窪田朋一郎氏【後場波乱展開、戻り一巡後の相場を展望する】(1) <相場観特集>
―暴落からの3分の2戻し後に値を崩す、揺らぐ先高期待―
19日の東京市場は主力株中心に利益確定売りに押された。前週末まで日経平均株価は5連騰と上げ足を強め、この間に3200円あまりも水準を切り上げたが、その流れが一巡した。今月5日に4451円という歴代1位の下げ幅で3万1000円台半ばまで売り込まれたものの、そこからのリバウンドは前週末時点で6600円強に達し、俗にいう3分の2戻しを達成していた。だが、3万8000円を割り込み再び強弱観が対立している。ここからの相場展望について、経験豊富な市場関係者2人に意見を求めた。
●「日米政局の不透明感で目先上値の重い展開」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場は前週末まで一気の戻り相場をみせたが、日経平均3万8000円台は4月下旬から6月下旬にかけて長期間にわたりもみ合ったゾーンでもあり、滞留出来高が厚く、そう簡単にはここを上抜けることはできないと考えている。今月上旬に繰り広げられたハイボラティリティな相場は一巡し、売買代金が盛り上がりを欠くなかで、しばらくはレンジ圏内での上下動が続くのではないか。向こう1ヵ月のタームでみた日経平均のレンジは上値が3万9000円前後、下値は3万6000円前後とみている。
直近の急速な戻り相場の背景には2つのポイントがある。一つは株価の暴落を受けて日銀のタカ派姿勢が修正されていること。そしてもう一つは、米リセッション懸念が足もと後退していることだ。直近発表された米小売売上高などの経済指標が相次いで事前予想よりも良い内容で、米経済のソフトランディング期待が再び優勢となっている。この2つに付随する形で、為替は再び円安方向に振れており、全体相場のリバウンドを後押しした形だ。
ただ、日米とも政局などに不透明要因が多く、現時点でなかなか先が見通しにくい面もある。米国では11月の大統領選でトランプ前大統領とハリス副大統領のどちらが勝利するかで政策路線が変わるため、物色されるセクターなどが見極めづらい。トランプ氏が勝利すれば財政拡大政策を打ち出すことで株式市場には追い風となるが、一方で関税引き上げなどに伴うインフレへの警戒感が拭えない。一方、ハリス氏が勝利した場合はバイデン政権からの政策の継続性に安心感が伴うものの、食料品の価格規制などを主張していることから、企業のダイナミズムを削ぐ可能性がある。国内でも9月に行われる自民党総裁選で、立候補に意欲を示す議員が10人を超えている状況下、政策が見えない局面にある。
そうしたなか、物色対象としてマークしておきたいのは、まず、ここ市況が再び上昇基調を強めている金(ゴールド)関連。住友金属鉱山 <5713> [東証P]のほか、純金上場信託(現物国内保管型) <1540> [東証E]やNEXT NOTES 金先物 ダブル・ブル ETN <2036> [東証EN]などの値動きに注目したい。更に、国内外でデータセンター増設の動きが加速しているが、AIが機械学習を行う際にサーバー間でデータ通信を行う必要があり、その関連で通信ケーブルに特需が発生している。引き続きフジクラ <5803> [東証P]、古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]などの電線大手に目を配っておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。
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