【市況】【植木靖男の相場展望】 ─二番天井に向けての反発を待つ
株式評論家 植木靖男
「二番天井に向けての反発を待つ」
●いまはバブル相場が本格化する前の下げ
東京株式市場は深刻な下げ相場に突入している。日経平均株価は7月11日の4万2426円をピークに下げに転じ、17日から26日まで8日連続で下落し、3万8000円の大台を割り込んでしまった。その途次、18日に窓を空けて971円安を演じたことにより、目先の天井形成が確定した。
26日には3万7611円で下げ止まったかにみえたが、その後の3日間の反発も実らず、8月1日には975円安、さらに2日には2216円安と株価はまさに崩落の様相を呈している。
この背景には、急激な円高の進行が指摘されているが、それが主因ではない。では、なにか? 日銀の国債購入減額計画にあるとみてよい。つまり、過剰流動性の回収である。これをもって世界の株式市場が、もちろん米国株も含めて急落したのだ。
では、当面どう展開するのか。7月29日からの3日間の反発で、しこり玉は一部解消されたかにみえる。だとすると一反発、つまり二番天井に向けての上昇は近いようにみえる。どこまで戻すかは定かではないが、天井を確認した水準、つまり4万円は無理にしても3万9000円処まで戻れば御の字だろう。いずれにしても反発は近い。突っ込み買いのチャンスとみられる。
ところで、こうした大幅な下げをみると、前回の平成バブルの際のブラックマンデーが脳裏をよぎる。当時と今回では背景が違うが、上昇過程で発生する大幅な下げという点では同じである。当時は3カ月ほどで回復基調に戻ったが、1987年秋のブラックマンデー後、88年、89年と本格的なバブル相場となった。仮に同じパターンとすれば、9~10月頃から回復基調に戻るとみてよさそうだ。
相場は上がれば下がり、下がれば上がるのが常だ。バブル相場が本格スタートする前の下げが、いまと思えばよいのだ。
中大勢的には、現在の米国は逆業績相場の入り口に差し掛かったのではないか。今後、利下げが続き、やがて金融相場に移行する。一方、わが国はどうか。これまでの金融相場から、ようやく金利のある世の中に入り、岸田首相の言う「新しい成長型経済への移行」通り、業績相場入りとなる。日米の方向性は大きく異なるが、その際の東京市場の主役となるのは誰か。平成バブルのときは機関投資家など法人投資家であった。
だが、今回はおそらく個人投資家が主役となろう。新NISA(少額投資非課税制度)を通じて、この半年で7.5兆円が市場に流入していると指摘されている。だが、今日の家計の預貯金は優に1000兆円を超えている。この資金がインフレのかけ声とともに金融市場にシフトしてくるとすれば、想像のつかない株価上昇となろう。平成バブルのとき、野村ホールディングス <8604> [東証P]は6000円近くまで上昇したことは記憶に新しい。いまは1000円にも届いていない。
●ハイテク株の突っ込み買いを狙う局面
目先的な下げから二番天井を目指すとすれば、個別にどのような銘柄が物色されるのか? 日経平均株価4万2000円を形成したのは、半導体関連を中核とするハイテク株だ。だとすると、同じように二番天井に向けての牽引役はハイテク株でなければならないはずだ。
そして、やがてはインフレ相場の名の下に新たな主役が登場するはずである。平成バブルの時は新日本製鉄(現・日本製鉄 <5401> [東証P])が1500円処から一気に5ケタ寸前まで駆け抜けている。
だが、当面はハイテク株の突っ込み買いを狙うところとみてよさそうだ。二番天井を馬鹿にしてはいけない。ただし、上値に限界があることも当然である。投資家諸氏の経験がものを言う局面入りとなろう。奮闘を祈りたい。
2024年8月2日 記
株探ニュース