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4563 アンジェス

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業績
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時価総額 150億円

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アンジェス Research Memo(11):研究開発費の減少と補助金収入の計上により、経常損失は大幅縮小


■業績動向

1. 2023年12月期の業績概要
アンジェス<4563>の2023年12月期の事業収益は152百万円(前期比85百万円増)、営業損失は11,967百万円(同4,349百万円減)、経常損失は5,651百万円(同8,958百万円減)、親会社株主に帰属する当期純損失は7,437百万円(同7,277百万円減)となった。コロナワクチン開発中止に伴う研究開発費の減少により営業損失が縮小し、営業外収益で補助金収入を計上したことが経常損失の縮小要因となった。

事業収益は、希少遺伝性疾患に関するオプショナルスクリーニング検査の手数料収入が前期比60百万円増加の115百万円と順調に増加したほか、「コラテジェン(R)」も販売先の在庫調整が一巡したことで同11百万円増加の23百万円となった。また、EmendoにおいてOMNI Platform技術に関する売上14百万円を研究開発事業収益として計上した。同技術の導入を検討している企業1社に対して評価のための試験試料等を有償で提供したものである。

売上原価は前期比39百万円増加の133百万円となった。ACRLの売上原価が新規検査機器購入に伴う減価償却額等の計上により、同45百万円増加の114百万円となった一方で、「コラテジェン(R)」の製品売上原価が製品評価損の減少により同6百万円減少の19百万円となった。製品評価損を除いた「コラテジェン(R)」の売上総利益率は20%台半ばの水準だったと推定される。

研究開発費は前期比4,826百万円減少の6,172百万円となった。Emendoの研究開発費が人件費を中心に増加した一方で、前期に国内におけるコロナワクチンの開発を中止したことを主因として、研究用材料費が1,228百万円、外注費が3,910百万円それぞれ減少した。販管費は同523百万円増加の5,814百万円となった。為替の円安進行によりEmendoののれん償却額が同197百万円増加の3,081百万円となったほか、Emendoの事業再編に伴う弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬増加により、支払手数料が同358百万円増加した。

また、営業外収支は前期比4,609百万円改善した。外貨預金及びEmendoへの貸付金の評価替を行った結果、為替差益が同577百万円減少の745百万円となった一方で、補助金収入が同5,157百万円増加の5,551百万円と大幅に増加した。補助金収入の内訳は、国内のコロナワクチン開発に係る補助金収入で5,402百万円、Vasomuneの「AV-001」に関する同社開発費負担分に係る補助金収入で148百万円となっている。なお、国内のコロナワクチン開発に係る補助金については2023年12月期で全額計上したことになる。特別損益が同1,713百万円悪化したが、このうち849百万円は資本提携先であるイスラエルのMyBiotics Pharmaの株式及び転換社債について、回復の見込みがないと判断し全額を投資有価証券評価損として計上したものである※1。また、Emendoの研究開発部門再編成に伴い、事業構造改革費用として904百万円※2を計上した。

※1 MyBiotics Pharmaでは、腸内細菌叢の微生物の構成を再現した培養物の製造法を確立しており、イスラエルにて第1相臨床試験を完了したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬MBX-SD-202の米国での開発準備を進め、スイスのFerring Pharmaceuticalsグループと細菌性膣炎治療薬の共同開発に取り組んでいたが、イスラエル・パレスチナ紛争の影響もあって、研究開発の継続が懸念される状況となっていた。
※2 内訳は、減損損失(使用権資産)250百万円、契約解除費用542百万円、退職金101百万円、その他10百万円。


2024年12月期はEmendoの研究開発費減少により営業損失の縮小が続く見通し
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の業績は事業収益で600百万円(前期比447百万円増)、営業損失で8,450百万円(同3,517百万円減)、経常損失で8,450百万円(同2,798百万円増)、親会社株主に帰属する当期純損失で8,650百万円(同1,212百万円増)となる見通し。新たにAnoccaとのライセンス契約が決まったことにより、期初計画に対して事業収益で70百万円の増額修正、各損失額で50百万円の減額修正を行った。

事業収益は、ACRLにおける手数料収入や「コラテジェン(R)」の販売増に加えて、「ゾキンヴィ」の販売や契約一時金が上乗せ要因となる。事業費用に関しては、Emendoの研究開発部門の規模縮小を主因として研究開発費が前期比で30億円程度減少するほか、販管費も若干の減少を見込んでいる。このため営業損失は2期連続で縮小するが、前期に営業外収益で計上したコロナワクチン開発に係る補助金収入がなくなるほか為替差益を見込んでいないため、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失は拡大する見通しとなっている。なお、為替前提レートは前期の140円/米ドルに対して142円/米ドルとしている。

当面の事業活動資金は新株予約権の行使により調達
3. 財務状況について
2023年12月期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比9,928百万円減少の28,892百万円となった。流動資産では、「コラテジェン(R)」の出荷拡大に備えるため、製品と原材料及び貯蔵品が合計で557百万円増加した一方で、現金及び預金が6,874百万円、未収消費税等が392百万円それぞれ減少した。固定資産では、のれんが1,508百万円減少したほか、Emendoの事業構造改革実施に伴い使用権資産が1,050百万円減少した。また、投資有価証券はVasomuneの株式を304百万円取得した一方で、MyBiotics Pharmaの投資有価証券849百万円を全額評価損として計上し、合計では566百万円減少した。

負債合計は前期末比5,605百万円減少の2,789百万円となった。流動負債では、国内のコロナワクチン開発に係る助成金を補助金収入に振り替えたことにより前受金が5,126百万円減少し、Emendoの事業構造改革引当金を558百万円計上した。固定負債では、Emendoのリース資産の計上基準の見直しを行った結果、リース債務が780百万円減少した。純資産合計は同4,322百万円減少の26,103百万円となった。新株予約権の行使に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,032百万円増加したほか、主にのれんに係る為替変動の影響により為替換算調整勘定が1,049百万円増加したが、親会社株主に帰属する当期純損失7,437百万円の計上が減少要因となった。

期末の現金及び預金残高41億円に対して、2024年12月期の営業損失が85億円の見込みとなっており、資金繰りが厳しくなっているが、営業損失のうち約30億円はキャッシュアウトを伴わないのれん償却額であり、キャッシュアウトだけで見ると概算で55億円となる。それでも手元キャッシュが不足する状況となるが、同社では新たに第三者割当による転換社債型新株予約権付社債(転換価額修正状況付、当初転換価額65.7円、下限転換価額36.5円)及び新株予約権(行使価額修正条項付、当初行使価額65.7円、下限行使価額36.5円)を発行することで、当面の事業活動資金を調達していく方針だ。新株予約権付社債は第1回目を2024年4月5日に発行し1,300百万円を調達するほか、第2回を同年10月7日に同額分を発行する予定だ。また、新株予約権は同年4月5日に330,301個割り当て、当初行使価額ですべて行使された場合、1,591百万円を調達できることになる。なお、潜在株式数についてはこれら新株予約権付社債及び新株予約権がすべて転換、行使された場合、最大で約1億株となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《AS》

 提供:フィスコ

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