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【特集】ウエルシアにC&Fロジ、親子上場の解消以外で勝った技
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 マック・チェリーさんの場合-第3回
■(マック・チェリーさん・30代・男性)のプロフィール:
約20年間で100万円を、5億4000万円に増やした兼業投資家。資産拡大の原動力が、M&A(合併・買収)やTOB(株式公開買い付け)に着目したイベント・カタリスト投資。株式投資を始めたのは中学生のとき。同級生の間で大手証券会社提供の仮想株式投資ゲームが流行、また当時、村上ファンドが世間を賑わしたこともきっかけになった。親から援助を受けて、証券口座を開くと、不祥事を起こした三菱自動車に投資し、リターンを生んだ。新卒入社したメガバンクでは、大企業の資本戦略を支援する業務などに従事し、現在は家業の不動産会社の経営に関わる。趣味はゴルフ、サウナ、食べ歩き。
第1回記事「狙うは親子上場、『割安・上場子会社』に先回り投資で5億円超え」を読む
第2回記事「540倍化のすご腕さんが、親子上場の解消で今期待の銘柄とは!」を読む
将来のTOB(株式公開買い付け)を見越して、"割安・上場子会社"に先回り投資して資産を膨らましてきたマック・チェリーさん(ハンドルネーム)には、ほかにも株主構成に注目した勝ち技がある。
1つは、需給狙いで、もう1つはテーマ狙いになる。
需給狙いでは"上場子会社"の経営統合や、TOB(株式公開買い付け)で買われる立場になる企業を狙ったロング戦略と、親会社による子会社株式の売却を狙ったショート戦略がある。
テーマ狙いでは、制度改正や新技術開発で、脚光を浴びそうなオーナー系企業に注目する。
3回目の記事では、これらのうちから需給狙いの成功例と、勝つためのポイントについて見ていこう。
■親子上場の解消以外で株主構成に注目した勝ち技
ウエルシア、ツルハの経営統合イベントを想定して先回り買い
上場子会社の経営統合を想定した先回り買いで、最近成功した銘柄の1つが、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングス<3141>だ。統合候補は、同業のツルハホールディングス<3391>になり、両社ともイオン<8267>が大株主となっている企業だ。
同社の統合を巡っては、2月23日(金・祝日)に観測報道が出ると、26日(月)のウエルシア株の終値は前日比+17%の3002円に急騰した。その後、両社は28日(水)に大株主のイオンを含めて資本業務提携の契約を締結したことを発表した。
マック・チェリーさんは、ウエルシア株を観測報道が出る22日(木)までに2万株ほど取得し、上昇が一服した3月1日に利益を確定し、330万円のリターンを獲得した(下のチャート)。
■ウエルシアの日足チャート(2024年1~3月)
実は、マック・チェリーさんはウエルシア株を1月末に打診買いしていた。ウエルシアは、イオンを親会社とする上場子会社だが、投資に出た理由は1回目と2回目の記事で紹介した「親子上場の解消」期待からではない。
当時のウエルシアのPBR(株価純資産倍率)は2倍台。仮にウエルシアが親子上場の解消でTOBの対象となっても、上値余地は微妙で投資妙味は薄いと見ていた。
にもかかわらず今年1月末に打診買いに出たのは、イオンがツルハHD株を追加取得する方針を明らかにしたことがある。その交渉相手は、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントだ。イオンが同ファンドの持ち分をすべて取得すれば、その持ち株比率は従来の倍の26%強に引き上がる。
この発表を受けてマック・チェリーさんは、「おそらくイオンは、自社が株式を保有するツルハとウエルシアの経営統合に動く」と読み、ならばその先回り買いで短期的な需給の変動を狙おうと、行動に出た。
■資本関係のイメージ
注注:24年1月末時点、小数点以下は四捨五入
当時、何らかのアクションが起こると想定したのが、ウエルシアの決算期だ。
同社の決算期は2月であることを踏まえると、期末に迫った時期に、何かのアナウンサーがされる可能性があると考え、この週の最終営業日となる22日(木)に買いを入れた。
その見立て通り、先に紹介した展開となったことで、マック・チェリーさんは最終的に買値から200円高い水準で利確した。
「同意なき買収」に対抗したC&Fロジで、1300万円を獲得
"上場子会社"以外で、短期需給狙いで注目するケースもある。直近で成功したのが、食品物流大手のC&Fロジホールディングス<9099>だ。
同社に対しては、今年3月から5月にかけて、小売・物流業務の一括受託を手掛けるAZ-COM丸和ホールディングス<9090>から"同意なき買収"の対象となって注目を集めた。最終的には、対抗提案をした佐川急便グループの持ち株会社、SGホールディングス<9143>が選ばれ、AZ丸和は事実上、買収を断念した。
マック・チェリーさんがC&Fロジ株を取得したのは4月中旬。AZ丸和HDが最初にTOBを表明した日の約1カ月後で、株価は3300円前後で推移していた。取得の理由は、TOB価格の引き上げ合戦に発展する可能性があると考えたからだ。
利確は6月4日。見立て通り、新たにSGHDが買収に参戦し、そのTOB価格はAZ丸和HDの1株3000円を大幅に上回る同5740円が提示され、株価もその水準に跳ね上がったことから手仕舞った。
■C&Fロジの日足チャート(2024年2月末~)
TOB合戦に発展すると見た3つのポイント
マック・チェリーさんが、C&Fロジに対するTOB合戦になりそうだと判断した理由は、3つある。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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取材・文/真弓重孝、高山英聖
