iーplug Research Memo(8):「PaceBox」はサービス終了、その他の新規事業は継続へ
■i-plug<4177>の業績動向
3. 業績未達要因と対応
売上高未達の要因は、i-plug単体(予算達成率96.3%)とpacebox(同6.1%)にある。i-plug単体では受注の前倒しにより例年と違った営業や販促が必要となったが、すでに足元で営業や販促のバランスを最適化する対策をとっているため、問題はほとんどないと言える。一方paceboxは、サービス終了決定によるコスト抑制が営業利益の過達要因の1つになったが、事業開発のプロセスを間違えたという印象である。クライアントのニーズが強かったこともあって急速立ち上げを狙って投資を先行させ、ピンポイントでのマッチングを目指したが、求職と採用の細分化が不足してピンポイントのマッチングとならず、それを補足するためサービス開始後に追加コストをかけたものの求職者側の活動量が強まらなかったと考えられる。中途採用市場の競争環境が激化するなか、試行錯誤しているうちに人材や販促などのコストの回収が一層厳しくなっていったため、2024年2月に「PaceBox」の販促を抑制し、6月をもってサービスを中止する決断を下した。これにより債権放棄や株式評価損、余剰人員などは発生したが、親子会社間での相殺や親会社による吸収でカバーし、連結上の追加の損失は関係会社株式評価損として9百万円を特別損失に計上する程度となった。ただし、中途採用市場は引き続き成長が見込まれ、第2の柱としての可能性が依然残るため、ゼロベースで再チャレンジする考えである。
親会社株主に帰属する当期純利益の未達要因になった特別損失は、主としてplugin lab事業とキャリア大学事業、子会社マキシマイズの減損である。plugin lab事業とキャリア大学事業は、リアルな場で企業と学生の接点を提供するビジネスモデルを狙ったが、コロナ後の学生の戻りが想定を下回った。また同社に運営のノウハウがなく集客に苦戦し、「OfferBox」とのシナジーも発揮できなかった。現在は、専任担当を設置して社内体制を整え、店舗数削減や「OfferBox」との連携強化などによる収益改善を図りつつリスタートするところである。損失はのれん及び固定資産の減損損失として87百万円を特別損失に計上した。マキシマイズは、人材採用など投資が想定を上回って推移したことで、営業損失を計上した。このため、のれんの減損損失及び関係会社株式評価損として113百万円を特別損失に計上した。今後は「OfferBox」利用学生からの登録促進を行い、改めて食品業界に特化したイベントを強化していく方針である。
シナリオから大きくずれた「PaceBox」の撤退は妥当な策だと考えられる。しかし、新規事業に関しては、企画やデューデリ、PMI※に甘さはあったものの、始めたばかりの事業のためある程度負担や時間がかかることは想定できるうえ、シナリオから大きく外れたわけでもない。2年も経たないうちに減損するというのは保守的に過ぎると考えられるが、今後の事業展開がしやすくなったとも言えるだろう。
※PMI(Post Merger Integration):M&Aに期待する効果を確実に得るための統合プロセスとマネジメント。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SO》
提供:フィスコ