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【特集】桂畑誠治氏【日経平均続急伸、見えてきた4万円台復帰シナリオ】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―雇用統計発表後の米株高と円安追い風に3万9000円台回復―

 7日の東京株式市場では日経平均株価が大幅高で3日続伸となった。前週末に発表された9月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数などマーケットの事前予想を大きく上回る内容で米経済の強さが確認された。ソフトランディング期待を背景に強気優勢に傾いており、外国為替市場ではリスクオンの流れを反映し、一時1ドル=149円台まで一段と円安が進行、これも輸出セクター中心にポジティブ視された。3万9000円台を回復したことで4万円大台ラインを突破できるか、マーケットの期待も高まっている。ここからの相場展望を経済やマーケットの先読みに定評のある市場関係者2人に語ってもらった。

●「米大統領選後をにらみ相場は強含みで推移」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 週明けの東京市場はリスク選好の地合いで日経平均は大幅な上昇をみせたが、基本的に全体相場は目先反動があったとしても、トレンドは上値指向が維持される公算が大きい。特に11月の米大統領選を通過した後は、目先のビッグイベント通過で不透明感が払拭され、日米ともに上げ足を強める展開が見込まれる。

 注目された9月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びが25万4000人と事前コンセンサスの15万人程度から大きく上振れたが、それにもまして失業率が4.1%と前月の4.2%から改善傾向を強めたことが安心感をもたらした。賃金も予想を上回るなど文句のつけようのない内容で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が警戒していた労働市場の悪化が杞憂となった形だ。これが前週末の米株高につながった。

 一方でインフレ圧力は低下していることから、11月と12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でそれぞれ0.25%の利下げが行われるとの見方が現時点では強い。米経済の強さが確認されるなか、FRBによる利下げも期待できる状況下にあり、株式市場では強気優勢の地合いが演出されている。

 加えて東京市場では為替の円安進行が、企業業績に押し上げ効果をもたらすものとして追い風材料となっている。石破新首相が「現在は追加利上げの環境にあるとは考えていない」という発言を行い、これがドル買い・円売りの動きを呼んだが、今回の米雇用統計発表を受け米長期金利が急上昇したことで、日米金利差拡大を背景にドルを買い戻す動きが一段と活発化している。石破首相は総裁選前と後で発言が180度変わることが相次ぎ、悪い意味で話題となった。しかし、株式市場の反応をみて前言を翻すあたり、マーケットフレンドリーな姿勢を意識してつくっているフシもある。これについては見方も分かれるが、投資家サイドとしては素直にポジティブ材料として意識してよさそうだ。

 日経平均の向こう1ヵ月のレンジとしては上値が7月10日につけた4万1800円どころ、下値は9月19日の3万7200円近辺を想定している。物色対象としては、まず訪日外国人旅行者の消費額大幅拡大が続いているインバウンド関連で、百貨店や外食セクターなどを引き続きマークしたい。また、半導体素材関連電子部品株などハイテクセクターも、押し目買いスタンスで対処して報われる銘柄は少なくないとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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