イラスト:福島由恵
約20年間で100万円を、5億4000万円に増やした兼業投資家。資産拡大の原動力が、M&A(合併・買収)やTOB(株式公開買い付け)に着目したイベント・カタリスト投資。株式投資を始めたのは中学生のとき。同級生の間で大手証券会社提供の仮想株式投資ゲームが流行、また当時、村上ファンドが世間を賑わしたこともきっかけになった。親から援助を受けて、証券口座を開くと、不祥事を起こした三菱自動車に投資し、リターンを生んだ。新卒入社したメガバンクでは、大企業の資本戦略を支援する業務などに従事し、現在は家業の不動産会社の経営に関わる。趣味はゴルフ、サウナ、食べ歩き。
第1回記事「狙うは親子上場、『割安・上場子会社』に先回り投資で5億円超え」を読む
第2回記事「540倍化のすご腕さんが、親子上場の解消で今期待の銘柄とは!」を読む
将来のTOB(株式公開買い付け)を見越して、"割安・上場子会社"に先回り投資して資産を膨らましてきたマック・チェリーさん(ハンドルネーム)には、ほかにも株主構成に注目した勝ち技がある。
1つは、需給狙いで、もう1つはテーマ狙いになる。
需給狙いでは"上場子会社"の経営統合や、TOB(株式公開買い付け)で買われる立場になる企業を狙ったロング戦略と、親会社による子会社株式の売却を狙ったショート戦略がある。
テーマ狙いでは、制度改正や新技術開発で、脚光を浴びそうなオーナー系企業に注目する。
3回目の記事では、これらのうちから需給狙いの成功例と、勝つためのポイントについて見ていこう。
■親子上場の解消以外で株主構成に注目した勝ち技
狙い | イベント・カタリスト |
需給(ロング) | 経営統合、TOB |
需給(ショート) | 親会社による株式売却 |
テーマ | 制度改正、新技術など |
ウエルシア、ツルハの経営統合イベントを想定して先回り買い
上場子会社の経営統合を想定した先回り買いで、最近成功した銘柄の1つが、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングス<3141>だ。統合候補は、同業のツルハホールディングス<3391>になり、両社ともイオン<8267>が大株主となっている企業だ。
同社の統合を巡っては、2月23日(金・祝日)に観測報道が出ると、26日(月)のウエルシア株の終値は前日比+17%の3002円に急騰した。その後、両社は28日(水)に大株主のイオンを含めて資本業務提携の契約を締結したことを発表した。
マック・チェリーさんは、ウエルシア株を観測報道が出る22日(木)までに2万株ほど取得し、上昇が一服した3月1日に利益を確定し、330万円のリターンを獲得した(下のチャート)。
■ウエルシアの日足チャート(2024年1~3月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
実は、マック・チェリーさんはウエルシア株を1月末に打診買いしていた。ウエルシアは、イオンを親会社とする上場子会社だが、投資に出た理由は1回目と2回目の記事で紹介した「親子上場の解消」期待からではない。
当時のウエルシアのPBR(株価純資産倍率)は2倍台。仮にウエルシアが親子上場の解消でTOBの対象となっても、上値余地は微妙で投資妙味は薄いと見ていた。
にもかかわらず今年1月末に打診買いに出たのは、イオンがツルハHD株を追加取得する方針を明らかにしたことがある。その交渉相手は、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントだ。イオンが同ファンドの持ち分をすべて取得すれば、その持ち株比率は従来の倍の26%強に引き上がる。
この発表を受けてマック・チェリーさんは、「おそらくイオンは、自社が株式を保有するツルハとウエルシアの経営統合に動く」と読み、ならばその先回り買いで短期的な需給の変動を狙おうと、行動に出た。
■資本関係のイメージ
注注:24年1月末時点、小数点以下は四捨五入
当時、何らかのアクションが起こると想定したのが、ウエルシアの決算期だ。
同社の決算期は2月であることを踏まえると、期末に迫った時期に、何かのアナウンサーがされる可能性があると考え、この週の最終営業日となる22日(木)に買いを入れた。
その見立て通り、先に紹介した展開となったことで、マック・チェリーさんは最終的に買値から200円高い水準で利確した。
「同意なき買収」に対抗したC&Fロジで、1300万円を獲得
"上場子会社"以外で、短期需給狙いで注目するケースもある。直近で成功したのが、食品物流大手のC&Fロジホールディングス<9099>だ。
同社に対しては、今年3月から5月にかけて、小売・物流業務の一括受託を手掛けるAZ-COM丸和ホールディングス<9090>から"同意なき買収"の対象となって注目を集めた。最終的には、対抗提案をした佐川急便グループの持ち株会社、SGホールディングス<9143>が選ばれ、AZ丸和は事実上、買収を断念した。
マック・チェリーさんがC&Fロジ株を取得したのは4月中旬。AZ丸和HDが最初にTOBを表明した日の約1カ月後で、株価は3300円前後で推移していた。取得の理由は、TOB価格の引き上げ合戦に発展する可能性があると考えたからだ。
利確は6月4日。見立て通り、新たにSGHDが買収に参戦し、そのTOB価格はAZ丸和HDの1株3000円を大幅に上回る同5740円が提示され、株価もその水準に跳ね上がったことから手仕舞った。
■C&Fロジの日足チャート(2024年2月末~)
TOB合戦に発展すると見た3つのポイント
マック・チェリーさんが、C&Fロジに対するTOB合戦になりそうだと判断した理由は、3つある。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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