三井松島HD Research Memo(6):2024年3月期は石炭価格急騰の反動が影響
■業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
三井松島ホールディングス<1518>の2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.2%減の77,472百万円、営業利益が同29.7%減の25,170百万円、経常利益が同27.6%減の26,004百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同34.2%減の15,117百万円となった。石炭関連事業に代わる新たな収益基盤として同社が注力している生活関連事業は増収増益と好調だったものの、石炭価格の下落と販売数量の減少によりエネルギー事業が減収減益となったことが業績に影響した。石炭価格(一般炭)については、ロシアのウクライナ侵攻という特殊要因による世界的なエネルギー受給の逼迫を受け、2023年3月期に前期比227.3米ドル増の344.0米ドルと一時的に急伸した。2024年3月期も250.6米ドルと過去の推移からすると依然として高い水準だったものの、前期の反動を受けた格好だ。実際、石炭生産分野の販売数量が前期比7.3%減だったのに対して、同分野の売上高は同28.5%減少した。このことから、石炭価格下落の影響を大きく受けたことがうかがえる。また、2024年3月の通期業績予想に関して同社は、2023年11月と2024年2月に上方修正を行った。これは、石炭販売数量の増加と価格の上昇などが主な理由である。石炭価格急騰の効果剥落により前期比で減収減益となったものの、依然として業績に与える影響は大きいと言える。また、利益の絶対額としても依然として大きい水準であった。
生活関連事業に関しては、新たな収益基盤の確立と拡充が順調な進捗を見せた。M&Aによってプラスワンテクノ(2023年8月)、ジャパン・チェーン・ホールディングス(同年12月)、Saunders & Associates(2024年1月)を新たに連結子会社化した。また、既存事業の業績に関してもMOS、日本カタン、明光商会を牽引役に、総じて順調に推移した。
セグメント別の業績は以下のとおり。
(1) 生活関連事業
売上高は前期比39.5%増の41,168百万円、セグメント利益は同32.4%増の4,923百万円となった。明光商会、MOS、日本カタンの業績が好調に推移したほか、日本ストローの業績も堅調な推移を見せた。また、前期に買収したMOSが通年で業績寄与したことも同セグメントの業績を押し上げた。加えて、ジャパン・チェーン・ホールディングスを連結子会社化したことに伴い、第4四半期より損益を連結ベースの業績に取り込んだことも寄与した。
a) 日本ストロー
原材料価格の高騰という利益圧迫要因があったものの、高付加価値化による単価アップを着実に遂行し、利益を確保した。加えて、付加価値の高い環境対応素材ストローの拡販に注力するなかで、技術優位性を高めた。
b) 花菱
新規顧客開拓に向けたHPのリニューアルやSEO対策をはじめ、各種施策を着実に実行したものの、市場の縮小や競争の激化など、外部環境変化の影響を受けた。そのなかでも、利益は確保した。
c) 明光商会
原材料高騰という外部環境のマイナス要因があったものの、値上げを着実に実施したことによりコスト増加分を吸収した。加えて、収益性の高い高単価製品の販売に注力する戦略も順調な進捗を見せ、想定を上回る業績を残した。
d) ケイエムテイ
原材料高の影響に加えて、生産委託先が米国であることから為替の影響を受けたものの、着実に値上げを実施し、コスト上昇分をしっかりと吸収した。また、中国、香港向けの輸出も開始した。現地でのニーズは旺盛なものの、米中摩擦などをはじめとする外部環境の影響を受け、想定どおりの進捗とはならなかった。輸出に関しては外部環境要因が制約となったものの、その分、国内での事業活動によって利益を確保した。
e) システックキョーワ
戸建住宅着工戸数の減少など厳しい事業環境が継続するなか、業績も影響を受けた。そのなかでも、既存顧客の維持、新規顧客の獲得によるシェアアップなどの営業戦略を着実に実行し利益を確保した。
f) MOS
キャッシュレス決済の浸透、インバウンドの回復に加えて、カツマタから加工販売事業を譲受したことなどを受けて業績は好調だった。
g) CST
軟調な半導体市況の影響を受けた。低調な外部環境のなか、トップラインの拡大は厳しかったものの、採算性の低い製品の生産から撤退したことにより収益性を高めた。
h) 三生電子
半導体市況低迷の影響を受けたものの利益は確保した。期初の時点から低迷する半導体市況の影響を受けることを見込んでおり、その意味では想定どおりの進捗となった。
i) 日本カタン
売上、利益ともに安定して推移した。送電線、金具の交換需要が安定して発生したことに加えて、顧客からの発注が平準化されていることを受けて、収益性も高まった。
なお、プラスワンテクノとジャパン・チェーン・ホールディングスに関しては、両社とも下半期から損益を取り込んでいるが、本格的な業績貢献は2025年3月期からを見込む。
(2) エネルギー事業
売上高は前期比28.5%減の35,094百万円、セグメント利益は同34.1%減の22,343百万円となった。石炭価格の下落と販売数量の減少を受け、石炭生産分野、石炭販売分野ともに減収減益だった。
(3) その他の事業
不動産事業及び港湾事業等を含んでおり、売上高は前期比13.6%減の1,349百万円、セグメント利益は同19.0%増の176百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《HH》
提供:フィスコ