【特集】外資系企業の誘致本格化、「ホテル関連株」が株高局面へギアチェンジ <株探トップ特集>
訪日外客数の増加基調が続くなか、国立公園での外資系ホテル誘致構想が動き始めている。内装・ホテル設備などの関連企業に中期的な業績浮揚力が高まりつつある状況だ。
―国立公園の民間活用の切り札として注目度急上昇、内装・設備関連などに飛躍機運―
岸田文雄首相は7月19日、観光立国推進閣僚会議において、民間活用により「十和田八幡平」と「中部山岳」、「大山隠岐」、「やんばる」の4ヵ所の国立公園で進める「滞在体験の魅力向上事業」で得られた知見をもとに、全ての国立公園において世界水準のナショナルパーク化の実現に向けた取り組みの実施を求めた。これを契機に今後、外資系の高級リゾートホテルの誘致活動が本格化する見通しで、ホテルに関連した事業を展開する銘柄群の中期的な業績拡大機運が高まりつつある。
●世界遺産など観光資源で経済成長へ
上述の4ヵ所の国立公園を含め、日本国内には北海道から九州・沖縄まで35の国立公園が存在する。このうち知床や日光、小笠原、富士箱根伊豆、吉野熊野、瀬戸内海、屋久島は世界遺産とされた地域に立地する。支笏洞爺や伊勢志摩はかつて主要国首脳会議(サミット)が開かれた地域でもあり、世界にもその名が知られている。観光資源である国立公園を活用して日本の経済成長につなげるといった発想そのもの自体は、環境保全に向けた取り組みが不可欠なのは言うまでもないことだが、合理的なものと言えるだろう。
日本政府観光局によると、今年1~6月の訪日外客数は累計で1777万7200人となり、上半期としては過去最高を記録した2019年1-6月を100万人以上、上回った。円安進行が今年のインバウンドの拡大に寄与したとの見方は多いものの、過去を振り返ると一時的に1ドル=100円を下回る水準まで円高が進んだ16年でも訪日外客数は大きく伸長した。年間ベースでドル円相場が下落した17年から19年にかけても増加基調を続けている。
グローバルでみて観光市場は拡大の一途をたどるとみられるなかで、短期的な円高進行リスクに直面したとしても、国として訪日観光客の受け入れ態勢を強化する取り組みが止まることはおそらくはないだろう。特に外資系リゾートホテルに関して言えば、国立公園のみならず、統合型リゾート(IR)関連でも誘致の動きが期待されており、ホテル関連の事業を手掛ける国内企業には、中期的な業績拡大のドライバーとなる公算が大きい。
●ディスプレー・内装関連に恩恵か
実際に外資系の高級リゾートホテルの建設計画が相次いだ場合、事業面で好影響を受けると期待されるのは、まずは内装 などのディスプレー関連だろう。具体的には丹青社 <9743> [東証P]や乃村工藝社 <9716> [東証P]、スペース <9622> [東証P]などが該当する。インバウンド需要の拡大を背景に各社の受注は好調に推移している。3社とも今期は増益予想を示しているが、コロナ禍前の利益水準には至っておらず、業績回復の途上段階にあると言える。
フランスベッドホールディングス <7840> [東証P]は福祉用具レンタル関連を主軸としつつ、インテリア健康事業ではホテル向けビジネスも展開。同事業の24年3月期は減収減益となったが、ホテル向けは2ケタ増収となった。中期経営計画でもホテル・旅館向けのインテリア商材レンタルの売り上げ拡大を図る方針を掲げている。
輸入建材を手掛けるアドヴァングループ <7463> [東証S]は自社のホームページにハイアットリージェンシー横浜や長崎マリオットホテルなどでの施工事例を示している。今期の経常・最終利益予想については為替相場の変動による影響を踏まえ非開示とするが、本業のもうけを示す営業利益は前期比4.1%増の41億円を見込む。配当利回りが4%台と高水準にあるのも注目点だ。
高級リゾートホテルとなれば、プールやスパ施設の併設も予想される。殺菌・消毒剤や塩素自動供給システムの四国化成ホールディングス <4099> [東証P]や、プール本体やろ過装置を取り扱う日本フイルコン <5942> [東証S]、ステンレス塗装プールを供給する高橋カーテンウォール工業 <1994> [東証S]が関連銘柄となる。全国各地の温浴施設にボイラーを供給する三浦工業 <6005> [東証P]のほか、子会社を通じホテルや旅館を含め数々のボイラー納入実績を持つタクマ <6013> [東証P]も、商機拡大が期待される。
●人材・広告サービスや食材卸なども要マーク
ダイブ <151A> [東証G]は3月27日にグロース市場に新規上場したニューフェース。観光施設に特化したリゾートバイトの紹介サービスを展開する。25年6月期の売上高は前期比18.1%増の146億円、最終利益は同61.8%増の5億1900万円を計画。観光地での人手不足という課題の解決が求められるなか、人材関連部門での取引先の観光施設は4600施設以上に上り、競争優位性の発揮が期待される。
CS-C <9258> [東証G]は今年2月、ホテルなどに向けてインフルエンサーのキャスティングや投稿内容のすり合わせなどをサポートするSNSマーケティング支援サービスを本格的に始めると発表した。24年9月期は成長に向けた人件費や採用コストがかさみ減益計画としているが、トップラインは2ケタの伸びが見込まれており、持続的な成長と中期的な利益拡大を実現できるか注視される。
トーホー <8142> [東証P]の25年1月期の最終利益は、前期比11.0%増の40億円と過去最高益を更新する計画。食品スーパー事業の撤退による影響を受けながらも、業務用食品卸売事業では、レストランや外食産業とともにホテル向けの販売拡大が続いており、人件費や物流コストの増加を補って同事業は着実に利益を積み上げている。商いは薄いが、ジーエフシー <7559> [東証S]は高級加工食材を旅館やホテルに供給。カキ料理のレストランを展開するゼネラル・オイスター <3224> [東証G]も、外資系ホテル誘致の流れは卸売事業にプラス効果をもたらす余地がある。フジマック <5965> [東証S]はホテル・旅館の厨房設備向けに、自律移動搬送ワゴンを含め数多くの商品群を抱えている。
クリーニングの白洋舎 <9731> [東証S]はコロナ禍で味わった苦境から業績はV字回復を遂げ、23年12月期の経常利益は過去最高益を更新した。構造改革が奏功したなかで、リネンサプライ事業では新規のホテル開設に伴って取引量が増加する可能性があるだろう。同業のきょくとう <2300> [東証S]などもホテル関連で事業成長を遂げられるか注視される。このほか、鋳物ホーロー浴槽の大和重工 <5610> [東証S]は、国立公園での高級ホテル誘致の政府方針を受けて動意づいた銘柄の一つであり、関連銘柄に位置付けられる。
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