【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─ショック安の本質と当面の投資戦術!
経済評論家 杉村富生
「ショック安の本質と当面の投資戦術!」
●バンジージャンプ並みの暴落、急騰劇!
夏相場は想定通りの荒れ模様の展開となっている。ボラティリティが極端に高い。日経平均株価は8月5日に、4451円安と史上最大の下落幅、6日には3217円高と史上最大の上昇幅を記録した。主因は日銀の突然の利上げだが、円キャリートレードの巻き戻し、システマティック・トレーディング戦略が株安を加速させたのは確かだろう。
最近のヘッジファンド、CTA(商品投資顧問)などの売買には人間の感覚が入り込む余地がない。ルールに基づいて機械的に取引が行われる。リスクが一定の水準を越えると、強制的に売りを出す仕組みだ。そこには“値頃”などの意識は皆無だ。ひたすら、叩き売る。恐ろしい世界である。
円キャリートレード(ピーク時の残高は5000億ドル→約73兆円)、米系ヘッジファンドの借り入れ額は2.3兆ドル(約338兆円)あった、と推定されている。 彼らはこれに3~4倍のレバレッジをかけている、という。当然、流れが変われば円高、株安になる。日経平均株価が短期間に、1万1270円の暴落を演じたのは理解できる。
一方通行マーケットである。押し目買いの概念は全くない。しかし、個人投資家は長期逆張りが可能だ。8月5日にはストップ安銘柄が801もあった。こんなところは買いだろう。株式には価値がある。なにしろ、有価証券という。さて、 問題はこれからだ。日経平均株価は5日の3万1156円(瞬間安値)を安値に、順調な値戻しをみせている。
8月16日には3万8143円まで上昇した。5日安値からの上昇幅は6987円、上昇率は22.4%となる。機械的に売り込んだだけに、戻りは速い。しかし、バンジージャンプと同様に、一度は急速に上昇する。だが、元の発射台(水準)に回復することはない。ブラン、ブランと揺れる状態(2番底形成)が続くと思う。
●暴落後は3~5カ月の値固めが必要!
すなわち、セリングクライマックスは通過したものの、7月11日のザラバ高値(4万2426円)を奪回するには日柄が必要だろう。ちなみに、スターリン暴落時は3カ月、リーマン・ショック時は5カ月、ブラックマンデー時は3カ月、東日本大震災時は3カ月の底練りがあった。約3~5カ月だ。まさに、“麓の温泉”である。
だからこそ、10月頃までは個別物色、各論(銘柄)勝負の投資戦術が有効と主張している。日銀の年内の再利上げは消えた(23日の衆院財務金融委員会での植田日銀総裁の証言が焦点)ようだが、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月、11月、12月と連続利下げに進むだろう。足もとは円安だが、日米の金融政策面では円高圧力が強まる。
やはり、為替の動向では8月22日~24日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演がポイントになろう。7月のCPI(消費者物価指数)上昇率は前年比2.9%上昇(前月は3.0%上昇)と、2021年3月以来の3%割れとなった。利下げ開始の条件は整いつつある。
さて、株価暴落の局面ではファンダメンタルズ(景気、企業業績など)に変化がないか、金融システムが揺らいでいないか、を確認すること。これが重要である。今回は前述したように、特殊な取引(売買手法)の結果だ。それに、中期上昇トレンドは変化していない。 9月には日本の新首相、11月にはアメリカの新大統領が誕生する。
物色面はどうか。2024年9月期に15円配当、2025年9月期に30円配当が予想されるタスキホールディングス <166A> [東証G] 、PERが5倍割れと出遅れが著しいnms ホールディングス <2162> [東証S]、貿易業務(円高メリット)を手掛ける長野(飯田市)の名門企業の綿半ホールディングス <3199> [東証P]は狙える。
さらに、深押しの新日本科学 <2395> [東証P]、日本パレットプール <4690> [東証S]、猛暑関連のドウシシャ <7483> [東証P]、ラウンドワン <4680> [東証P]、ペットブームの潮流に乗るアニコム ホールディングス <8715> [東証P]、値動き抜群のビリングシステム <3623> [東証G]などに妙味があろう。
2024年8月16日 記
株探ニュース