。同社の業績見通しは保守的な傾向が強く、前期は経常利益を期中に4回も上方修正し、期初予想を8割以上も上回って着地している。
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