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【特集】笹木和弘氏【日経平均続急伸、見えてきた4万円台復帰シナリオ】(2) <相場観特集>

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

―雇用統計発表後の米株高と円安追い風に3万9000円台回復―

 7日の東京株式市場では日経平均株価が大幅高で3日続伸となった。前週末に発表された9月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数などマーケットの事前予想を大きく上回る内容で米経済の強さが確認された。ソフトランディング期待を背景に強気優勢に傾いており、外国為替市場ではリスクオンの流れを反映し、一時1ドル=149円台まで一段と円安が進行、これも輸出セクター中心にポジティブ視された。3万9000円台を回復したことで4万円大台ラインを突破できるか、マーケットの期待も高まっている。ここからの相場展望を経済やマーケットの先読みに定評のある市場関係者2人に語ってもらった。

●「当面変動幅の大きい展開も、米大統領選は議会との組み合わせ重要」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 日本では10月27日に衆院選、米国では11月5日に大統領選と日米で大きな政治イベントがある。衆院選に関しては、自公政権が過半数割れとなるような事態は想定していない。「裏金議員」を非公認とするといった基準を厳しくする姿勢はプラス要因に働くと思われ、少なくとも選挙期間中は底堅い展開が期待できるとみている。

 米大統領選に関しては、民主党のハリス氏、共和党のトランプ氏のどちらが勝っても、議会の多数党が異なる「ねじれ」が生じれば、極端な政策はとりにくくなる。意外に米大統領選の相場への影響は小さかったということも起こり得るとみている。むしろ、足もとでNYダウは最高値を切り上げているが、上がれば上がるほど足もとで下振れリスクは高まると思う。米9月雇用統計では、政府職員の増加が雇用の上振れにつながっており、政府の財政赤字拡大に頼った景気回復の側面もありそうだ。また、イスラエルを中心とした中東情勢へのリスクは高まっている。恐怖指数と呼ばれる「VIX指数」も警戒ラインである20に近づいてきている。

 こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価の予想レンジは3万6000~4万500円前後を見込む。当面はボラティリティ(変動)の大きな相場を見込んでいる。

 個別銘柄では、ヘルスケア関連のエムスリー <2413> [東証P]に期待している。医療業界の長時間労働の是正と介護人材不足の解消に向けた医療デジタルトランスフォーメーション(DX)需要拡大が追い風となりそうだ。また、「地方創生」に絡んでは主力の建機レンタル事業が北海道などの地方で高シェアを誇るカナモト <9678> [東証P]、地方自治体の情報化に絡む需要が見込めるアイネス <9742> [東証P]にも注目している。また、アニメ制作のスタジオジブリ(東京都小金井市)を傘下に擁しIP(知的財産)関連の側面を持つ日本テレビホールディングス <9404> [東証P]も割安感が強いと思う。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。

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